第4話〜黒い影

…………。


扉の先には通路が広がっている。


ちょうど三叉路の交点の位置に扉がある構図だ。


さて、どうしようか。


選択肢はあまり多くないが、まずは情報収集だ。


通路は部屋の中とほぼ同じ。


両手を広げたくらいの幅であることを除けば、壁も床も天井もなんら変わりはない。


扉を開けて真っ先に視界に入ってきた正面の通路。


奥の方には上り階段が見える。


途中には左右に2つ扉がある。


右側の通路には途中に左側に扉。


そして奥にも扉。


左側の通路には右側に扉があり、奥にはやはり扉。


左右対称の構造だ。


とりあえずここで取れる選択肢は、


1、しらみつぶしに全ての扉を開けて調べていく。


2、階段を登ってとにかく上へ進む。


こんなところか。


さすがに後ろの部屋に戻って、誰かが来るのを待つなんて選択肢はない。


悩むところだが、差し迫った危険という点では判断材料が少なすぎる。


となれば少しでも情報量は多い方がいいだろう。


しらみつぶしに全ての扉を開けて調べていこう。


まずは右側の通路から。


…………。


手前の部屋の中にはリュックの中にあった保存食のものと同じゴミがあった。


人のいた痕跡だ。


奥の部屋にはポケットに入っていた鍵とよく似た鍵があった。


他には何もない。


…………。


反対側の通路に向かう。


左側の通路の手前の扉を開けようとした。


ガチャガチャ…


鍵が掛かっているようだ。


手持ちの鍵は合わないようだ。


先に奥の部屋に行く。


扉には鍵穴がある。


さっきの部屋の鍵が使えそうだ。


ガチャ…


ゆっくりと扉を開け……。


いや、何か危機感のようなものがある。


虫の知らせとでも言えばいいのだろうか。


念のため、少しだけ開ける。


すると…


ーーーーァァアア!


嗄れた呻き声をあげる、黒い影のような塊が部屋の中央にいた。


それが僅かに開いた扉に気付いて動き出す。


「⁉︎」


慌てて扉を閉める。


ドン!ドンドンッ!


扉を殴りつけるような音が連続して響く。


ガチャガチャガチャ!


ドアノブが捻られ、扉が力尽くで開けられそうになった。


それを全力で押さえつける。


ドンッ!ドンッ!


埒があかないと今度は体当たりを始めたようだ。


このままだとあのよく分からない黒い影のようなものに襲われるだろう。


かといって、いつまでも抑えられたものでもない。


考えろ。考えろ!


取れる選択肢はあまり多くはない。


1、別の部屋に逃げ込む。


2、二階に逃げる。


3、ナイフで応戦する。


廊下の扉は全て外に開くタイプのものだ。


このままだと破られてしまう可能性の方が高い。


しかし部屋の中なら?


外からの圧力には強いはずだ。


扉越しに伝わってくる衝撃はそこまで強くはない。


部屋に逃げ込むのも手だろう。


二階に逃げるのは博打の要素が強い。


この状況を打破できるものがあるとは限らないし、そもそも逃げ切れるかも分からない。


ナイフで応戦する……のは、正直避けたい。


素人がナイフを振り回したところであの影のようなものを倒せるか分からないし、忌避感もある。


どうする?


どうすればいい?

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