第2話 モテる妹は好きじゃありませんか?
今日も今日とて生徒会は書類仕事だ。
部活の活動内容や予算を監査したり、文化祭で使用する教室の割り振りを決めたり、漫画やアニメに出てくる生徒会みたいな仕事をしているものの、部費や場所をめぐって対立なんて起きない。
多少の不満は出てくるものの、みんな与えられたものの中でうまくやりくりしている。
思っていたより地味だけど平和な学校生活に爆弾を放り投げるのが
「先輩ってどうしてそんなに妹にこだわるんですか?」
「べ、別にいいだろ」
俺が高一の時に偶然ナンパから助けた後輩。
それがまさか同じ高校に入学して生徒会の一員になるなんて思いもしなかった。
顔は綺麗だしスタイルもいい。本人の前では口が裂けても言えないがブレザーの上からでもわかる膨らみには思わず視線がいってしまう。
「理由を教えてくれたら私だって引き下がるかもしれませんよ? ああ、私じゃ先輩の理想とする妹にはなれないんだーって」
「……そうか。なら教えてやる。俺はな、子供扱いされたくないんだ」
「へ?」
「だから、妹なら俺を子供扱いしないだろ」
決死の覚悟で妹にこだわる理由を教えてやったのに日向はキョトンとした表情を浮かべている。
この妙な空気に耐え切れず書類に手を伸ばし内容が頭に入ってこないままめくり続けた。
「書類をペラペラめくりながら全く仕事が進んでない先輩も可愛いなー」
「だからお前は俺の妹にはなれないんだ」
他の女子達同様、
一体何が可愛いんだ。可愛いっていうのは……いかんいかん。今は目の前のことに集中せねば。
「ねえ先輩」
「ダメだ」
「まだ何も言ってないじゃないですか」
どうせいつもの『私を妹にしてください』だ。
10回目あたりから言う前に断っている。
「ふふん。今日の私はいつもと違いますよ。先輩、私に彼氏ができたって言ったらどうします?」
「おめでとう」
「先輩一筋なので告白はお断りしましたけどね」
一瞬心が揺らいだ気がしたが、それは思春期の男子なら仕方のないことだ。
それでもすぐに祝福の言葉が出てきたあたり俺は日向のことを恋愛対象として見てないことが証明された。
「友達からはもったいないと言われました。たぶん先輩と違って妹に固執する変態じゃないし、背だって私より高いです」
「日向は妹に固執する変態が好きなのか? 俺は変態ではないが」
「ちーがーいーまーすー。私は先輩が好きなのであって、シスコン変態野郎が好きなわけじゃありません」
日向の言葉がグサッと胸に刺さる。本当の妹がいるわけじゃないからシスコンではないし、ましてや変態ではないと思う。
だけどなんだろう、JKにシスコン変態野郎と言われると自分のことじゃないのに胸が痛む。
「おや? 先輩、どうしました? 私の愛の大きさに苦しんでいるんですか?」
「言われない言葉の暴力に苦しんでるだけだ」
くそっ! こんな妹が世の中にいて堪るか。妹ってのはもっとお兄ちゃんのことが大好きで、いっぱい甘えてくる存在なんだ。
「それにしても日向はモテるんだな」
「そうなんですよ。なんたってこの体ですかね。思春期の男子は妄想を膨らませているに違いありません」
「そういうことを言ってるから変な男に狙われるんじゃないか?」
これ見よがしに胸を強調してくる。別に恋愛感情を抱いてないし、ましてや妹としても見ていない。
いや、妹として見た上で胸に興味を持ってたらそれの方がマズいよな。
つまり日向の胸に性的な視線を向ける俺はこいつを妹としても見ていないということだ。
「どの学校もだいたい不純異性交遊は禁止ですけど、私と先輩が兄と妹の関係になったら合法的に一緒にお風呂に入れたりするんですよ?」
「そんなのは二次元の
「せっかくのチャンスなのにもったいないなー。先輩がそんな態度でいると、いつの間にか本当に彼氏ができてるかもしれないですよ?」
「それはおめでたいな」
後輩が青春を
「先輩は妹に彼氏ができても平気なんですか?」
「俺は妹の恋路を邪魔するタイプじゃない。ちゃんと祝福するって決めてるんだ」
「それって私を妹と認めてくれたってことですか?」
「言葉のあやだ。勘違いするな」
この後輩は隙あらば俺の妹になろうとする。
モテるんだから早く彼氏でも作ればいいのに。
「まあ、あんまり変な男なら俺が……」
「? 先輩がどうするんですか?」
「いや、なんでもない。自分でもよくわからん」
妹でもなければ恋人でもない。そんな後輩が誰と付き合ってもこいつの自由だ。
それなのにちょっとモヤモヤするのは日頃の日向の行いのせいだろう。
毎日好き好き言われたら多少は情だって湧くさ。
「ちなみに先輩に彼女ができたら全力で別れさせますから」
「なんでだよ!」
「安心してください。相手の女性を私が
思わずゴクリと唾を飲み込んだ。こいつの体なら女の子同士でも……いやいや、ただの後輩でなんて妄想をしてるんだ!
精神年齢でマウントを取る後輩はこういうセクハラじみたことをしてくるから困る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。