第22話:強欲神『クロウ』
本を読み進めてわかったことは、七つの神話と従者のことだけ。
この世界、使い魔とやらが存在するらしい。
どれも魔物の残骸とやら利用したもの。
魔物って倒されるとすぐ消えるのだが、たまに残留思念が残ることがあるそう。
で、その使い魔の完全上位互換が、従者だ。
従者については全貌が全くわかっていないそうで、詳しい情報は手に入らなかった。
で、神話のことだが…ここの守護神、強欲神『クロウ』についてだ。
強欲神『クロウ』、大雑把に言えば、全てを求めた者。だ。
彼まただただ欲に従った者、と言うか強欲のままに生きる者の前に現れ、『契約』とやらを求めるらしい。
契約したら膨大な力を手に入れるが、それと引き換えに半身を授けなければならないそう。
半身って…どう言う、ことなんだろう。
そして、神話の中身についてだが…。
まぁ、以下の話だ。
昔、数百年と言う大昔、この世に一匹のカラスが生まれた。
そのカラスは、傍若無人の限りを尽くしたと言う。
ただの、カラスがどうやって傍若無人を尽くしたかって?
弱者相手に、ただひたすら傍若無人を尽くしたのだ。
カラスは、ただただ弱く賢かった。
強き者を敬い、弱き者を潰し。
ただ賢いだけの存在であった。
仲間がやられても、特に感情も抱かず。
自身の命を最優先。
でもそんなカラスは、ただ一つ、バカになることがあった。
それは物だ。
そのカラスは、ありとあらゆる物を欲した。
金銀財宝、それ以外にも珍しいものから一般的なものまでなんでも。
例え相手が格上だろうが言葉巧みに騙し、盗んで、獲って、手に入れた。
だからだろう、彼は信用と、友を失い、居場所を失った。
そんなカラスはある夜、一人の少年と出会う。
その少年は、銀色の輝くペンダントを持っていた。
カラスはそれを見て、欲望が湧く。
欲しいと言う、欲望が。
カラスは考えた。
そして少年に語りかける。
「そこ行く少年よ。何をしている」
少年は少し怯えた様子で周りを見る。
が、カラスは暗闇に紛れ、姿を見えなかった。
少年は答える。
「何者ですか」
カラスは言う。
「我はこの森の神だ。無断に立ち入ったお主を裁くことにした」
と、嘘をついた。
カラスは盗むためなら、どんな嘘でもついた。
だから今回も同じだった。
カラスは言葉を続ける。
「その銀に輝くペンダントを置いていけ、さすれば許してやろう」
少年は困った様子で言う。
「それだけはご勘弁を。これは我が父の、唯一の形見なのです」
それを聞いたカラスは、悩む。
相手の気持ちなど考えず、ただ物を欲すカラスは考える。
しかし、今回ばかりは良い案も思いつかない。
そこで一つ、思いつく。
「ならば毎晩、ここへ来るがよい。さすれば許しを与えよう」
そうして彼を返した。
カラスは考えた、彼は絶対毎晩ペンダントを持ってくるだろうと。
毎晩こさせれば、いつか盗むチャンスが生まれるだろうと。
次の日の夜、少年は約束通り来た。
ペンダントを持って。
だが、その夜も結局盗めずに終わる。
そして次の日も、次の日も、そのまた次の日も。
そんな時に、ふとカラスは気になった。
なぜあの日、少年はこと森に現れたのか。
そうしてカラスは聞く。
少年は答える。
「実は私の母は、不治の病なのです。私たちは迫害されたため、村から助けを得ることができないのです。この森には不治の病を治す薬があると聞きます。私はそれを探しに、やってきたのです」
カラスは驚き、困惑し、そして同情した。
カラスも、同じように周りから迫害されていたからか、もしくはいつかの母親に重ねたからか。
それは誰にもわからない。
でもカラスは、ペンダントを諦めた。
初めて、物を盗むことを諦めた。
だが少年を、毎晩こさせた。
話を、聞きたかったからだ。
いつしか、少年とカラスの間には、奇妙な友情が生まれていた。
嘘偽りを、通し続けたまま。
そんなある日、そろそろ母親がやばいと聞いたカラスは、初めて他人に、物をあげた。
いつか盗んだ、病を治す薬を。
少年は感謝し、喜んだ。
その日から、少年は来なくなった。
でもカラスは待った、数日、数週間と。
だが、欲張りなカラスは待ちきれなくなり、遂には少年の家へと向かった。
そこでカラスは見てしまった。
無残にも殺された、母親と少年の死体を。
悲しんだ、ただ悲しんだ。
そこに一切の貪欲な思考はなく、悲しんでいた。
だが次に考えたのは、復讐。
村の人たちがやったのは、わかりきっていた。
だからこそ、彼は、恨みを身を燃やした。
言葉通り、盗んだ物で。
そしてカラスは、その身を神へと昇格させた、と言う。
この逸話から強欲神の他にも復讐神としての面も持ち合わせているらしい。
てな、話だ。
これを一晩かけて二人で読んだ。
感想としては、ちょっとおかしなとこあるな、って感じだ。
違和感はあるもののそれを指し示すことができない、って感じ。
まぁ、神話なんて元来そんなもんだろう。
一晩、一晩かけて強欲神だけ読んだ。
あと六つは全く読めなかった。
だって気づけば朝日が昇り、朝になっていたのだから。
テラリスを俺の部屋に残し、俺は仕事を始めた。
だが、俺はその日、全く仕事に集中できず、またもアナに怒られる羽目になったのだった。
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