第14話:お城に向かって
メイド服を着て外を歩く、意外と羞恥心はなかった。
恥ずかしいからどうかと言われたら、微妙と言うわけである。
何故かって言われても、何故だろうとしか言いようがない。
まぁ、隣を同じ格好で歩いている人がいるからだろう。
なんとも誇らしげに。
上司でいて先輩なアナは、城に行けることが嬉しいのか誇らしいのか、楽しそうに歩いていた。
いつもこんなんだったらいいのにな。
周りを見る、俺を見る目は相変わらずだが、前よりは酷くなかった。
この格好のおかげと言うべきか。
そろそろ耳を隠せるような、何かが欲しい。
まぁ、今日は流石にどこか行くとか言うことはできない。
今度アリフィードに頼んでみよう。
あの人のことだ、なんとかしてくれるだろう。
「アナさん、お城ってどこにあるんですか?」
今更ではあるが、遠くを見ても特に目立った建物はない。
お城とか言う、素晴らしい建物はどこにも見えない。
一応聞いておくべきだろう。
「この先行ったところよ、この先に橋があってそこを渡ると城があるの。ま、私たちじゃ普通は入れないわ。特にあんたなんかね」
うーん、亜人による差別、それを断つにはやはり根本的に、だろう。
亜人に優しい王族であるならば、入れてもらってもいいようなものだ。
だが今の発言で推察する限り、王族自体が亜人を嫌っていると考えて問題はないだろう。
クソかな?
こう歩いていると、特に話すこともないもので、思考する時間が生まれる。
ここ最近で気になったことは、亜人の国はあるのだろうかと言うことだ。
図書館ってのは本が沢山ある、勿論世界地図もある。
見てみたところ、国が沢山あった。
いくつあったかと言われると困るが、海を跨いで沢山ある。
国の名前だけで、どんな国か載っていない、海図ぐらいにしか役に立たないような地図があった。
テラリスと一緒に読んだところ、今俺がいる国は『ジェリアード大国』と言う随分仰々しい名前であった。
代々続く、ジェリアード王家。
王様は俺と同じくらいの娘がいる、若造らしい。
内面は随分クソで、屋敷にいたメイドの噂話に聞き耳たてたところ、毎日違う女性とヤってるとのこと。
性欲持て余しすぎだろ。
それ以外にも良くない噂は沢山聞く。
なんか、昔の俺を思い出した。
そんなことを考えつつ、周りを見る。
何度見ても、この世界の文化基準がわからない。
街の様子は一見すれば中世あたり、だが汚くない。
圧倒的に汚くない。
どちらかと言うと綺麗なほどだ。
都合よく作られた世界って感じに。
敢えて人については触れないが。
一つ言うことがあるとすれば、気持ち悪い。
ああ、隣の上司は抜きにしてだ。
パワハラはしていても、一応優しくはある。
世に聞くツンデレ…とは違うだろうけど、まぁそんな感じだ。
で、どう気持ち悪いかと言われると、感覚的なものだ。
なにあの目線、気持ち悪い。みたいな感じ。
ちょっと分かりにくいが、他に例えようがない。
魔術ぶん投げて気絶させてやりたいな。
楽しそう。
昔みたいな地位じゃないからやった瞬間、犯罪者入りだろうけど。
亜人という汚点のせいで、最悪死刑になりかねない、はず。
「…城、遠いですね」
「そりゃあそうよ。敵に襲撃された時逃げる時間がいるでしょう?そうしたら一番奥に配置した方がいいのよ」
「それって…挟み撃ちされたり一巻のおしまいですよね…?」
「…私にお城のことなんて聞かないでよ!私はただのメイドなのよ!?」
そうだよな。
聞いた俺がバカだった。
メイドってのは給仕が仕事だからな。
戦術家じゃないし、戦闘員でもない。
しかしこう、同じ景色が続くってのはつまらない。
そんなこんなで、進んでいると、突然で一つたてものさを跨いだ隣の道のところで爆音が鳴り響いた。
と言うか、爆発が起きた。
「…?」
「な、なに!?」
アナはビビって少したじろぐ。
俺も立ち止まって見るが、建物が邪魔でなにが起きているかわからない。
周りの人も少しざわついている。
と、一息置いて次の瞬間、その建物は破壊された。
轟音が辺りに響く。
異世界生活、一ヶ月近く。
そこで邂逅したのは、聞いて驚く、ドラゴンであった。
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