第8話:墜落少女は天啓を望む

 さて、そのあと一時間にも及ぶ暴行。

 数時間及ぶ気絶。

 大半のものを持っていかれ、残ったものはなし。

 要は振り出しに戻った。


 辛い。


 周りには人がいなくなっている。

 体が更に痛む。

 傷の上に傷を負う。

 馬鹿らしい。


「…もうやだ」


 ものを盗むことも、もうできないし半端詰んでいた。

 いっそ体でも売ってしまえば…と一時期は考えたが、よく考えなくても亜人なので、当然売れないだろう。

 お金を手に入れる術が、ない。


 そもそも物を売ってくれるだろうか。

 言わずともわかる、この世界は種別に対する差別が酷い。

 あの好奇の目、あの見下すような目。

 どう考えても亜人だからだ。


 そう考えると、謝るだけで許してくれるはずだった、あの男は本当に優しいと言うことかもしれない。

 いや待てよ、ただ歩いてだけで…でも無視した俺も悪いだろうし…。


 無駄なことを考えるのに数分使い、余計に腹が減っていく。


「考えるより、行動しよう…」


 立ち上がろうと、上半身を起こし、足をつく。

 が、足に力が入らず、倒れる。


「あ、れ…?」


 ヤバイ。

 ヤバイヤバイヤバイ。

 体がまともに動こうとしない。


 痛みが遠のいていく。

 それと同時に、意識も遠のいていくのを感じる。

 まさか、俺死ぬのか。


 え、それだけは嫌なんだけど。

 死ぬ死ぬwとかイキってたけどさ、本当に死ぬのだけは勘弁なんだけど。

 マジで嫌だ。


 ついに俺の見ている景色すら霞んでいく。

 体に力は入らず、頑張って立とうとしても、無理であった。

 傷んだ体では、到底無理な行いであった。


 …ああ、もう嫌だなぁ。


「クソ…が…あの、女神…次、会ったら、殴ら、せろ…」


 俺は霞む思考の果てに、それだけ考えて、意識を失った。




 彼は二度目の気絶、これによって運命と出会う。

 国一つ変える、運命の出会いをするのだ。

 これは、全てに手に入れていた男が、全てを失い、運命に出会ったことで、成り上がっていく物語である。

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