第44話 愛
【最大回復魔法】――リザレクション。
最大回復魔法。
四肢欠損レベルのダメージを回復できる、奇跡とまで揶揄される回復魔法の最高峰。
通称、聖母の祝福、天使の愛。
その魔法自体に特別な意味はない。
聖職系の魔法使いで、一万人に一人くらいの才能があれば使える。
かなり希少ではあるが、その程度の魔法である。
だが。
ミカエラにとってリザレクションは何よりも意味をもつ。
なぜなら、
彼と一緒に練習した魔法であるからだ。
ベルヌは知識として知っていただけで、ミカエラの才能で習得したにも関わらず。
サポートしただけにも関わらず。
関係ないのだ。
彼との二人っきりの時間だったのだ。
何よりも意味を持つ魔法なのだ。
何よりも強力な力なのだ。
リザレクションが、胸の穴を埋めてくれたのだ。
彼のことを考えればどんな困難だって乗り越えられる。
リザレクションに発展系など存在しない。
それが名前の通り、最大の回復魔法であるからだ。
それ以上はないからだ。それだけの情報だ。
ミカエラにとってリザレクションは万能だ。
これさえあれば全てが満たされる。
彼との
リザレクションは聖書よりも、神よりも重要だ。
家族よりも友達よりも自分の命よりも、彼との証のほうが重要だ。
世界がリザレクションを否定するなら、世界をリザレクションで否定してみせる。
彼と一緒になれないなら、彼以外を全て
ミカエラにとって、
「そろそろかな。ベルくん」
しとしと降る小雨の中、ミカエラは真夜中に林の中を歩く。
先に行かせたクロードはもうベルくんのいる小屋に到着しているだろう。
雨なんか死ぬほど嫌いだ。吐き気がする。
ミカエラは、晴れた気分とは裏腹にこの天気は納得できなかった。
でも仕方ないよね。最後の仕上げだもん。
なかなか壊れない道化人形にしびれを切らしたミカエラは自ら出陣し、ベルくんを再び迎えに来たのだ。
独りっきりになったベルくんを劇的な演出で迎えに行きたかったのに。
しつこい道化人形のやつ、
【
クロードをわざわざ小屋に送ったのには理由がある。
強引に
っていうか一回、それで吐き気と頭痛と腹痛と頭をかきむしるような苦しみを味わったからわかる。
私はベルくんの能力を
【
私に手を振っていたの、あれ、どういう意味?
駄目だよベルくん。私以外をみちゃ嫌だ。
……また道化人形を守ろうとする可能性がある。
それは絶対に見たくないし、させたくない。
ベルくんが守るべきなのは、私だけ。
ベルくんを守るのは私だけ。
あのゴミポチは何も覚えてないから、ベルくんの足止めに丁度いい。
ベルくんは今、能力が使えないから、クロードに苦戦すると思う。
クロードポチはゴミだけど、ベルくんは強いけど。
今だけ苦戦してねベルくん。
私がゴミ道化人形をお片づけするちょっとだけの間、ベルくんはクロードと戦ってもらう。
私のために、クロードと戦ってもらう。
ベルくん。ポチは殺しちゃってもいいからね。
全部終わったら二人で星をみよう。
思わずミカエラは天使のような微笑を浮かべてしまう。
彼の姿を脳裏に思い浮かべてしまったのだ。
クロードを倒すベルくん……かっこよすぎ。
「……お待ちしていました。聖女ミカエラ」
「へえ。道化人形さんお久しぶり。結構小屋から離れた場所に陣取っていたのですね。まあ、いいです」
アリスとミカエラ。
リシュオン山岳地帯特有の、黒い岩盤が露出した林の中で彼女達は再び邂逅した。
羽衣のような白い修道服を纏ったミカエラは体そのものが無垢な光りで輝き、まるで天女のようであり。
大きい黒灰ローブを羽織り足を引き摺るようにしてやってきたアリスは体を隠すように相対している。
アリスが通った場所には星屑の跡がこぼれるように光が落ちている。
崩れた身体がぽろぽろと魔素の宝石になって落ちてしまう。
アリスはそれでもしっかりと立っていた。
ミカエラは勝ち誇った顔をし、アリスは優しい顔でそれを受け入れる。
アリスは言った。
「あなたは、強い」
「あなたは何? 気持ち悪。顔とか半分壊れてるじゃん。それってもう、身体を保っていられないってことだよね? どうしてわざわざ私の前にやってきたの? 前に負けたの覚えていないの? あなたは人形で、私は人間。絶対に超えられない壁があるんだから。ベルくんはあなたを愛することはないの。これは決まりなの。仕組みなの。絶対なの。だから、あなたのやっていることは根本的な間違いなの」
ミカエラはそう返す。
想いで負けるはずがない。
密度で敵うわけがない。
こんなにもスカスカでボロボロな人形に私が負けるわけがない。
しかしアリスは真っ直ぐな瞳をしていた。
アリスは再び、優しく諭すように口を開く。
「だけど、私も強い」
「……馬鹿になったのかな? 元から馬鹿か。だって感情がわからないから、人間の真似事をして満足しているんでしょう? ベルくん優しいから、あなたに情けをかけてるんだよ。気に入らないなあ。ベルくんの横にいれるつもりでそうやって余裕顔してるのはさすがにムカつくっていうか、私に時間をこんなに使わせてそれだけは評価に値するよ。えらいぞ。で、そろそろ諦めてくれる気になった? 壊すなら一瞬で壊せるけど、なんかこのままだともやもやしそうでさぁ」
「私は壊れない」
「はぁ!? もう壊れてるじゃん。だからそんな意味のわからないことを口走ってるんだよ? 私の
【
ミカエラは目を見開く。
体を引き摺るようにしている、アリスの姿。
【
【
アリスの中に、私とベルくんを繋ぎとめる証がある!?!?
なんで? あれは私とベルくんとの大事な大事な結婚婚約婚姻契約でしょ?
それどころか、研ぎ澄まされた鑑定能力でアリスの体内にベルくんの命がいることがわかった。
あの気持ち悪い人形の、下腹あたりに鑑定をこらしてみる。
ベルくんの命が息づいている……。
欲しくて欲しくて狂ってしまいそうなほど愛おしい、ベルくんの命。
は?
道化人形の中にベルくんがいる?
ミカエラは固まった。
文字通り、細胞レベルで思考が固まった。
ミカエラの心音が停止し、脳血流が止まった。
オートリザレクションがなかったら死んでいた。
ミカエラは早口で喋りだす。
もはや自動人形のごとく、誰に聞かせるでもなく。
「あ、あせったぁ。リザレクションが間違ってたかあ。こわいこわい。やっぱり、たまにはこういうこともあったりもするよね? リザレクションがリザレクションしちゃったか。仕方ないなあ。たまにはリザレクションすることもあるよね。こわいこわい。あせったぁ」
「私は彼を愛しています」
ミカエラはアリスの言葉に、ビクンと肩を震わせる。
アリスは続ける。強い意志の篭った口調で。
「彼も私を愛してくれています」
「うそ……リザレクションが嘘ついた。嘘だった。嘘をつくな!! 私をそうやって騙す気だな? そういう作戦なんだ。お願い、作戦だと言って。作戦だよね? リザレクションも嘘で、私を落ち込ませる作戦なんだ。ドッキリさせて、ほんとはベルくんも私をからかってるんでしょう?」
「…………」
「アぁーーーーーーーーー!! あぁあぁーーーーーーーーー!!」
ミカエラは、天使のような悪鬼のような微笑みのような泣き顔のような、そんな顔に変わって叫んだ。
地獄の底からはいでる鈴の音のように透明な声で、天に向かって嗚咽する。
アリスは覚悟していた。
彼とひとつになったときから、この女を止めるためにここで対峙することを。
彼に想い人を殺させないため、自分がこの純粋な愛の化け物に止めを刺してあげるためにも。
(完全でも未完成なんだ。生きているってそういうことだ)
アリスはローブを取り払う。
(不完全でも、君は人間だよ)
美しく、しなやかな身体がそこにはある。
「ボロボロのくせにベルくんをとったああああ!! 人形のくせにいいい。ニセモノのくせにモノのくせに酷い、非道い。私をいじめるなあああ!!」
「彼は私が愛する。今のあなたはでは無理です」
もはや涙と過呼吸でブレ、ままならぬ視界でミカエラが捉えたのは。
アリスの左手薬指にある、不恰好ながらもつつましい
ミカエラは頭の先から爪先まで電撃のような衝撃を受け身体が弛緩した。
もう勝手に動き出していた。
「キィイイイイエエエエエェ!!」
【
目から血の涙を流すミカエラは、もはや常時発動している
【
降り注ぐ空間の雨粒を同時に潰しながら、空間跳躍レベルの速度でアリスに迫るミカエラ。
沸騰した感情の全てを能力に降り注ぎ、アリスを一ミリも残さず粉砕する。
ミカエラの思考の中はそれしか考えられない。
ミカエラの剃刀のような美しい手がアリスの首筋へ。
アリスはボソリと呟いた。
「……――
【
――バチィッ!!
穢れのない輝き。
ミカエラと全く同じ光を放つアリスの手。
それは暖かい愛の光。
ミカエラの手刀は、アリスの手によって弾かれる。
拒否される。
否定される。
彼への愛を、私だけのリザレクションを。
ミカエラは呆けていた。
口をパカリとあけたまま、アリスの前で放心していた。
「え?」
思わず、素でそうアリスに尋ねていた。
あなたがそれを使っちゃいけないでしょう?
だってそれは私だけが使える、私だけがベルくんから教わった、私だけの大切な思い出。
なんで人形がそれを使っちゃうの?
え、え、え、え!?
アリスは答える。
「あなたが【
「で、で、で、できるわけないでしょ。私とベルくんだけの特別な力なんだから、そもそもあなたは人間じゃないんだから、私は人間だし、あなたはただの人形なんだから……」
「想いの力の強さは、あなたが一番知っているでしょう。ミカエラ。彼のために目を覚ましてもらいます。彼を魔神になんてさせないから。気がついて。あなたはヨダに操られている」
「そんな、あんまりだよ。私にはこれしかない。ベルくんとの間に残ったのなんてこれしかないのに、それも取られちゃうの? お願い、それはやめてください。それはやめてください。謝りますから、なんでもしますから。私からリザレクションを取らないでください……」
崩れ落ち、地面に頭をこすり付けるミカエラ。
魔神? どうでもいいよそんなこと!!
ベルくんと私が一緒に魔神になれるなら、もうそれでいいよ!!
操られたって、一緒になれればなんでもいいよ!!
夢であってほしかった。
今すぐさっきのリザレクションは手品か何かだと目の前の少女が言ってくれるなら、ミカエラは地面の泥水だって飲むしどんな拷問だって耐えてみせる。
だからその光を使うのはやめてください。
アリスは輝いていた。
自分と全く同じ光で輝いていた。
違う。
ミカエラにはわかった。
アリスの光は強い。
私のリザレクションにはない力がある。
満たされている。
充足している。
だからあんなに光っている。
どうして?
理解したら死んでしまう。
心が身体が死んでしまう。
一緒になったからあんなに強いの?
ベルくんに愛されたから?
いやだよ。
欲しい。
ずるいよ。
どうして。
わたしがきれいじゃないから?
わたしが汚くなってしまったから?
アリスは強い光でミカエラを照らす。
天使のような微笑で、アリスはミカエラをつつみこむ。
「彼は泣いている。ずっとあなたのことで泣いていた。あなたは彼を求めたけど、彼だってあなたのことを考えていた。わかるよ、あなたの気持ち。私は人形だから、魔素の塊だからあなたの気持ちがわかる。ただ愛されたかったんだよね? 不安だったんだよね? 嫌われたくなかったんだよね?」
「あ……ああ……やめて。言わないで」
ミカエラは雨でぬれた美しい金色の髪をかきむしる。
つらい。
苦しい。
自分の心の奥底にカギをかけ、何重にも鎖をまいた感情を言い当てられるのは。
つらい。
苦しいよ。
「私は人間だからわかる。穢されてしまったから、純真じゃなくなったから。心にヒビが入ったから、あなた自身が彼にふさわしくないと思い込んでしまった。そうだよね?」
「……だってそうじゃない!! こんな私なんかがベルくんに、ベルくんに」
――愛されるわけがない。
ミカエラは涙でぬれた視界でアリスを見上げる。
かなしい微笑みの人間が立っていた。
アリスは知っていた。
彼は人間が大好きだ。
仲間の死を知るまでの、彼の感情をずっと知っていた。
ミカエラに対する、変わらない感情。
悲しみを抱えた、強い想い。
クロードに裏切られ、ミカエラにも裏切られたのに。
泣きそうになるほどお人よしの彼は、確かに変わらない感情を持ち続けていた。
だからこそアリスは受け入れてもらえてうれしかった。
刹那でもいい。
彼を愛し、愛されるならば。
アリスが存在したことに意味はある。
人間はとても不器用だ。
お互いにお互いを想うのに。
どうして誰かの【悪意】によってこうまですれ違ってしまったのだろう。
アリスはそれでも、複雑な気持ちになってもみる。
その結果によって私は愛されたのだから。
それでも。
「立ち止まる気はありませんか?」
「…………そうやって。また奪おうとするんだ。えへへ。いつもそうやって上から見下してくる。クロードのときだってそう。なんにもできない私を押さえつけて、憎しみをぶつけてきて。あなたもそうでしょ? ベルくんを独り占めしたいから、私を殺すんでしょ?」
「違います。私はあなたに……」
「認めるよ。アリスさん。あなたは人間よりも人間らしい。だけどね。人間は人間を辞めるべきときは簡単にやめれちゃうの。私はあなたを受け入れられない。この世から消し去るしか私の存在意義を確立できないの。なぜなら、ベルくんがあなたを愛することは絶対に認められないから」
ミカエラはゆらりと立ち上がる。
その姿から聖なる輝きのような光は失われ、まがまがしいまでの妖光が放たれる。
――これまでくすぶっていた、愛の魔神への覚醒だった。
それは静かに訪れた。
完璧な魔神ではない。
それでもいい。
今、目の前の女を消し去らないといけない。
理屈じゃない。理由はない。
彼に愛されているアリスは絶対に――――。
「――――許さない」
ブワリとミカエラの小さな背中から生み出された天使の羽。
ひとつひとつが華奢で真っ白なニンゲンの腕で構成されている。
ワラワラと別々の動きをし、邪魔な木々をリザレクション・スライスで消滅させる。
艶かしく蠢くそれはまるでここにはいない彼を求める手。
そのすべての先から発生するリザレクション。
名前をつけるなら
【
うーん、長い。違うかな。
ミカエラは両手を合わせ微笑む。
愛らしく、純真な表情で。
これは
光放つ羽は後光が差すようにミカエラを包み込み、目の前の人間をターゲットに捉える。
「――――行かせない」
壊れかけたアリスの身体から、紅蓮の炎が溢れ出す。
まるで確かめ合った情熱と感触を燃やし召還されたようなその炎はアリスの背中から天使の羽のように生み出される。
しかし片腕は崩れ、左腕は落ちた。
指輪と一緒に砕け落ちるアリスの左腕。
「ぁ……」と短く声に出したものの、アリスは確かで暖かな心の鼓動に気がつく。
心に残っている。
彼との証は心にちゃんと残っている。
右側のみだが、彼と一緒に造り出した羽がある。
まるで昼の太陽のように眩い光を放つ炎の片翼で、ミカエラに対峙する。
これが
――ガッッ!!!
ミカエラが衝撃波を伴いながら、アリスへと突っ込んできた。
もはや理論や理屈を越えた動きで、飛び込んできた地面の跡が穴があき火花をあげ燃えている。
【
ミカエラは魔神の力を引き出し始めていた。
速度に耐えられなかった背中の腕の羽がもぎれ、宙に舞う。
まるで純白の羽が舞うようにして多数の腕が森の中を舞い、光る。
失った腕は補充され、ミカエラの羽はそのままアリスに攻撃を仕掛ける。
【
本体であるミカエラも両手でリザレクションを発動している。
【
千を超える理不尽な愛の刃の急襲に、それでもアリスは真っ直ぐにミカエラを見据えたままだ。
【――
アリスは微笑む。
この技名は彼に怒られそう。
でも一回言ってみたかったかも。
彼との思い出を燃やし、殺し、最後まで耐えて発動するこの力。
自らを超高温の炎に包み、その威力でリザレクションを撃墜していく。
温度が上がるほど速度はあがっていく。
高温になるほど身体の崩壊が早まる。
片腕で、顔も半分崩れて、身体中ヒビが入って。
だけど全然負ける気がしない。
あったかい。
燃え上がる炎を纏い、次々と右手と炎の羽でミカエラの羽をむしりとる。
悲痛で、悲嘆にくれ、それでも前に進もうとする少女の羽を彼のためにむしりとる。
やがてアリスの炎と光の腕の速度は均衡してくる。
ミカエラが鬼気迫る勢いで、悪鬼のような微笑の顔で、アリスの身体を削り取ってくる。
それがとても美しく、綺麗なのだ。
強すぎる。
人間は強すぎます、ベルヌ様。
ミカエラは一歩も引かずこう言った。
「愛してるから」
アリスはこう答えた。
「愛してるから」
それは唐突に訪れた。
アリスの身体がぐらりと揺れ、右腕が落ちた。
魔素が尽きてきている。
いくら100パーセントが魔素でできた特別な存在だとはいえ、無限にリザレクションを発動できるかと思えるような相手にずっと攻撃を続けていたのだ。
アリスはもう、自分が無くなりかけているとわかっていた。
刹那。
アリスはミカエラの元へと飛び込む。
目を見開くミカエラ。
アリスは叫ぶ。命の叫びだ。
「あなたは強い。私はあなたの愛に勝てない」
「な、なにを……」
「でも、愛している!」
「あぁ……」
もはや砕けかけの人形になっていたと思えるアリスを見つめたミカエラは、思わず口に出してしまった。
――あなたは、美しい。
懐に飛び込まれ、ミカエラは飛びのくこともできず、アリスと共に紅蓮の炎に包まれる。
周囲をプラズマが覆い、魔素が天へと昇る。
ミカエラは悲鳴をあげなかった。
オートリザレクションを超えた炎はミカエラの身体をジュウジュウと焼き、回復を超えたダメージを与える。
やがて炎は収まり、アリスの姿だけが炎の中から現れる。
淡く光るアリスの姿はまるで揺れる陽炎のように不規則にぶれ、形すらままならない。
アリスは這うようにして、黒い岩の元へと向かった。
横になる。
もうすぐ夜明けの時間だ。
まだ、星は見えるし暗いけど。
ベルヌ様は大丈夫なんだろうか?
アリスがそんなことを考えていると……。
「アリス……どうして。なんで俺をおいて一人で行ったんだ!!」
彼が来た。
ボロボロの私を見つけて、涙を流してくれる。
アリスは心の中で謝る。
最後に会えるなんて思っていなかったから、嬉しかった。
言えるわけ無かった。ミカエラの
あとは、最後にお役に立ちたかった。
「アリス……?」
「ベルヌさま、お願いがあります」
アリスは、もう動かなくなった身体を岩盤に横たえ彼にお願いをした。
優しい嘘のお願いだった。
きえていくところなんて、見られたくなかった。
それにもう、たくさんうけとったから。
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