36歳処女の無双会社員は魔王と謎のメイドから事情を聞く

私達の前に突然現れたメイドの女性。この人は……間違いなく人間よね?実はここに来る前に王様に魔族と人間の違いを教えてもらったのだけど、魔族は人間とは見た目はさほど変わらず、角や翼が生えていたり、人間よりも爪や牙が鋭いとの事だ。

その証拠に、さっき私が吹っ飛ばしてしまった魔王様は、見た目は人間そのものだが(人間離れした美しいイケメンだったけど)、立派な二本角に、大きな黒い翼も出していたし、間近で見た時に二本の牙が人より鋭かったので魔族に間違いないだろう。


「ミカ……!?出てきてはダメだ……!!?」


「そんな事言っても!?あー君がこんな姿になってるのに放っておける訳ないでしょ!!?」


魔王様にミカと呼ばれたメイドの女性は、涙目になりながら、魔王様にそう訴える。そして、そのメイドの名前を聞いた時、セリーナ様が反応を示した。


「ミカ……もしかして……あなた……ミカ・フィーリルではありませんか?」


「えっ……なっ……!?あなた様……!?セリーナ様……!!?」


セリーナ様を見て驚愕の表情を浮かべるメイドの女性。ん?もしかしてセリーナ様の知ってる人?そんな私の疑問を察したようにセリーナ様が私に説明をしてくれた。


「3年程前です。魔族との戦争が勃発した場所に、王城務めのメイドから緊急の救護班として1人のメイドが派遣されました。それが彼女です。ですが、彼女はその戦争で行方が分からなくなり、どれだけ探しても死体すら見つからず、あの戦争に巻き込まれ、跡形もなく消えてしまったと判断し、ここ最近の魔族と人間族との戦争の死亡例としてちょっとした話題になったのです」


「あぁ〜……そういえば私も聞いた事がありますね。それを聞いてあの頃の私は早く伝説の聖女のような英雄にならねばと奮起したものです……」


セリーナ様の説明を聞き、遠い目をしてそう語るカトレアさんに、私は気にしないでという意味を含めて肩をポンポンと叩く。


「な……何故セリーナ様がここに……?」


「だから、私は最初からあなた達の為に勇者様とこの人間族の王国の王女様を連れて来たのよ」


「なっ!?人間族の王国の王女!?それは本当なのか!?ミカ!?」


魔王様の問いかけに、ミカさんは首を縦に振った。魔王様はしばし呆然と私達を見つめていた。が、私達をリディアさんが連れて来た理由をようやく察したのか、リディアさんにむかって頭を下げた。


「すまん!リディア!頭に血が上って僕はお前の事を……!!」


「私はいいのよ。最初に煽るような発言したものねぇ〜。だから、頭を下げる相手は私じゃないわよ」


リディアさんにそう言われ、魔王様は「そうだな……」と呟き、魔王様は私の前まで歩み寄ると、それはもう深々と頭を下げた。


「申し訳なかった!!勇者殿!僕は!リディアの言葉をよく聞かずにあなたに無礼を働いて……!」


魔王様の心からの謝罪に、私はどうしていいか分からず、とにかく頭を上げてください。私は平気ですから。と訴えたら、ようやく魔王様は頭を上げて私達を見た。


「そして……どうか聞いていただけますか?僕の……いや、我々魔族の事情を……」


物凄く深刻な顔をしてそう言う魔王様。どうにも何か魔族には魔族の事情がありそうだ……

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