36歳処女の無双会社員は魔王なんて余裕でした

椅子から立ち上がって驚く魔王様。しかし、その表情がどんどん怖い表情になり、黒いオーラのようなものを立ち上がらせながらリディアさんを睨みつけていた。


「リディア……どういうつもりだ?魔族を滅ぼしかねないから勇者だけは消すしかないという話ではなかったのか……?」


魔王様はリディアさんを睨みつけながらそう言ったが、リディアさんはそれに全く怖気ずく事なく、私にしなだれかかり


「そのつもりだったんだけどぉ〜……私勇者様の事が気に入って勇者様の性奴隷にする事にしたの♡」


ちょっ!?何で煽るような事言うの!?ほら!魔王様の血管が切れるような音がしたよ!?めっちゃ怖い顔をして私を睨んでるよ!!?


「貴様か!俺の親友たるリディアを誑かしたのは!おのれ!許さん!許さんぞッ!!」


魔王様がそう言って極太の黒い魔力の塊のような球を自分の頭の上に作り始めたんですけど!?


「全く……でも、魔王ちゃん達の件も何とかしたいから勇者様と交渉して話し合う道を作ったって言おうとしたのに……最後まで人の話を聞かないんだから……」


「いや!?貴方が最初に煽るような言葉を言ったからでしょ!!?」


「勇者!貴様は我自らあの世に葬り去ってくれるわぁ!!!」


魔王様は生成した魔力の塊を私に放つ。私、逃げる事が出来ずそれをまともに受けるが……



「……あれ?なんともない?」


リディアさんの魔法を受けた時同様、私はスーツも含めて無傷だった。


「ね、だから言ったでしょ♡勇者様なら余裕だって♡」


いつの間に避難したのか、リディアさんはセリーナ様やカトレアさんと一緒にはるか後方の場所に移動していた。ちょっ!?私も逃して欲しかったんだけど!!?


「バカな!?アレは魔王のみが使えるとされる魔王級魔法だぞ!!?くそ!魔法がダメだと言うのなら……!?」


魔王様はそれはもうバカデカイ禍々しい剣をどこからともなく取り出した。


「この魔剣バルバトスで骨すら粉々に斬り裂いてくれるわ!!!」


その剣が私に向かって振り降ろされる。私は無謀だと分かっていても、思わず両手で防御するような構えをとった。


バキンッ!!!!


「んなぁ!?全てを砕く魔剣バルバトスが折れたぁ!!?」


私に触れる前にその剣は見事に真っ二つに折れたらしい(私は目を瞑っていたので、後からセリーナ様達から聞いた話によると)。魔王様は信じられないといった表情で呆然と立ち尽くす。


「今よ!勇者様!魔王ちゃんにビンタをかましてあげて!ビンタぐらいじゃ魔王ちゃん死なないはずだから!」


いや、そりゃあビンタで魔王を倒せる訳ないでしょ……まぁ、でもとりあえずリディアさんの言う通り、私は呆然と立ち尽くしている魔王様に一般ビンタをかますと……


「へぶしッ!!?」


魔王様はそれだけでかなり吹っ飛ばされ、まるでボールのように弾むように飛び、柱という柱に激突しては、ようやく壁に激突したところで止まった。あれ?普通にビンタしただけなのに……なんだか魔王様に致命傷レベルの怪我を負わせちゃったんだけど……


「あちゃ〜。勇者様ってば力のコントロールがまだ出来てないのね。魔王ちゃん……流石にヤバいかも……」


リディアさんも物凄い心配そうな目で魔王様が吹っ飛ばさた方を見つめる。倒れたまま動かない魔王様を見て、本当に倒しちゃったかと思う私だったが、ガランという音がすると、魔王様がゆっくり立ち上がった。


「ま……!まだだ……!?わ……我は……!僕は……!魔族の王として……!1人の男としてやる事が……!?」


必死に立ち上がろうとする魔王様だったが、その様子はどう見ても産まれたての子鹿のようなものだった。誰がどう見ても立ってるのがやっと……いや、立つのも辛いと思うレベルだった。これはどうしたものかと悩んでいると……


「もうやめて!?勇者様!お願いします!!もうこの人を傷つけるのはやめてください!!!」


突然、魔王様を庇うように両手を広げて、私の目の前に涙を流して現れたのは、メイド服を人間に女性だった。

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