36歳処女の普通の会社員は本当にこの世界では最強でした

女性騎士のカトレアさんの決闘宣言の後、粛々と決闘用のスペースが用意され、私はされるがままに軽鎧を装着され、騎士が訓練用に使う殺傷能力のない模造剣を持たされる。


(こんな事なら手袋キャッチしなければ良かったぁ〜!?何で見事にキャッチしちゃうのよ!?私!!?)


実はこの世界において相手が投げた手袋をキャッチする行為は、相手からの決闘を受け入れたという事になるのだ。そんなルール知らなかったと言っても、これもルールだから強引に決闘するハメになってしまった。しかも……


「この決闘に負けたらお前は犯罪者奴隷として一生を過ごしてもらうぞ!」


なんでも、決闘で負けた人は勝った人の言う事を何でも聞くというルールまで存在し、カトレアさんは私にそう宣言したので、私が負けた場合はこの世界で永遠に犯罪者奴隷として一生過ごさなくてはならなくなったのだ!?いや!?流石に厳しすぎない!?確かに私のせいで一国の王女様の純潔を奪った罪は大きいかもだけど、そこまでされる必要はないような……っていうか、向こうは戦闘経験豊富な騎士に対して、私は戦闘経験ど素人だよ!?絶対勝てる訳ないじゃん!!?


「心配なさらないでください!勇者様!勇者様なら絶対に勝てますわ!」


私の不安な気持ちとは裏腹にセリーナ様は自信満々の表情でそう言ってくる。いや……その自信は一体どこから来るんですか!?


「それと……この決闘に勝ったら私と正式な婚姻を結ぶ事になってますからよろしくお願いしますね♡勇者様♡」


「はい!!?何で急にそんな話になってるの!!?」


どんどん展開が急に起こりすぎて私の頭の処理速度じゃ追いつかなくなってきている。


「だって……私の初めては勇者様に捧げましたし♡それに、勇者と王女が結婚するのは割と普通な話と聞きますから♡」


いや……まぁ、確かに……よくある王道なストーリーなんだけど……私達女同士なんですけど……?


「大丈夫です。勇者様。私と妻は娘の婚姻を認めていますし、この世界では同性婚可で、女性同士で子を産む技術もありますので」


「はい。ですから……勇者様との子をちゃんと産んで育てますわ♡」


国王様!?そういう問題じゃないんですけど!?セリーナ様も頰を赤らめてそんな事言っちゃダメぇ〜!!?


「自分が犯罪奴隷になるからもしれないのに随分と余裕だな」


カトレアさんが私をジト目で睨んでそう言ってくる。いや!?色んな意味でそんな余裕はないんですけど!!?


「その余裕と鼻っ柱を我が剣で叩き折ってやるッ!!」


カトレアさんは私に剣を向けてそう宣言してきた。そして、審判の人が私もカトレアさんも準備が出来たと判断したのか「それでは!試合!開始!」と、勝手に試合開始宣言した!?ちょっ!?待って!?まだ気持ちの整理とか色々ついてないんですけど!!?


「覚悟ッ!!!」


カトレアさんが剣を構えて私に向かってくる!?どうしよう!?結婚うんぬんの話よりもまずは犯罪者奴隷になる未来を回避しなくちゃいけない!?えぇい!とにかく剣を振るしかない!!


私はとにかく適当に剣を一振りした。すると……


ブオォ〜ーーーーーーーーンッ!!!


「なっ!?うわあぁぁぁぁ〜ーーーーーーーーーー!!!!?」


私の屁っ放り腰の一振りから放たれたとは思えないほどの衝撃波が巻き起こり、それをまともに受けたカトレアさんは数m程吹っ飛ばされ、目を回して気絶していた。


「へっ?あれ?何がどうなったの?」


私は何がどうなったのか分からずに困惑している。周りの人も唖然とした表情を浮かべている。間近で見ていた審判の人もしばし呆然としていたが、やがてすぐにハッと我に返って


「勝者!勇者様!」


審判が私の勝利を宣言すると、周りのみんなが一気に騒ぎ始める。セリーナ様は私に駆け寄ってきて


「流石は私の勇者様♡」


と言って私に抱きついてきた。私は未だに訳が分からず呆然と立ち尽くすしか出来なかった……



どうやら、本当に私はこの世界では最強無敵の力を持っているようだった……

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