36歳処女の最早普通じゃない会社員は女騎士を仲間にした!

私がカトレアさんという名前の女性の騎士に勝利した瞬間、周りの王侯貴族らしき人達や、騎士達がざわつき始めた。


「にわかに信じられない話だったが……あの力……本当に勇者様は36年も純潔を守り通したのか……」


「未だに信じられないな……カトレアは不慮の事故で……とは言え、実力は女性騎士の中ではナンバー1。下手したら剣の腕だけなら我が王国騎士団の団長に匹敵するというのに……」


と、だいたいそんなような会話が耳に入ってくる。うわあぁ〜……なんかえらい騒ぎになっちゃったなぁ〜……なんかやたら注目されて恥ずかしいんだけど……

と、私が恥ずかしい想いをしていると、カトレアさんが急にムクリと起き上がり、ツカツカと私の目の前まで歩み寄ってくる。その姿は私のせいで若干ボロボロながらも、ちょっと色っぽさを感じるか美人って凄いなぁ〜などと私がどうでもいい事を考えていたら、カトレアさんが突然


「申し訳ありませんでしたぁ!!!勇者様!!」


それはもう私の目の前で綺麗な土下座をするカトレアさん。私は突然のカトレアさんの変化に戸惑ってしまうが


「数々のご無礼をお許しくださいッ!!あなた様が望むなら犯罪者奴隷でも!いや!死ねと仰るならこの場で腹を掻っ捌いて……!」


そう言ってカトレアさんは剣を取り出して自害しようとし始めたので、私は慌てて止めに入った。


「うわあぁ〜!?ちょっ!?待って!?ダメだって!?」


「しかし!私には……!これぐらいしか勇者様への無礼を詫びる方法がありません……!」


「だからそれがダメなんだって!?あっ!?そうだ!何で私に決闘なんかを!?」


このままでは本当に自害しかねないと思い、私はあえて話題を変える事にした。すると、カトレアさんは自嘲気味に微笑んだ。


「ふっ……私に懺悔の時間をくださるとは……本当に心の広い方だ……勇者様は……私が負けるのも無理はない……」


「えぇと……それはいいので、理由を教えてもらえますか?」


「はい。簡単に言ってしまえば……嫉妬です……」


カトレアさんは、幼い頃より伝説の聖女様に憧れを抱いていたそうだ。いつか自分も聖女様のような英雄になると誓い、男性と誰ともお付き合いする事なく、王国騎士団に入団し、実績をだんだんと上げていったのだけれど


「あれは2年前の私が18の時でした……山賊の被害が多発しているという情報が入り、私は何人かの部下を連れ山賊の討伐に出向いたのですが、斥候した部下からの情報で、あまり山賊が多くないのを知り、私はこれは1人で討伐出来そうだと判断し、連れてきた部下に近くの村や町に住む人々の護衛を任せて、私1人で討伐に向かったのですが……」


だが、それは斥候の人の完全なるミスだった。山賊達は常に自分達の情報を誤魔化すような簡易結界魔法を使っていた。ベテランの斥候経験がある人だったらそれをすぐに見抜いたかもしれないが、たまたま斥候に出したのはまだまだ新米の経験が浅い人物だった。


「私の判断ミスでもあります。たかが山賊如きがそんな事しないだろう……そうした油断が……私の夢を壊す結果に繋がったのです……」


カトレアさんは山賊達に果敢に挑み、何人もの山賊を討伐したにはしたのだが、かなりの数の山賊をカトレアさん1人では対処出来ず、結果、カトレアさんは山賊達に組み敷かれて純潔を……伝説の聖女のような英雄になりたいという夢を砕かれたのである。


「私が遅いと思って心配になった部下達が駆けつけたおかげで、何とか山賊達は全員討伐する事は出来ましたが……別の意味で……もう……時すでに遅しで……」


その時の事を思い出したのか、カトレアさんは悔しさと悲しさが入り混じったような表情をしていた。


「私は何もかもに絶望しか抱けず、もう死のうかと決意した時に、私を止めてくださったのがセリーナ様なのです。セリーナ様は、こんな私になっても自分の護衛騎士長に任命してくださいました。だから、私は……この方に永遠に仕えようと決意しました」


うん。私とは少し違うけど気持ちは凄くよく分かる気がする……私も色々絶望して死のうと思っていたし……そんな時に優しく声をかけられたら、その人に仕えたくなっちゃうのも分かる気がする……


「だから……あなたが羨ましくて悔しくて……パッと出てきてセリーナ様に期待されているあなたが……その上、私が辿り着けなかった純潔を倍以上に守り通したと聞いてカチンときて……」


うん。後半は正直どうかと思うけど、いきなり現れた私があなたより上なんですとか言われたら、納得出来ないのも無理ないよね……


「ですが……勇者様の一撃を食らってよく分かりました。あなたが一体どれ程の想いでその純潔を守り通したのかを……!」


いや!?別にそんな大した想いで処女だった訳じゃないんですけど!?全然モテなくて処女のままだっただけなんですけど!!?


「そんな凄いお方に対して醜い嫉妬を抱く私には最早死ぬ以外ありません……!」


と言ってまたカトレアさんは剣を取り出して、その剣を自分の首に当てはじめた!?


「うわあぁ〜!?ストップ!?ストップ!!?そうだ!決闘のルールで敗者は勝者の言う事を何でも聞くんだったよね!」


「ハッ!?そうでした!?そのルールも守れないとはやなり私に生きる価値は……」


「だからダメだって!?そうだ!私の仲間になってください!ほら!私!一応勇者として召喚された身ですよね!だから!仲間が必要ですよね!」


私は咄嗟に思いついた意見をカトレアさんに言うと、カトレアさんは酷く驚いた様子で私を見つめていた。


「勇者様に醜い嫉妬を抱いた私を仲間にしていただけると……!?」


「そんな!誰だって嫉妬を抱く事はあるんです!そんな事でいちいち反省してるより、前を向いて自分がやるべき事をやった方が絶対にいいです!」


私がそう言ったら、カトレアさんは滝のように涙を流して、私に再び土下座するような姿勢で


「なんと寛大なお方……!分かりました!このカトレア・フォンティーヌ!勇者様の剣となり盾となり働く事を誓います……!!」


女騎士カトレアが仲間になった!と、いう文字が脳内で再生された気がした。某RPG風の曲と一緒に


「カトレア……言っておきますが、正妻は私ですからね」


セリーナ様が何故かカトレアさんにそんな言葉を投げかけたら、カトレアさんは「もちろんでございます!!」と、セリーナ様の前でも綺麗な土下座を披露していた。





「あら、残念だけど勇者ちゃんはここで始末させてもらうわ」


と、突然この場に新たな侵入者が現れた。それは、尖った耳に褐色の肌、真っ白に近いような長い銀髪をなびかせ、やたら露出の高いエッチな服を着た女性だった……

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