36歳処女の普通の会社員はこの世界の仕組みに驚く

この国で1番偉いはずの人からいきなりセクハラ兼パワハラのような発言を受けて私は引いた。私は国王様をジト目で睨む。すると、国王様が慌てた様子で


「も!申し訳ありません!勇者様!異界の女性にとって私の先程の発言はよろしくないとは文献で伝わっておったのをすっかり忘れていて……ですが、勇者様。先程の質問はこの世界においてとても重要な事なのです。何故なら、この世界において女性が何年も純潔を守っているのは強さに繋がっているのです」


「……はい?」


いくらここが異世界だからってそんなバカな話ある訳ないだろうと思ったが、国王様はそれはもう真剣な顔でこの世界の仕組みについて説明し始めた。


その説明によると、この世界は女神アルテナによる加護を受けており、その女神アルテナは純潔を最も大事にし、更には女性がすきな女神だという事もあって。純潔の女性にはその女神の加護を受け、その純潔期間が長い程、女神アルテナの加護を多く受けるのだと言う。そして、それは私のように異世界からやって来た女性も同様らしい。

まさかそんなバカな仕組みな世界がある訳ないと言いたかったが、周りの人々は誰一人国王様の話に反応していない。まるで、その話が当たり前だと言わんばかりに聞き入れている。先程私に話しかけてくれた王女セリーナ様も同様である。


「えっと……それじゃあ……36年間1度も男性経験がない私は……?」


「36年間……!?1度もですか……!!?」


私の言葉を受けた国王様が目を見開いて驚いていた。セリーナ様も口に手を当てて驚き、周りの人々もどよめいていた。

バカにされた感じの驚きなら、私もかなり憤慨していただろうが、皆バカにしたといった驚きではなく、純潔にただただ驚いているだけなので、どう反応を返していいか分からない私が戸惑っていると、国王様が大きく咳払いをして、周りの騒ぎを鎮めた。


「かつて、25歳まで純潔を守り抜き、周りから聖女様と呼ばれた女性がおりました。聖女様はあらゆる病や瀕死の人々も救う治癒魔法を使ったと伝承で伝わっております。25年間守り抜いて聖女様レベルと言われています。が、勇者様は更に異界人で、異界から来られた方は、この世界で生き抜く為に更に加護がプラスされていると聞きます。正直、聖女様以上に純粋を貫かれ、異世界人の勇者様がどれ程の力を保有しているのか……私にも……誰にも想像がつきません……」


国王様はとっても真顔でそう答えた。セリーナ様もうんうんと頷いて国王様に同意しています。なんだろう……まさか、36年間処女だった事が、この世界では瀕死の病を治した聖女よりも凄い存在とされてるなんて……



「その異世界人の女の話はデタラメだッ!!」


そんな時である。突然扉をバンと音を立てて入ってきたのは……黒髪の長い髪をポニーテールにした、真紅の騎士服を身にまとったとても美しい女性だった。

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