ダンジョン拡張3with過去1to神話

ダンジョンの壁を『並立の奇眼』で並立起動した『無璧の魔眼』と『切削の魔眼』である程度の大きさになるまで切って其処を削り取り、削る時に出た欠片を『完全掃除』で魔力へと強制変換する。そして強制変換した魔力を体内に吸収し、魔眼を使用したことにより消費した魔力を回復。全ての魔力をそのまま体内に収めてしまうと僕の体内で魔力が暴走してしまうので、『並立の奇眼』で『吸魔の邪眼』を起動して、視界に髪、詰まり僕の体の一部を捉えることで魔力を吸収。その吸収した魔力を『並立の奇眼』を使わなくても常時開眼状態になっている奇眼、『蓄積の奇眼』に蓄積させていく。


それを繰り返すことでダンジョンは徐々に拡張されていく。

ただ、当然拡張は、無効化する→切る→削る→変換する→吸収する→貯める→無効化する→切る…………の繰り返しだから、どうしても単調作業になってしまって、その分余計なことを考えてしまう。


例えば、ダンジョンの構造をどうするか。

これに関してはほぼほぼ決めていて、後は『迷宮把握』で逐一ダンジョンの形を意識して、決めた形に合わせて削ってくだけだ。


例えば、ダンジョンモンスターをどんな種族の形で生み出すか。

これに関してもほぼほぼ決めていて、ヒカリに聞いた消費が少なくて、かつ数が多い種族を選ぶつもりだ。聞いた種族の中では、一番効率が良さそうな、個体によっては黒光りしている、あの虫を。


そして、いくらか思考していると、自然ととある考え事に行き着いてしまう。

それは、村の奴らをどんな方法で始末しようかとか、泣き叫ぶ姿を想像するだとか…………。


そして…………あいつらが僕にしてきた仕打ちを思い出して、あいつらに対する憎悪を再確認したりだとかだ。










僕は、今現在確認されている大陸の中で最大規模の大陸、センタージ大陸の中でも一番大きな国、クリア神聖教国のとある山の中にある村で生まれた。

僕の家はその村の中でも村長の次の次ぐらいには力と土地を持っていて、当然村での発言力も強かった。ただし、僕が産まれるまでは、の話だけど。


僕の家庭は母親が3人、そして兄弟姉妹が僕も含めて7人の、父親も含めて計11人家族だった。

その内、上4人は両方とも双子の姉妹で、下の3人が三兄弟だ。それぞれ母親Aが上の双子と次男、母親Bが下の双子と長男、母親Cが一番下の三男、という関係になっている。詰まり、母親Cが僕の母親だ。


母親Aは父の幼馴染みらしく、いつも元気そうな女性。ついでに言えば、センタージ大陸に一つしかない、他大陸にも侵食している宗教、クリア教の司祭の地位も持っている、信仰がちょっとやばいレベルの、いわゆる狂信者どだ。

母親Bは村長の娘、と言っても五女なのだが、村長の娘ということを鼻にかけた高慢ちきな女性。

母親C、詰まり僕の母親は、いつも「あらあら、うふふ」と言っているマイペースな女性だ。


村のしきたりで父は3人の女と結婚して子供を成さねばならず、父が本当に愛していたのは母親Aだけだった。詰まり、残り2人の女とは愛情なんてあるはずも無く、せいぜい義務感という薄氷の様な関係で繋がっていたに過ぎない。


父は期待していたのだろう。本当に愛していた母親Aの妊娠を知ると、普段は緘黙なことで知られている父が村中を狂喜乱舞しながら走り回っていたのはちょっとした事件になったそうだ。

しかし、産まれてきたのは女の子。それも双子。

父の予想とは真逆どころか斜め半回転した結果だったそうだ。これには母親Aのことを本当に愛していた父も落胆を隠せず、大いに落ち込んだらしい。

それでもそうやって落ち込んでいたのは数秒で、たとえ女の子でも子供が出来たのは本当に嬉しかったらしく、そこからはもう娘にデレデレだったそうな。


で、村のしきたりですぐに2人目の女と義務的に結婚して、その女は1ヶ月後には妊娠したらしい。流石に狂喜乱舞しながら走り回る、ということは無かったものの、数日間はニヤニヤしっぱなしだったみたいだ。

そして今度こそ男の子がいい、という期待を浴びせてきた父だったが、いざ産まれてきたのはまた女の子の双子。これには父も顎が外れるかといった感じで口を開けていたのが目撃されている。


そして4年の月日がたって双子がある程度成長した頃、母親Aと母親Bはほとんど同時期に妊娠して、数日の誤差で母親Bが先に長男を出産、そして母親Aが次男を出産して、父は後継者ができたことにとても喜んだらしい。

何せ待望の男の子、それが2人一気にだ。父の幸せの絶頂期は間違いなくここだっただろう。


そして3年後、村のしきたりで三人目の女と結婚した。この頃になると双子の姉妹は7歳と6歳、詰まり自己がハッキリとしてきて弟達の面倒を見る事ができる年齢になっていた。そんな中、新たに妊娠した母親Cのことを知ると、双子達はは弟か妹ができると知り名前を考え始め、弟2人は殆ど双子と変わらない誤差で産まれたので漸く下に弟か妹ができると知り喜んでいたそうな。

この光景は村の広場で起こっていたため、みんなが皆微笑ましいものを見るような目をしたり、純粋に祝福を贈ったりとそれはもう大騒ぎになったそうだ。

但し、分娩する様子は刺激が強いということで父がやんわりと家から出ていてくれ、と言った時には泣きかけたらしいが。


そして、いざ赤ん坊、詰まり僕を分娩する時に悲劇は始まった。

最初に気づいたのは赤ん坊を取り上げる産婆だった。産婆はかなりの高齢で、随分と目が悪くなっていたらしく、最初は見間違いかと思ったみたいだけど、徐々に明らかになっていく僕の体の色を見た時に、「この赤子は何かがおかしい」と思ったそうだ。

産婆の様子がおかしいことに気づいたのは産婆の背後で産湯を用意していた母親Aだった。

産婆はボケが入っていたので多少のおかしな行動は黙認していたようだが、謎の唸り声をあげ始めた産婆の様子が流石に気になり、背後から赤ん坊を覗き込んだ彼女は、家の外にまで届くほどの悲鳴をあげた。

そして、その悲鳴に吃驚した父と母2名が何事かと母親Aを見ると、彼女は顔面蒼白になり身体中を震わせながらも、目に微かな狂信と極大の憎悪を孕んだ目でしっかりと産まれたばかりの赤ん坊を見ながら、はっきりと、こう呟いた。

「悪魔の、子……」、と。










「悪魔の子」の出現は、生まれたその日のうちに村中に広まった。何分、大きくもなく小さくもなくの村だったので、情報の伝達速度は比較的早い。

そしてその日の夕方、村長は村の男達を集めて集会を開いた。議題は専ら「悪魔の子」の事であり、その子の処遇を決めるための会議だった。

当然のように父は参加し、母親Aも「悪魔の子」を知る村で唯一の教会関係者たったこともあり、集会に参加していた。


「さて、ルヴェーロ、「悪魔の子」が生まれたと聞いたが、それは真か?」


村長は村の代表として、いつも以上に緘黙で、しかもどこか魂が抜けたような気配さえ醸し出しているルヴェーロに訪ねた。


「…………あぁ。…………事実だ」


父の肯定の言葉に、村の男達は再びざわめき始め、母親Aはきつく目を瞑って歯を食いしばりながら憎悪の炎を燃やし、村長はじっと父を見据えながらどこか上の空だったという。


そしてたっぷり数分、そこまで時間をかければざわめきも少なくなってきて、村長は父への、と言うよりも、母親Aに「悪魔の子」の詳細な説明を求めた。


「マリア、「悪魔の子」について詳しく教えてくれるかの?何分ここは田舎じゃ。「悪魔の子」という名称だけで勝手な憶測しか出てこんのじゃよ。その分、教会に入っておるお主なら詳しいことはわかるじゃろ?」


その言葉に、母親Aマリアはきつく閉じていた目を開けると、コクン、と、一つ頷き、静かな、けれど何処か響くような声でポツリポツリと「悪魔の子」について詳しく喋っていった。


「皆さんは、創世神話を知っているでしょうか?」


その言葉に男達は軽く顔を見合わせ、軽く困惑の表情を浮かべた。


「……みなさんの様子を見る限り、余り知らないようですね。では、まずは創世神話から話しましょう。それは、数えるのが億劫になるほどの昔────」











それは、数えるの億劫になるほどの昔のこと。

何も無く、あるのは純粋な力のみ……それこそ光も闇もない、距離も時間も、空間さえもさない正しい意味での『虚無』。そこにとある一つのチカラが生まれた。


そのチカラは思考する力を持っていた。

故に自身がいる場所を正確に認知することが出来た。

そして同時に、自身と同じモノが全く存在し得ない『虚無』だということも理解した。

しかし、そのチカラは寂しさを覚えた。

故に、創ることにした。


そのチカラには、創る力があった。


そのチカラには、操る力があった。


手始めに、そのチカラは『空間』と『時間』、そして『重力』を創った。これによって『距離』が生まれ、『変化』が始まり、全てに確かな『質量』が生まれた。


次にそのチカラは、周囲の空間に満ちた『虚無』の頃からあった純粋な力を操り、自身へと還元した。その結果、そのチカラには肉体が創られ、そのチカラは『動く』ことが出来るようになった。


肉体ができ、『動く』ことの出来るようになったそのチカラは、自身を分割し、空間中を旅した。

そして長い長い年月が経過し、旅することに飽きたそのチカラは、自身を再び一つの肉体へと戻し、記憶の共有を果たした。


そして、そのチカラは知ってしまった。

『時間』を創り『変化』を生み出しても……自身と同じ存在はいない事に……。


その事実に、そのチカラは、嘆き、悲しんだ。

それは寂しさ故。



何年経ったのだろうか。そのチカラは泣き疲れ、ふと周りを見渡してみると、驚いた。

何せ、長い年月を泣いたことで溜まりに溜まった涙が宙に浮きながら球体を描いていたのだから。


そのチカラは、涙の球体をもっとよく見ようと『明かり』を生み出した。そして、その空間には『光』と『熱』、そして『波』が生まれた。


そして涙の球体を見ていたそのチカラは、不意に、こんなことを考えた。


-----何も無いのなら、自身の力で創ればいい。


そしてその考えに突き動かされるまま、自身と同じ姿形の存在を創り上げた。

そしてその瞬間、空間、いや、世界には『生命』が創られ、『生』が生まれた。


しかし、そのチカラは自身と全く同じな姿形のソレに酷い嫌悪感を覚えた。そしてその感覚に突き動かされるまま、ソレを破壊した。

そしてその瞬間、世界には『死』が生まれ、『破壊』、『崩壊』、『消滅』、『分解』、『粉砕』…………などの概念が生まれた。


そしてそれは始まりだった。

突如として重力が『崩壊』し、あらゆるモノが『破壊』され、すべてが『消滅』した。


余りの変化に呆然としていたそのチカラは、ただただ成り行きを見守るしかなかった。


それがしばらく続いた頃、突如として大爆発が起き、そのチカラは思わず目を閉じてしまった。そして、その衝撃に耐えられず、気絶してしまった。


何年経ったのかもわからないほど、そのチカラは気絶していた。


次に目を開けた時、そのチカラは驚いた。


自身の流した涙が星となり、海となり、太陽となっていたからだ。


そして、そのチカラは歓喜した。

星の中の海に小さな小さな生き物が生まれていたからだ。


そのチカラは、暫くその小さな小さな生き物を観察した。だけど、待てど暮らせど何も起こらない。


そこでそのチカラは、その生き物に干渉することにした。


その生き物が増えるように、ふたつの生き物の一部を混ぜることで新たな生き物を作り出せる力を与えた。

多くの姿を見るために、全ての生き物にこれまで以上の『変化』を与えた。


そして、そのチカラは長い年月をその生き物を観察することで費やした。


しかし、どこまで行ってもそのチカラは孤独だった。

自身はいつも見るばかり。話す者もいない。

だから、そのチカラは、今度はその生き物を素体として自身と同じ姿形の存在を創り出そうとした。


最初に選ばれた生き物は、一番最初に生まれた小さな小さな生き物。

その生き物に知性と自身の力の一欠片を与え、姿を変えると、2組の『妖精』が創り出された。


次に選ばれたのは、四足で歩行する様々な生き物だった。

その生き物に理性と知性と自分の力の一欠片を与え、姿を変えると、2組の様々な種類の『獣人』が創り出された。


次に選ばれたのは、森の木だった。

木に知性と理性と自身の力の一部と自然を操る力を与え、姿を変えると、2組の『エルフ』が創り出された。


次に選ばれたのは、土と鉱石だった。

土と鉱石に理性と知性と自身の力の一部と鉱石の声を聞く力を与え、姿を変えると、2組の『ドワーフ』が創り出された。


次に選ばれたのは、自身の力の余剰分だった。

自身の力の余剰分を世界へと馴染ませ、知性と理性と司るもとを操る力を与え、姿を変えると、無数の『精霊』が創り出された。


最後に選ばれたのは、これまで創り出してきた全ての生き物だった。

全ての生き物は増えていたので、いなくなる心配もなく、安心して創り出すことが出来た。

全ての生き物を素体として、全ての特徴を取り込み、更には万物への適性を与え、姿を変えると、そこには2組の、そのチカラとそう代わりがない『人間』が創り出された。


そして、そのチカラから生まれた生き物は順調に数を増やし、沢山あった大陸のほぼすべてに存在するようになった。


そして、生まれた生き物が呼びあっている「名前」がそのチカラも欲しくなり、自分自身を「万物創造の神クリア」と呼び始めた。


その名前はたちまち生き物たちの間でも呼ばれ始め、生き物たちの間で信仰され始めた。


しかし、楽しい時間や光の裏側に、闇があることを、創造神クリアも、全ての生き物も知らずにいた。


始まりは、突然だった。

突如として世界中の空間にヒビがはいり、そこからとても創造神に創られたとは思えない醜悪な人型の怪物や、獣が攻め込んできた。

その人型や獣は人々を殺し始め、大地を破壊した。


それに焦りを覚えた創造神クリアは、人々に戦う力として『ステータス』とそれに付随する『成長力』と『スキル』、『ユニークスキル』、『称号』を与えた。


戦う力を得た人々は、その化物たちを撃退し、戦いは終わったかに見えた。

しかし、相手側の頂点はどこまでも狡猾だった。

なんと、相手側の頂点は『ステータス』の力を化物に流用し、強化を図ってきたのだ。

更には、人々を惑わす『悪魔』を創り出し、人々の間で争いを起こした。


これまで以上に焦りを覚えた創造神クリアは、自身で相手の頂点を討伐するため、壊れた空間の奥の奥へと入っていった。

そこに待ち構えていたのは、最初に創った自身と全く同じ姿の人型。


破壊されたその人型は、創造神クリアが気絶している時に復活し、即座に空間を破壊してそこに隠れていたのだ。

しかも、その人型は創造神クリアと殆ど同じ力を持つ為に、多数の生物を創り出して創造神クリアになり変わろうとした。


しかし、所詮は創られた存在だった。

創造神クリアの一撃には耐えられず、その身ならず魂までも粉々に砕かれ、漸く平穏が戻ってくると創造神クリアは確信した。


だが、創られた人型はどこまでも狡猾だった。

その身その魂が完全に砕かれる直前に、人々へと、更には世界へと呪いをかけたのだ。


人々にかけられた呪いは『悪魔の呪い』。

適合する魂を持つ人々の子に悪魔の存在を重ねることで、その子は悪魔と同じ存在となる呪い。


世界にかけられた呪いは『魔物の呪い』。

世界に生まれる生物に魔物を必ず含ませる呪いで、魔物が根絶できない呪いでもある。


この二つの呪いをかけられたとは知らず、創造神クリアは消耗した自身を癒すため、深い眠りについた。


そして目覚めて初めてその呪いを知り、その呪いを解くために創造神クリアは今も尽力している。


そして、神が治める神治の時代から、この世界では初めてとなる人が治める人治の時代になったのだった。













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