魔眼族
「んぅあ?……ここは……。」
目が覚めると、僕は四方を岩の壁で囲まれた部屋にいた。
「なんでこんな所に……あっ、そっか。ダンジョンマスターになったんだっけか。」
少し考えたら、色々と思い出してきた。
確か、種族を選択する時に精神保護の為の眠りについたんだっけか。
「そして目が覚めたってことは、種族が確定したってことかな?……体は人の体だし、魔人族とかその辺りが選ばれたのかな?」
まあ、確認してみればいい話だけどね。
「じゃあ、確認してみますかね。『ステータス』ってはあ?!」
ちょ、これも種族が変わったことの影響なのかな?ステータス画面が黒の半透明な板に白の文字で色々書いてあったのから、真っ赤な巨大な瞳の中に白い文字で色々書いてある表示に変化している。
はっきりいって不気味だ。
「っと、そんなことより、まずはステータス確認が先決だね。なんでこんな表示に変化したのかは後で考えればいいや。」
そしてステータス画面を見てみると、また吃驚するような内容だった。
******************************
name:ソウ
age:15
race:魔眼族 《王》Lv.1
job:ダンジョンマスターLv.1
state:通常
Magic aptitude:炎、風、闇
HP 220/220
MP 390/390
str 13
agi 15
dex 39
def ----(物魔耐性測定不可)
magi 36
EX skill
unique skill
完全掃除
可能性の眼
└無璧の魔眼
normal skill
体術Lv.3
農耕Lv.9
title
虐げられし者
痛みを知る者
生還者
可能性の塊『限定:眼』
ダンジョンマスター
選ばれし者
効かぬ者
新種族
*****************************
「魔眼……族?」
聞いたことない種族だと思ったら、称号に《新種族》ってあった。つまり、ランダムを選んだ時の低確率で存在する新種族の創造が適用されたってことなのだろう。
それはいいとして……
「《王》ってなんだろう。魔眼族の王って意味なんだろうけど……」
『回答。ダンジョンを運営する上で必要不可欠であるダンジョンモンスターは、ダンジョンマスターの種族に大きく影響を受けます。その為、ダンジョンマスターの種族がそのままダンジョンモンスターの種族となると言っても過言ではありません。そして、ダンジョンモンスターには一定の知能がある為、創造主であるダンジョンマスターに反抗することがあります。それを防ぐ為にも、ダンジョンマスターは同種族ならば絶対的な支配権を有する《王》、つまり王種へと種族が変化します。王種にはいくつかの権能があり、そのうちの一つが同種族のうち下位の種族への絶対的な支配権です。支配権はその種族の特徴的な部位が核となる為、その部位を破壊されると支配権が著しく弱まります。マスターの場合、その部位は《魔眼》となります。また、核となる部位がユニークスキルと相乗効果を齎し、ユニークスキル『可能性の眼』として統合進化しました。その際、支配の力が強力になった為、核となる《魔眼》を破壊されると通常よりも支配権の弱化が大きくなりました。
補足。ステータス画面が変化したのは、種族が魔眼族へと変化し、その特徴である《眼》を世界が汲み取った為です。』
突然頭の中にどこか機械的な女の人の声が響いて来て、呆気に取られているうちに疑問に思っていたことが次々と回答されていった。と同時に、ユニークスキル以外のことは以前から知っていたかのような感じで、まるで思い出すかのようにそれ以外の知識も頭に浮かんできた。
『推測。マスターは身に覚えのない知識が頭の中に浮かんでいて混乱していると予想。
回答。ダンジョンマスターとして覚醒する際、ダンジョンマスターとしての基本的な知識をインストールしました。
補足。申し遅れました。私はダンジョンコアの擬似的人格第36,489番です。』
その言葉のあと、ダンジョンマスターとしての基本的な知識というものが次々と、濁流のように流れ込んできた。
ダンジョンとは、世界が停滞しないように『争い』を起こし、『欲望』を刺激させ、技術を伸ばすための世界に組み込まれたシステム。
その為にダンジョンはダンジョンモンスターや宝物を生み出す。
ダンジョンモンスターの種類はダンジョンマスターに依存し、ゴブリン族ならばゴブリン派生のモンスターしか生み出せない。例えばオーガ。このモンスターはゴブリンの進化先の一つなので生み出せるが、竜種やウルフ族など、全く関係の無いモンスターは
しかし、基本的には、といったように、異なる種族を生み出す手段もある。
それが、他のダンジョンのダンジョンマスターを殺し、そのダンジョンのコアを自身のダンジョンのコアに吸収させる方法だ。この方法を使えば、自身の種族以外の種族のダンジョンモンスターを生み出すことが出来る。しかも、その生み出したダンジョンモンスターには自身のダンジョンモンスター以上の支配権を有し、しかも驚くべき事に、核となるものがそのダンジョンモンスターの魂なので、滅多なことでは支配は弱まったりしない。
そして肝心の僕のダンジョンモンスターの種類はどんなのかと言えば、魔眼族と呼ばれる今まで存在しなかった種族になる。この種族の特徴としては、まずどんなに弱かろうと、下位種だろうと一つ以上の魔眼を持っている。次に、この種族はハッキリと種族的な上下関係がわかりやすくなっている。簡単に説明すると、上位種族になるほど体の形状が人型に近づき、保有する魔眼の数が増大していく。
さて、ここまでで疑問に思うことがあるかと思う。
それは、『人型に近づく』、の部分だ。
なぜこんな表現になっているのかについてなのだが、これは魔眼族が、一つの種族の姿に囚われず、効率が良い人の姿へと変化していくからだ。言い換えれば、魔眼族とは、ゴブリン族、ウルフ族、リザード族、果ては竜種まで、その姿、能力的特性を持ち、それプラス魔眼を一つ以上持つ種族、ということになる。
つまり、他のダンジョンマスターを殺したりする労力を割くこと無く、あらゆる種族を生み出すことが出来るのだ。
『補足。このような事態は極めて希なことです。考えられる理由としましては、やはり新種族であることが大きいかと。新種族の創造の際にはあらゆる既存の種族の因子を調べ、ベースとすることが多いからです。』
補足ありがとう、
『……』
さて、話を戻そうか。
ならば、早い話、全て竜種で生み出し、それでダンジョンを運営すればいいのではないかと思う者も多いだろう。しかし、そう上手くは行かない。
それは、何のリソースもなくそうホイホイと
そもそもダンジョンモンスターの生まれ方は非常に特殊だ。
まず、生殖では一切増えない。
なぜ増えないかといえば、ダンジョンモンスターの体が高密度の魔力粒子の塊だからだ。
なぜそんな体なのかというと、生み出す際、魂を核として魔力粒子を凝縮させ、生み出されるからだ。
当然、そんな体では性欲が湧くはずもなく、また、食欲も周囲の魔力粒子を取り込めば体が維持できるため湧かず、睡眠欲もそんな体ゆえ疲労とは無縁であり、精神的な疲れでしか眠ろうとさえ感じない。
『補足。ダンジョンマスターは高密度の魔力粒子体ではなく肉体を持ちますが、その体に老いというものはありません。その為、子孫を残すための性欲は必要ない為枯れています。また、新陳代謝が自身魔力と周囲の魔力粒子で補えるため、食欲も湧きません。細胞は最も潤い溢れる全盛期の頃のもので維持されるため、実質不老です。更に、疲労の元となる身体の修復も自身の魔力と周囲の魔力粒子で瞬間的に行なわれる為、精神的な疲れのみでしか睡眠欲は湧きません。つまり、ダンジョンマスターはれっきとした肉体を持ちつつも、三大欲求の殆どを感じません。故にハニートラップ、毒殺、暗殺などが通用せず、安易にダンジョンが攻略されるのを防いでいます。』
ほー、それは基本的な知識には載ってなかったよ。補足ありがと、
『……』
さて、話がずれていたので戻そう。
つまり、リソースがなければダンジョンモンスターを生み出せず、そのリソースの元となるのが
このポイントを消費することで魂を呼び出し、周囲の魔力粒子を凝縮させ、ダンジョンモンスターを生み出すことが出来る。更にこのポイントには使い道があるのだが、それは追々。
そして『LIP』を回収するには、ダンジョン内でHPやMPを消費する必要がある。その為にダンジョンマスターはダンジョンモンスターを生み出し、宝物をダンジョンに設置し、人々の欲望を煽り、ダンジョンを探索させるのだ。
ダンジョンモンスターは倒されると魔力粒子が霧散し、安定のための魂に変わる核としていた魔石を落とし、たまに魔力が強かったりする部位が霧散せずに残ったりする。これが所謂ドロップ品だ。
魔石は魔力が凝縮したものだし、ドロップ品は魔力が込められているだけあっていい素材になるので、知恵ある生き物にとっては極上の素材と言えるだろう。
その為、ダンジョンには野心を燃やすものが日々自身の命を対価として挑戦してきてくれるのだ。
こうして上手く需要と供給が成り立っているからこそ、攻略されていないダンジョンはより一層難易度が高くなり、逆に攻略が全くされていないダンジョンは難易度がとてつもなく低かったりするのだ。
「……っていう感じでいいかな、
『肯定。そのような理解で問題ありません。
補足。マスターの生み出す種族の場合、その特徴である魔眼がそのままの能力を持ちながらドロップ品になる可能性が大きいです。なぜなら、その部位に魔力が集中するためです。
疑問。そのヒカリという名称は、私の名称でしょうか?』
何を言ってるんだ……?
『謝罪。早とちりをした事を謝罪いたしま────』
「────当然そうに決まってるじゃないか。いつまでも名前が無いのは可愛そうだし、何よりその苦しみは僕が一番知っているからね。だから君は、今日この時を持ってヒカリだ!擬似的人格だろうがなんだろうが関係ない!これは決定だからね!」
『…………感謝。ありがとうございます、マスター:ソウ。このご恩は一生────』
「────だー、もう硬っ苦しい!タメ口でいいよ、タメ口で!それがダメならもう少しフレンドリーにしてくれ。な、ヒカリ。」
『………………かしこまりました。マスター、素晴らしい名前をくださり、ありがとうございます。不束者ですが、一生のパートナーとして、マスターをサポートしていきたいと思います。』
「まだ硬っ苦しいけど、まあいいか。じゃあ宜しく、ヒカリ。」
『はい、マスター。』
こうして、僕とヒカリは親睦を深めることに成功した。
やはり、擬似的とはいえ人格があるヒカリをモノ扱いするのは忍びなく、こうして対等とは言い難いが主人と従者みたいな距離感の方がずっといい。
こっちの方が落ち着くしね。
そしてこれからがどうなるのか、それをダンジョンマスターとしての基本的な知識を手に入れたた事で予想ができるようになった僕は、予想が現実になることを今か今かと心待ちにするのだった。
『ところでマスター、私の名前の由来は一体どういったものでしょうか?』
「えっ?だってヒカリって、薄ぼんやりと光ってるじゃん。だからヒカリ。」
『…………………………。』
その後20分間、根負けした僕が謝罪するまでヒカリは何を言っても反応してくれなかった。
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