虐げられてきた僕は迷宮主となり害悪共を【掃除】する

@frith

始まりの日

記念すべき15歳の誕生日の朝起きたら、四方八方を岩に囲まれていた。


「えっ、ちょっ、ここどこ?!」


そう言いながら起き上がり、僕は混乱する頭でなんとか現状を理解しようと試みた。


まず、僕の名前はソウ。しがない農民の三男だ。そして今日は僕の15歳の誕生日、風の月の16日のはずだ。風の月とは、この世界の暦で、3の月に当たる。詳しい順は、火、水、風、土、光、闇、炎、氷、雷、大地、光明、暗黒の基本六属性とその上位属性で表されていて、数年前にお亡くなりになられた大賢者様が制定されたと言われている。なぜ言われている、なのかと言うと、大賢者様は魔術の奥義とか言われる術で数百年は確実に生きており、その数百年の間に定めたので、それ自体を知っている人がもう少ししかいないからだ。その少しとはエルフの一部にいるとか言われている。

って、なんでこんなこと考えたんだろ?……まあいいか。思考を戻そう。

そして今日は15歳の誕生日のはずだから、『ステータス』が見ることの出来る年になる。この世界のステータスは、15歳の成人の日を迎えると表示できるようになっていて、昨日はなかなか眠れなかったような気がするんだけど……。まあいいか。取り敢えず『ステータス』を見ればこの状況がわかるはず!


「よし、どうか表示されてくれよ……。ふぅ……『ステータス』!」


ついつい叫んじゃったけど、ここには誰もいないから恥ずかしくない。それよりも、ちゃんとステータスは出てくれた。人によってステータスの見え方とかは違うらしいんだけど、僕の場合は半透明な黒色の板に白い文字で色々と書いてあるパターンだった。



******************************

name:ソウ

age:15

race:未確定 Lv.--

job:ダンジョンマスター(仮)Lv.--

state:混乱(小)

Magic aptitude:炎、風、闇


HP 220/220

MP 200/200


str 13

agi 15

dex 19

def 36

magi 21


unique skill

完全掃除

無璧の魔眼


normal skill

体術Lv.3

農耕Lv.9

飢餓耐性Lv.8

炎熱耐性Lv.10

氷冷耐性Lv.10

病毒耐性Lv.10

痛覚耐性Lv.10

刺突耐性Lv.10

斬撃耐性Lv.10

殴打耐性Lv.10

孤独耐性Lv.10

精神耐性Lv.10

自己回復Lv.10

悪食Lv.10



title

忌み子

虐げられし者

痛みを知る者

生還者

魔眼の持ち主

ダンジョンマスター(仮)

選ばれし者


*****************************


そしてこのステータスを見て、僕はついつい絶句してしまった。何故って、つこっこみどころが多すぎるからね。


「なんで種族が未確定なの?!僕は人間なはずだよね?!ていうかジョブのダンジョンマスターってあのダンジョンマスター?!それは百歩譲るけど(仮)ってなに?!ていうか能力値高すぎない?!普通って10が平均だよね?!HPMPに至っては平均の2倍だし!しかも耐性多すぎない?!」


そんなふうに叫んでたら状態の欄が『混乱(中)』になってしまった。それを見てやっと僕は冷静さを少しは取り戻すことに成功し、改めてステータスを見てみた。


でも、『混乱(中)』が『通常』に戻っただけで、それ以外は変化なし。

夢だと思って頬をつねってみたけど、ちゃんと痛みがあるから夢じゃない。


「ていうか、何気に二つもユニークスキルがあるんだね。《無璧の魔眼》は僕の体質かな?忌み子の眼は魔眼だって言われてるし。」


そう言いながら僕は、自分の気持ち悪い程白い肌と血のように真っ紅まっかな眼を思い出しながら呟いた。生憎ここは明かりがほんの少ししかないので、自分の身体の色を見れるほど明るくはない。せいぜい壁を見れるくらいだ。


「『完全掃除』と『無璧の魔眼』かぁ。どっちもあんまり強そうじゃないなぁ。まあ、調べてみるかな?」


このステータス画面、実は出した本人以外にはその人の許可を得ないと他人には閲覧できなくて、しかも詳しい説明を求めると知りたい能力についての大体の説明をしてくれるのだ。


******************************

『完全掃除』


自身が『実家』又は『拠点』と認識した空間にあるゴミ、害虫等有害と認識できる生き物を一箇所に集め分子レベルで分解する。

分解した成分は魔力へと強制変換され、自身、又は他の生物、非生物問わずへと吸収させる。なお、生物や魔力を含むゴミはそのままの魔力量で吸収される。


変換効率は以下の通り


ゴミ1kg(魔力等なし)=10MP

害虫等1kg(魔力等なし)=30MP


*******************************


*******************************

『無璧の魔眼』


視認した対象の『壁』を消し去る。

生物、非生物問わず、この魔眼に見られるとあらゆる『壁』が無くなり、多大な影響を受ける。


消し去る『壁』の種類は所有者が任意で選択できる。


********************************




「訂正。物凄く強かった。」

何せ、『完全掃除』は「有害と認識できる生き物」が対象になるし、『無璧の魔眼』は「『壁』を消し去る」、つまり抵抗するものを消し去ることができる魔眼、ってことになる。

つまり、二つを組み合わせると、どんなに防御を固めたって抵抗すらできずに死を迎得させることが出来る能力という相手にしてみれば絶望的な能力になる。


「この能力があればアイツらだって……」

アイツら……つまり僕を他の人間と違うからって虐げてきた村の連中の事だ。

アイツら、人が抵抗しないからって殴って蹴って刺して斬って投げて焼いて冷やして剥いで……アァ、コロシテヤリタイ……。


「……はぁ、やめやめ。今あいつらのことを考えてもどう仕様もない。気分が悪くなるだけだ。……それよりもこのステータスの種族とジョブの欄はどうなってるんだろ……。はぁ、気が進まないけど、説明お願い……。」


なんか一気に冷めてしまったが、とりあえず気になるところは調べておいた方がいい。という感じで種族とジョブの所を調べてみたんだけど……。


******************************

race:未確定

job:ダンジョンマスター(仮)の影響で、種族が選択できる状態。


選択可能種族

魔人族

スライム族

ゴブリン族

コボルト族

オーク族

スパイダー族

ウルフ族

リザード族

トレント族

………………

…………

……

ランダム

******************************


******************************

job:ダンジョンマスター(仮)

世界に100万人分の1の確率で存在するダンジョンマスターの適合者。

15歳の成人の日を迎えると強制的にダンジョンへと転移する。

ダンジョンコアに触れるとダンジョンマスターとして覚醒し、専用の能力(スキル)を得る。また、ダンジョンマスターとして覚醒すると、種族が変わり、その代償として自身を知る者がいなくなる。


******************************


少々突っ込みたい説明が出てきた。


「なんで選択肢に“人族“が無いのかなぁ?なぁ?僕は人族だよ?!選択肢にない時点ですごく未練が…………あれ?未練が……ない?……あぁ、そうか。なんでアイツらと同じ種族に未練なんてあるんだろう。同じ種族ってだけで吐き気がする。」


なんで未練なんか持たなければいけないんだろう?なんで忘れてたんだろう?僕を虐げていたのはみんな人族じゃないか。


「あぁ、そう考えると有難い。アイツらと違う種族にしてくれるんだ。これ以上ない幸福だよ。」


そうと決まれば早速種族変更しよう。


「えっと、ダンジョンコアは何処かなっと。」


そう言いながら見渡してみると、僕がいる部屋────大体10m×10m×5mの密閉空間────の中央に、静かに浮きながら淡い光を放って照らしてくれている、大体直径数十センチ程の球体が目に入った。


「……あれかな?あんないかにもな物じゃなかったら笑うしかないんだけどね。」


そう呟きつつ、近づいて触れてみると、頭の中に直接声みたいなのが聞こえてきた。


『job:ダンジョンマスター(仮)、及びrace:未確定を確認。正規のダンジョンマスター候補であることを確認。ダンジョンマスターとして覚醒するために種族を変更します。希望の種族を選択してください。』


声に導かれるまま、僕は考えていた種族をそのままコアに伝えた。


「種族はランダムで頼む。人族以外なら何でもいい。アイツらと一緒じゃなければ……。」


******************************

『ランダム』

希望される種族がない場合の選択肢。選択肢からランダムに選ばれる。また、極低確率で選択肢にない種族になり、それ以上の極々低確率で存在しない種族が創造される。

ランダムが選択された場合、1639の条件が確認され、クリアする程に乱数が絞り込まれて行く。


******************************


そう告げると、起きてから1時間も経っていないはずなのに強烈な眠気に襲われた。


『了。ダンジョンマスターとしての覚醒プロセスに入ります。精神保護の為、強制的に睡眠状態へと移行。おやすみなさい、マスター。』


その声を聞くと、僕の意識は完全に闇に落ちた。最後の最後で「おやすみ」と言ったような気がしないでもないが、気のせいかもしれない。


………………

…………

……


『……覚醒プロセスに移行。第1プロセス、開始。種族を変更します。「ランダム」が選択されています。ランダム選択プロセス、乱数の絞込み、開始。条件1:《元となった種族への憎悪》規定値を大幅にクリア。条件2:《適応能力》規定値をクリア…………』



………………

…………

……


『…………最終条件1639:《称号確認》クリア。全ての条件の内1599のクリアを確認。選択肢の種族、及び既存の種族のうち、適合する種族を確認………………該当、0件』


『新種族の創造に入ります。…………ユニークスキル、及び称号より特徴を抽出…………』







『…………確定しました。マスター:ソウの種族は魔眼族として創造されます。』



『マスター:ソウを知る者の記憶からマスターを削除……………………………………完了しました。』





『ダンジョンマスターとしての能力が覚醒します。…………EXスキル『迷宮主ダンジョンマスター』が覚醒しました。』



『マスターにダンジョン運営の基本的な知識をインストール……完了しました。』


『ダンジョンが異界から限界します。ダンジョンが現界するまでの残り時間を計算…………完了、残り時間、335時間38分21秒14です。』


……………………

………………

…………

……





******************************


name:ソウ

age:15

race:魔眼族 《王》Lv.1

job:ダンジョンマスターLv.1

state:精神保護

Magic aptitude:炎、風、闇


HP 220/220

MP 390/390


str 13

agi 15

dex ----(物魔耐性測定不可)

def 39

magi 36


EX skill

迷宮主ダンジョンマスター

完全耐性オール・レジスト

魔喰マジック・イーター


unique skill

完全掃除

可能性の眼

└無璧の魔眼


normal skill

体術Lv.3

農耕Lv.9




title

虐げられし者

痛みを知る者

生還者

可能性の塊『限定:眼』

ダンジョンマスター

選ばれし者

効かぬ者

新種族

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魔眼族

魔眼を必ず1つ以上持つ種族、その王。詳しい情報、及び生態は今のところ不明。現在、世界に1人しか存在していない。

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迷宮主ダンジョンマスター

ダンジョンマスターとしての能力が統合されたスキル。「迷宮創造」、「迷宮簒奪」、「迷宮内転移」、「擬似迷宮核創造」、「迷宮魔物創造」、「迷宮物創造」、「迷宮領域全把握」etc…………の複合能力。

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完全耐性オール・レジスト

ソウが持つ多くの耐性が統合進化したスキル。このスキルを持つ者はあらゆる現象に対して絶対的な耐性を得る。

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魔喰マジック・イーター

魔力を身体全体から吸収、喰らうことが出来る。このチカラの前にはあらゆる魔法的な攻撃、防御、支援などが意味を成さなくなる。

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『可能性の眼』

魔眼族の王として覚醒したソウのユニークスキル。望む効果を持つ眼を創造し、支配することが出来る。

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