第7話 人見知りの筈なのに
「あーまず、お前の目的を詳しく聞こう。」
まあ、こいつと俺がまったく同じ目的という筈はない。少なくとも、待遇は違う。
「うん。私の父さんはさ、勇者候補だったの。」
あっ、思ったよりやばそう。てかこいつ勇者候補の娘かよ。そら期待されるわ。
「それでもなにか特別な事が起きる訳でもなく、意外と普通の家庭だったのよ。まあ、変なところといえば、私は父さんと違って、戦闘の才能はなかったの。」
はぁー意外。こいつ、戦闘の天才で、お嬢様なのかと勝手に思ってた。
「でもある日、私の父さんは連れていかれた。」
ああ、貴族か日本人か、そこら辺が妬んだのか。もしくは美人であるクレアを嫁にするために脅す材料ってところか。
「魔王の四天王に。あの、回復の魔神に。」
あっ、全然違った。もっとヤバかった。てか、回復の魔神て、多分、攻撃力とかあんまり強くない奴だよな。それでも勇者候補が倒せないってどゆこと。
「そいつらから父さんを取り戻すために、戦闘の才能がなくても、愛してくれた父さんを取り返すために!私はレベルを上げまくり、才能がなくても戦い続けているわ。」
なるほど、自分の事情なんて無視してまで、助けたいと思うのか。どんだけいい父親なんだよ。まあ、これが普通なのかもしれんし、あるべき姿なのかもな。
「それに、あいつらは人間を魔物にする技術を手に入れてしまった。あの人は強いが故に、確実に魔物されている。それを止められるのは、娘である私しかいない。」
もうバットエンドじゃない?いや、何日か俺が倒れるかもしれんけど、魔法を使えばワンチャンいけるか?
「それで?あんたは?私の事情、全部話したし、あんたも話なさいよ?」
俺は頷く。
話したらいけない事もあるかもしれない。けれど、・・・そんなこと言われてない俺には関係ないね!
「俺がニホンから来たのは分かるな?」
「ええ、知ってるわ。」
「俺達ニホンジンは、そこで死んで、この世界に転生したんだ。」
「なるほど、死んで転生したと・・・はぁ!?死んだってどういうことよ!」
やっぱこういう反応になるよねー。こいつ見てて楽しいわ。
「そのまんまの意味だ。俺達ニホンジンは、死んだ時、神に能力や武器を貰った。俺で言うと魔法や魔力を自由自在に操れるようになった。」
「あんた、操れてないじゃない!魔法を使ったら倒れてるじゃない!」
俺の心にクリティカルヒット。
魔力あっても、体力無いんだから仕方ない。
「うん。だから俺と他のニホンジンは違うんだよ。それに、俺は一回しか使えないが、このレベルで、あんなに大きな魔法を使っただろ?それが証拠だ。」
さすがに、クレアは混乱する。
無理もない。いきなりパートナーが死んだことがあるとか、意味不明である。
「本題に入るが、俺は、家族と一緒に死んで、その家族もこの世界に来てるんだ。それで、この世界に来る時にはぐれたみたいなんだ。だから、俺は家族を探してる。」
少しだけ落ち着いてからクレアが言う。
「なるほど・・あんたがゴブリンと戦うとき、いきなり出てきたのは、この世界についたからってことなのね。」
「そういう事だ。」
意外と理解が早かった。
こういう場ではありがたい。否定されすぎても面倒だしな。
「それで、その時にはぐれた親を探していると。」
「そうそう。」
俺は頷き、こたえる。
「分かったわ。まあ、あんたと目的は似てるし、手伝ってあげる。ところで、あんたの親も能力とか持ってるの?」
俺はクレアに質問される。
そういやどうなんだろうか。多分持ってるよな。他の日本人も持ってるし。
「持ってるだろう。だから、死んでいる可能性とかは無いと思うぞ。」
知らんけど。大丈夫だろう。多分。
「そう。まあ、街とかにいるんじゃない?ギルドに行ったらニホンジンがハンターになったか聞けばいいでしょ。」
ああ、聞けばいいのか。普通に忘れてた。
「まあ、今日はもう遅いし明日にしましょ。」
「そうだな。目的も分かったし、今日はもう帰るか?」
俺も腹減ったし、解散でいいだろ。
「外泊するかもって、母さんに言ったし、今日は泊めて頂戴。帰るのめんどくさい。」
なんでそうなる。正直こいつが女だとかそんなことはどうでもいい。そんな目でみてないから。ただ、1つ問題がある。
「お前、飯どうすんの?」
俺は券二枚しか貰ってないし。これ、俺の今日の晩ご飯と明日の朝ご飯の分だし。
「明日の朝はギルドでご飯奢るから、券一枚頂戴。」
こいつ、変なこと考えやがる。
まあ、朝ご飯奢ってくれるなら問題ないのか?
「んー、まあ別にいいか。ほれ、一枚。」
俺は券を渡す。
「ありがと。こういうこと出来るのは、パートナーだけねー。」
普通はやらないと思うが。
「明日の朝奢れよ?じゃないと・・・なんもおもいつかん。」
「あはは!なにそれ!分かってるわよ。奢る奢る。」
クレアは笑いながら言う。
こんな早く、仲間ができるとは思わなかった。そこは、初戦の死闘に感謝だな。
「腹減ったし、食堂行こうぜ。」
「そうねー。」
俺達は食堂に向かう。
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