第3話 荒くれ者の筈なのに
クレアがギルドの門を開けた先、俗に言う荒くれ者で溢れていた。
「おお!クレアちゃん!帰って来たんだな!」
「おっ?なんだその男?もしかして彼氏か!クレアちゃんもやるなぁ!」
突然、変な男に絡まれた。
「そんなんじゃない!酒臭いからあっち行ってろ!新しくハンターになる人よ。」
「どうも。」
こういう場所苦手なんだよな。俺が大きい声出せる所って限られてるから。
「ガッハハ!お前みたいなのかがやるのかよ!いいぜこっちこい!」
「えっ?」
俺は二人のハンターに連れていかれてしまった。
クレアの方をみたら。
「私も報告しに行こ。」
助けてくれないみたいだ。
もうやだ。この人酒臭い。
「ねぇちゃん。こいつハンターになりたいんだってよ!登録してくれ!」
クレアがいる所とは違う場所のカウンターへ連れていかれた。
「はい。分かりました。少々お待ちください。」
ハンターとお姉さんの温度差がヤバい。風邪ひく。
「これがハンターカードです。」
お姉さんがなにやらカードを持って来た。
これにレベルやらなんやらが表示されるのか。
「まず、これにこの針を使って、血をたらして下さい。それだけで登録は完了です。あまり針を深く刺さないようにしてくださいね。」
お姉さんは針を渡してくる。
これで自分の血を出すって怖いな。
俺は血をカードにたらす。
おお、カードが光った。
「はい。完了です。このカードにはあなたの名前、レベル。そして討伐したモンスターが書かれます。あなたの名前はシンキさんですね。」
名字は書かれないらしい。
ところで俺のレベルはなんだろう。
「あれ?もう2Lv?あら?ゴブリン16体も倒してる。ハンターにもなってないのに戦ったんですか?あまり危険なことしないで下さいよ?」
「・・・すみません。」
俺悪く無くね?なんで怒られてる?いや怒られてるってほどじゃないけどさ。なんか、うん。神かなんかしらんけど絶対許さん。
「まあ、無事で良かったです。モンスターに囲まれていると、例えゴブリンなどの比較的弱いモンスターであっても危険です。囲まれないように注意して戦って下さい。」
「分かりました。」
一体ずつ倒すようにすればいいか。多分。
「そして、このレベルは依頼を受ける基準になります。レベルが低いのに難易度の高い依頼を受けないようにしてくださいね。」
「はい。」
チートがあまり使えない内は難易度が低い依頼か。
「最後にモンスターの遺体ですが、業者が回収するので、その分のお金を依頼達成の報酬から差し引きますね。」
さすがに遺体をそのままにしておけないからか。
「では、ゴブリン16体の討伐。32000ゴールドなので、業者への支払い3000Gを差し引き、28000Gです。どうぞ。」
俺はこの世界のお金を受けとる。
この丸いやつがお金か。これどれだけあれば1日すごせるかな?
「では、お疲れ様でした。今後の成果を期待します。」
お姉さんが一礼したので俺も頭を下げ、それからクレアの方に向かう。
「お前、ハンターになる前からゴブリン16体も討伐したんだって!?」
「おお!やるじゃねえか!クレアちゃんに続いて期待の新人の誕生か!?アッハハハハ!」
「見た感じ武器持ってないな?どうやって倒したんだ?もしかして素手か!」
うわぁ。めっちゃ絡んできたぁ。めんどくさぁ。
「えっえっと、ゴブリンの武器奪って・・」
なんか俺も変なこと言ってるよな。
「武器奪ったのか!やることが豪快過ぎるぜ!ガッハハハハ!」
ギルドの中にいるハンター皆に笑われる。
なぜこうなった?仕方なくない?だって素手じゃ無理でしょ?
「よし!この俺が剣術を教えてやる!来な!」
えっ?いやありがたいけど、大丈夫か?酔ってるよな?てか俺今日の生活費稼がなきゃ。
「おお!新人の教育か!いいな!俺もやるぜ!」
その後、男から剣術を、女からは魔法を教えてやると言われて、皆、ギルドを出ようとする。
「まてまてまて!!」
おおう。救世主。
クレアがハンターを止めた。
「聞いてたわよね!?さっきゴブリンと戦って疲れてるから明日の朝、シンキを鍛えてやって頂戴!あと、酔いすぎだから頭冷やしなさい!」
よかったよかった。俺より他のハンターの人たちのほうが心配だし。
でも、そしたら反感買うんじゃ?一応、俺の為にやってくれてるんだし。
「それもそうだな!」
あれ?そうでもない?
「ごめんごめん。新人なんて久し振りでな!クレアちゃんにも教えてやろうか!」
「いいわよ。でも、シンキを鍛える時は私も行くわよ。心配だから。」
俺って歓迎されてる?うん。普通に嬉しい。
「じゃあ、私達疲れたから帰るわね。明日よろしく頼むわ。」
「おう!任せとけ!シンキだったか?忘れんなよぉ?」
「あっはい!」
まあ、一応いい人が多くてよかった。
「そんじゃまた明日な!」
「はい!また明日!」
そして、俺とクレアはギルドを出る。
クレアに宿屋に案内して貰い、その時に言われる。
「あんた、戦闘の時とギルドに居るとき、全然違うわね。」
「いや、本来俺は気弱な奴だからな?戦闘の時とかだけはテンションあげんとやってられんから。」
「あーなるほど。怖いもんね。」
そう。大きな声とかあげんと、敵の気合いで潰されるから。
「あっそれと。」
クレアは小さい鞄からなにやら出そうとしている。
「これ、3000G。5000Gあれば1日過ごせるわ。あなたは家ないでしょ。それまで、1日5000Gで過ごすのね。今から行く宿屋からはご飯も出されるから。」
えっ貰っていいのか?これ?
「えっといいのか?」
「うん。」
クレアは嫌な顔一つしない。
「一応あんたに助けてられたしね。あんたが来なかったら確実に死んでたわ。だから、これはお礼。あんたが強くなったら、私になんかしなさい。そうすれば、貸し借りゼロよ。」
貸し借りか。あんま好きじゃ無いんだが。
「そういうことなら遠慮無く貰うぜ。」
俺はクレアから受けとる。
「うん。じゃ、ここが宿屋だから。明日の朝、早めにギルドに来なさい。せっかく鍛えてあげるんだから。じゃあね。」
「おう。またな。」
俺はクレアを見送り、宿屋に入る。
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