第2話 転生はチートで楽できる筈なのに

 とりあえずすぐに分かる情報を集めよう。

 まず、ここは森。整備された道でゴブリンに襲われている。

 ゴブリンは大体30体。15体ずつ倒せば勝てる。

 一緒に戦うのはこの女一人。俺と女、二人であいてしなきゃいけない。

 俺が使える武器は、魔法・・・使い方わかんねぇ。今はこの拳でやるしかないか。

 いざとなったら横の草むらを突っ切って隠れる。

 「よしよしよし、お前は大丈夫か?」

 この女が戦えないと意味ないからな。

 「えっええ!あんたこそ足引っ張るんじゃないわよ!」

 「初めに謝っておくすまん。」

 「えっ!?ちょっとまっ、マジでぇ!?」

 仕方ないね。初心者だからね。

 俺は大きく息を吐く。

 「ヨッッシャァ!!コイヤー!!」

 「よっしゃあ!?なんで!?」

 こうやって叫ばんとやる気でない。部活のせいだ。俺は悪くない。

 「ガアアアアアア!!!!」

 「俺より声出してるとでも言いたいのか!エエエエエエイイイ!!!!!オオオオオシイイイイイ!!!!!!」

 「ええ!?なにこの状況!?」

 どちらも死ぬかもしれない。こうやって叫ばないとやってられない。

 「「ウガアアアアアアアアアア!!!!!!!!」」

 「なんだっけ?これ?スポーツマンシップ?」

 まさしくそのとおり。

 「しゃあ行くぞ!!」

 俺は目の前の敵にとにかく突っ込む。

 「ガアア!!」

 俺に向かって剣を振るが俺のほうが速く、ゴブリンがかたまってるほうに投げ飛ばす。

 ゴブリンは皆奇声をあげ、次々と襲いかかる。

 俺は投げ飛ばされたときにゴブリンが落とした剣を持ち、アニメの知識を頼りに応戦する。

 ゴブリンは俺に剣を降り下ろすが、俺は剣を重ねるようにして、力技で押し返し刺す。

 クッソ、殺すとか気分わりィ。

 だか、殺らなければ殺られるのでとにかく殺して殺して殺しまくる。

 異世界転生って残酷過ぎるぜ。

 俺の背後から攻撃する奴は女が倒し、女の隙をつく奴は俺がやる。

 さっき会ったばっかりだが、死ぬかもしれない戦いじゃそんな事も言ってられない。必死に、フォローする。

 全く。なんで主人公達はあんな気楽に戦えるんだよ。きつい、キツすぎる。たかがゴブリン相手でも、殺すまで気が抜けない。殺しても気が抜けない。

 魔法を使ったら、初めての俺じゃあ、暴発して俺も女も死ぬかもしれん。

 異世界転生なんていいもんじゃねぇ。

 「「これでラストォォ!!!」」

 二人同時にゴブリンを斬り、全滅させた。

 「はぁぁぁーーーーー」

 疲れた動けん。もう無理。

 「お、おつかれーーーー。」

 「おつーーー。」

 こいつもかなり疲れているらしい。

 俺達は一回斬られただけで死亡確定だからな。緊張したわ。

 「あんたよくそんな剣で戦えたわね。てかもう壊れてるし。」

 こいつは笑いながら言う。

 「それなー。本当は素手でやろうと思ったんだけどなぁ。」

 俺も笑いながら返す。

 「無茶すぎー。」

 「「ハハハハハハハハハ!」」

 死から逃げ切った。そりゃこんな風になるわ。

 「あんた名前は?」

 「俺はシンキ。お前は?」

 「私はクレア。ハンターとして、これからもよろしくね。」

 「したらなんか起こりそうだな。今みたいに。まっ、よろしくな。」

 俺達は拳を合わせる。

 「もう帰ろうぜ、こんなところ居たくないぞ?」

 またモンスターが来たら、疲労し過ぎた俺達じゃ、今度こそ死ぬ。

 「そういえば、あんたいきなり出てきたわよね?行く宛てとかあるの?てかハンターなの?」

 「あー俺まだハンターじゃなかったわ。」

 めっちゃ忘れてた。ハンターになって親探して、魔王倒さないかんのだ。

 「じゃ、ギルド行くわよ。ここらへんのこと分かる?」

 「全然?全く?」

 来たばっかで、この世界のことすらほとんど知らない。

 「それじゃついてきなさい。ついでに助けてくれたことだし、なにか礼でもしてあげるわ。」

 一応俺も助けられたんだがな。

 「金くれ。」

 「ずうずうしいわね。とりあえず行くわよ。」

 クレアは置いていた剣を持ち、歩いていき、俺もついていく。

 「ギルドで登録とかしなきゃいかんのか?」

 俺能力値低いだろうから嫌だな。

 「ええ。あなたの場合、今回の戦闘でかなりレベルあがったんじゃない?ちなみに、暫くしたらレベル、全然上がらなくなるわよ。」

 「うっわ。キッツ。」

 ゲームでよくあるやつじゃねぇか。

 「お前何レベ?」

 「私は今ので15Lvね。ハンター初めて一週間位だし、早いもんよ。」

 「一週間でこの戦闘とか苦労してんな。」

 「本当にそれ。」

 クレアのやつ、めっちゃ嫌な顔してる。俺はハンターになる前からだし、少しはこいつの方がましだな。

 「おっと着いたわよ。」

 いつの間にか街に入っていて、ギルドの前にいた。

 ここで俺はハンターになるのか。ちょっとだけ怖くなってきた。

 「それじゃ入るわよ。」

 クレアは大きい扉を開ける。

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