第8話
「はい、姫お姉様、お茶です」
お昼休み、食べ終わった後にまったりしているとフリルスが気をきかせてくれる。お湯にきゅうすにお茶の葉、何処からもってきたのであろうか?
「ありがとう」
「えへへへ」
顔が崩れるフリルスであった。うーん、嫁にもらうならフリルスの様な人だな。はて?わたしの理想の恋人とはどんな人だろう?頭が良くて、顔が良くて、タチバナみたいに可愛くて……。うん?間違えたと。
「姫お姉様、ようかんもあります」
おお、茶菓子とな、これは上機嫌コースだ。タチバナも大きな口を開けてようかんを食べる。うぅぅぅ、今日の妹ラブの一枚にようかんをほおばるタチバナはピッタリである。スマホをタチバナに向けカシャリと撮るのであった。美味しそうにようかんを食べるタチバナは妹コレクションの極上である。
「お姉ちゃん、許可なく撮るのは禁止」
などと言いつつ、機嫌は悪くない。タチバナも、ようかんが美味しくらしく、笑みがこぼれている。お茶を飲み干し「ふう~」などと言うと、
「もう一杯、いかがでしょうか?姫お姉様」
お、おう。注がれるお茶は美味しそうである。ずずずっと、お茶を飲むわたし達、一瞬の静寂ともに花を見つける。
「フリルス?ようかんまだある?」
花より団子である。イヤ、団子ではなく、ようかんである。団子とようかんとの違いなど大した問題ではない。しかし、何故ようかんなのだろう?小豆色の甘いようかん、お茶によく合い、食後であるのを忘れる。
「はい、姫お姉様。まだ、ようかんはありますよ」
包みの中からようかんを取り出す。美味なようかんがまだあるとな。フリルスはきゅうすにお湯を注ぐ。ようかんをさらに口に運ぶ、甘い味が広がり、上機嫌コースの峠である。しかし、今日は平和過ぎて聖剣も開店休業である。
「タチバナ?愛のある一枚を撮ってよい?」
今度は妹に許可を取って撮影である。
「もう、お姉ちゃんは……」
タチバナは渋々に許可をだす。妹もやはり上機嫌コースだ。なので、一枚をカシャリと。さて、妹ラブな一枚も撮れた。あぁ~午後から授業だ、ここでまったりしていたい。現実はともかく、さらに、お茶をずずずっと、お茶を飲むのであった。
ある夜の事である。わたしが妹コレクションを整理していると。フリルスからメッセージが届く。
『姫お姉様、会いたいです』
えぇ~今からか……。大事な妹コレクションを整理中だし。
『姫お姉様の声が聞きたいです』
『はろー』などと返事を返すがフリルスが言う事をきかない。
わたしはタチバナの部屋に行き、お姉ちゃんのスマホを渡す。
「タチバナ、お姉ちゃんの全身の姿を撮ってよ」
二つ返事でタチバナは了承して、カシャリと一枚。
「お姉ちゃん、何に使うの?Tシャツにハーフパンツ姿なのに?」
「ちぃちぃちぃ、お姉ちゃんの愛溢れる姿をフリルスに送り。フリルスをなだめて、妹コレクションを整理の続きをするのだよ」
「そうなの」
冷めた妹の言葉とは裏腹にわたしのテンションは上がってきたのであった。え~と『はろー、フリルス、わたしの画像でメロメロになって下さい』と、『姫お姉様、ごちそうです。あぁ、嬉しさのあまり、こ踊りをしてしまいました』うんうん、素直なフリルスで助かった。さて、妹コレクションを整理の続きを行おう。
「愛の言葉を込めて~♪」
鼻歌を歌いながらスマホに向かっていると。ピンポン~おや客人だ。玄関に向かうとフリルスである。
「来ちゃった」
さて、どうしたものか……。
「散らかっているけど入る?」
「はい、姫お姉様!!!」
嬉しそうだな、ここは少し意地悪をしてみよう。
「タチバナ、フリルスが来たよ、これからファミレスに行こうよ」
「ひ、姫お姉様?今日は姫お姉様の部屋でまったりではないのですか?」
「あん……」
そして「行ってくるね」と親に言って外に出る。ファミレスまでの道のりは雨であった。雨にも負けず、風にも負けず、歩くのであった。ファミレスに着くと「いらっしゃいませ」と声をかけられる。わたし達三人はパフェを頼む。
「愛のある生活は~♪」
わたしは鼻歌を歌いパフェが来るのを待つが退屈である。
「フリルス?フリルスは三度の飯よりパフェは好きか?」
「はい、姫お姉様」
「では、では、タチバナはどうだ?」
「えぇ、まあ」
曖昧な返事だ。これは、タチバナの七不思議の一つにしよう。ファミレスで何も見ずにパフェを頼んどいて、三度の飯より好きでないとな。うん?オレンジゼリーセットも頼む、タチバナであった。これはパフェ以外の甘い物も大好きと判断しよう。タチバナ七不思議~、オレンジゼリーセットとパフェ、好きなのはどちらであろうか?さて、パフェが届く、甘いこの味は美味である。外を見て雨止まないかな?などと普通の事を考える。
「普通列車に揺られて~♪」
口ずさむ歌は普通の生活であった。
「お姉ちゃんって音痴だよね」
はて、何か聞こえたが気にしないお姉ちゃんでした。
たまの土曜日……はて、土曜日は毎週来るのではと。そんな事を気にしつつ、目が覚める。
「お姉ちゃん、ご飯だよ」
おぉ、そんな時間か、ネコの抱き枕をむぎゅ~して起きる。明け方の浅い夢を思い出す。確か異世界で勇者をした夢だ。最強でもなく最弱でもない。魔王も出てこないし、モンスターもメタルスライムに出会って歓喜した記憶がある。はて、ネコの抱き枕も夢に出て来た。鳴き声は「ぐにゃーん」であった。こいつめとネコの抱き枕を叩く。
「お姉ちゃん、バカなの?」
うぐ、抱き枕とじゃれ合っているところをタチバナに見られた。朝から妹に罵倒される。うん、妹ラブなわたしにはごちそうである。さてさて、ご飯である。
スマホを不意に確認する、いつもは土曜日には昼まで放置なのにと思いながらである。フリルスからメッセージが届いていた。
『姫お姉様、頭をポンポンして』
見なかった事にしよう。だいたい、背が低くて小学生にしか見えないのに年上という現実がおかしい。わたし以外に接する時はしっかりしているのにと思う。とにかく、ご飯だ。
「ぐっともーにんぐ」
「あ、おはよう」
タチバナの反応が鈍い。間違えたか、うん間違えた。
「おはよう、タチバナ」
修正してみた。これでタチバナの心は鷲づかみで、今日の妹ラブな一枚は確定である。
「はぁ」
タチバナの反応が更に鈍い。間違えたか?イヤ、昨日もこんな感じであった。
「よよよ、タチバナ、朝の妹ラブな一枚が欲しいよ~」
素直に頼んでみる事にした。
「一枚だけだよ」
おぉぉ、救いのかみだ。さて、テーマは何にしよう。などと長考する。部屋に戻り頭をポリポリとかく。今朝の夢が異世界転生であった。はて?異世界でメタルスライムに出会ったことは異世界転生と言えるのであろうか。深く考えるのはよそう。そうそう、わたしはネコの抱き枕をタチバナに持たせてスマホを向けて一枚撮る。これは美味、ネコの抱き枕はブサイクでもタチバナとの相性が抜群である。
ごちそうさまでした。
「お姉ちゃん、今日だけだよ……」
お嬢さん、悪い気はしないのに意味深な奴よのう。おっと、ここまでにしておこう。うん?ご飯はまだであった。ご飯、ご飯と。
「姫お姉様、プール、プールに行きましょう」
「ダメです」
「何で、です?今日は一番の水着を用意してきたのに……」
詰め寄るフリルスは真剣そのもの、突然脱ぎだすとパラパラと裸に近づきスクール水着姿になる。お、お、何だ、着ていたのかなどと安心するがロリ成分100%だ。
「仕方ない、海で我慢しなさい」
「な、な、なんと、海とな!」
少し、こ踊りをするフリルスであった。
「露店すら無い狭い海、波消しブロックで見えない地平線、ひ弱なライフセイバー」
だいたいあっているのが怖いがこの近所で日帰りならそんなモノだろう。
「とにかく、服を着なさい、タチバナもこの辺の海で良いだろ?」
「うーん、去年の水着は着れるかな~」
なんとな、タチバナが成長しているだと。わたしは妹コレクションを持ち出して去年のタチバナの水着姿を探し出す。悩殺ビキニであった。この上をいくだと!!!有りえん!!!カシャ、ポン。何かが壊れた音がしたが気にしないでおこう。
「部屋で着てみてもいいかな?」
で、だ。海に行くとなると明日の休みだが、わたしも体重が増えている。
間違いなく成長期だからだ。そう、これは思春期の甘酸っぱいお年頃でけして太った訳ではない。ねんのために自室でモゾモゾと。ふ~う、入ったと。しかし、何故ウエストがキツイのであろうか?ま、思春期には時空も超える事も出来るらしいし気にしないでおこう。
「お姉ちゃん、やはりキツイよ」
そら見ろと。
「……うーん、上だけキツイよ。今回は下だけ着て上はパーカーで水遊びするね」
ぬぬぬ、それも御馳走、妹ラブな一枚に追加決定だ!!!てな訳で海に行くことになった。
フリルスがわたしの机の前に入り浸る。
「姫お姉様、こんどは花火大会に行きましょうよ」
「あぁ、はいはい」
フリルスの話の相手をしているといつの間にか眠気が増すのであった。え~と昨日の夜は英語の課題に悩まされていた。わたしは将来大学に行く予定が無いのに英語の勉強である。
?
進学校に通っていて大学に行かないとな。どうやら悪い夢を見ていたらしい。わたしはエンターのある人生?パソコンのEnterキーは重要である。これは意味不明であるが日本の英語教育に例えよう。
?
「姫お姉様、現世はここですよ」
「おっと、悪い、悪い、亜空間に飛んでいた」
フリルスとの話は飽きないのだが眠くなる。そう亜空間に飛びやすいのだ。
「うん?確か花火大会の話だったな、フリルスはみんなで遊ぶのが好きなのか?」
「はい、姫お姉様、これが今年の花見の画像です」
……うーん、神社の境内らしき所でフリルスが一人、巫女装束の姿で箒を持ち花びらを掃いている。
「これは、お仕事中で、みんなで花見ではないのでは?」
「はい、神社の参拝者に撮ってもらいました。残念な事にわたしには友達がいなく
て……花見の宴会など夢のまた夢なのです」
暗い事さらりと言うな。しかし、聖鏡の巫女というだけあって巫女さんなのか。さて、友達のいないフリルスが可哀そうだここは花火大会も行くか……。えーと、スケジュール、スケジュールと。ダメだ、スケジュールが合わない。これ以上、遊ぶと英語に付いていけなくなる。
「フリルス?花火大会より花見の宴会がしたい気分なのだが」
「い、嫌です。花火大会は行った事がないのです」
「コンビニに売っている、極小花火大会で我慢できないか?」
「ひ、姫お姉様はわたしを幸せにしてくれると言ったじゃないですか!!!」
う~む。……ま、フリルスの言うことだし。しかし、本当にフリルスを幸せにすると言ったのであろうか。
「うーん、英語さえできればな……」
「姫お姉様、英語の勉強ができれば花火大会に行けるのですね」
「まあ」
曖昧な返事だが広く言えばそう言う事である。
「英英辞書!!!」
何を思ったのか、フリルスは得意げに鞄から分厚い辞書を取り出す。
「は?」
「英語の事が英語で載っているのです」
イヤな予感がするな……。
「この辞書さえあれば、そう英語の授業が楽しくなり、わたしが面倒をみなくても姫お姉様は特待生になり推薦で大学に合格するのです」
いや、英語は嫌いだし。まてよ……この辞書を借りてタチバナに自慢すれば妹ラブな一枚が撮れるかもしれない。試しに英英辞典なる物の画像をタチバナに送ってみた。
「お姉ちゃん、バカなの?英語は読めないのにアホな物を手に入れて」
やはり、バカにされた。これがお姉ちゃんの限界なのか……。ま、進学校の勉強だし、あって困る物でもないか。さて、花火大会なのだがフリルスに恩をうって困った時は個別指導のあてにしよう。あれ?辞書を借りたら個別指導が受けられないのでは?
????????
いかん、亜空間に飛ばされた。地道に勉強かな~こんな人生だしね。
「フリルス?辞書はともかく個別指導があれば花火大会に一緒に行こう」
素直に個別指導を要求して遊ぶ時は遊ぼう。
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