第4話

 うん?今日は英語の課題が出来なかったので。空き教室に居残りである。


「タチバナ~教えて~」


 などと、妹にメッセージを送る。お姉ちゃんの威厳が丸つぶれでも、解らないものは解らないのである。さて、空き教室での隣の席は特進クラスのグループである。


 特進?特進?特進である。


 そう、特進クラスなら将来に家庭教師のバイトくらいするだろう。などと、妄想してみたが、教えてくれそうもない。しかし、こんな難しい英語、将来、使うのであろうか?

 うん?


 昨日、妹に言われた事は、


「中学の英語もろくに解らないの?」


 で、あった。わたしはお姉ちゃんなので……。などと、自分に言い聞かせて勉強である。少し、トイレに行き、鏡に映る自分を見て。あぁ~恋でもしたいなと、思い、自分の胸をもんでみる。うーん、なかなかだ。きわどい妄想している暇は無い。


 英語、英語、英語と。


 空き教室に戻ると、タチバナがいた。


「お姉ちゃん、パン食べる?」


 意味不明であるが、小腹がすいたので遠慮なく受け取る。優しい妹は居て不便はしない。しかし、一向に英語を教えてくれないので、妹も英語が苦手なのではと思い、心配する、お姉ちゃんであった。うん?背中の聖剣がうずく。妹のタチバナの闇に聖剣が反応したのだ。


「お姉ちゃん、どうしたの?まるで別人みたいだよ」


 ???


「どんな感じなの?」

「さっきまでの、頼りない、お姉ちゃんが……」


 聖剣の巫女の存在理由を思い、妹を見つめる。


「お姉ちゃん、パンもっと食べる?」


 うん?


 可愛い妹がもっと、可愛くなる。やはり、ここでスマホを取り出し、一枚撮る。

はて、いつも間に決めポーズを覚えたのだろう。ほぼ毎日、妹を撮っているからか。ここで、何を思ったか、妹の胸をもみもみと……。う、見慣れているはずが、なかなかだ。


「もう、お姉ちゃんたら。英語の勉強、わたしもこの空き教室でするよ」


 流石、可愛い妹である。などと、思う今日この頃である。


 うん?


 わたしは夢を見た。妹が闇に呑まれる夢だ。


「お姉ちゃん、何時まで寝ているの?」


 妹のタチバナが起こしに来てくれた。うぅぅぅ。また、お姉ちゃんとして失格なことをしてしまった。


「お姉ちゃんは疲れ過ぎているの、だから休ませて」


しかし、このまま、寝ているのも問題だ。夢の事を忘れ、必死にお姉ちゃんとしての威厳を取り戻そうとしなくてはいけない。


「今日はベランダの花に水をあげる当番だよ」


 今日は午後から雨の予報である。賢いお姉ちゃんとして、花に水をあげるか迷うところである。


「後で……」


などと言って当番を休もうとする。妹は呆れて、出ていく。しかし、お腹が空いた。わたしは適当に着替えて、朝ご飯を食べに行く。


 さて。


 おかずが足りない、成長期のわたしの事を考えていないメニューである。妹はご飯を多めに食べ空腹を紛らわせているようだ。


 うん?


 今日も学校である。わたしは部屋に戻り、身だしなみをチェックする。


「お姉ちゃん、バカなの?彼氏のカの字もいないのに」


 タチバナの一言に傷つくわたしであった。


「少し、泣いても良い?」

「お姉ちゃんなら少しの事で泣かない!」


 う、妹に怒られた、ここはお姉ちゃんとして、泣かない事を決意する。と、思っていると、涙が出てくるのであった。


「お姉ちゃん、バカなの?女の子なら泣かないの!」

「だって、彼氏、欲しいし」


 わたしは素直にごねてみる。呆れる妹は不機嫌である。それは、また、遅刻しそうなのであるからであった。


 今日は小腹がすいたので、ファミレスに寄る事にしたしかし、妹のタチバナは体調が悪そうである。お姉ちゃんとして心配である。


「悩み事があるなら、相談にのるよ」


お姉ちゃんとして当たり前の事を言うと。妹の反応が不機嫌である。最近、お姉ちゃんらしい事をしていないので『???』である。とりあえず、ファミレスに入り、水を一杯。今日は体育があったので水が美味しい。


「お姉ちゃん、ラーメンセットが食べたい」


 そうそう、ファミレスに来たらね……。


「………………」


 それは絶句であった。


「王盛、パフェで我慢しなさい」


仕切り直して、お姉ちゃんらしい事を言う。


「お姉ちゃんのおごりでね」


 妹の言葉に応えようとするが、財布が鉛の様に重い、小銭ばかりであるからである。それでも、お姉ちゃんらしい事をしなければと決意をする。


 決意、決意、決意と。


 しかし、決意だけでは腹は膨れないのであった。


「お姉ちゃんの決意表明!!!」

「何それ?」

 

 お姉ちゃんは決意表明をして、隠し資産をタチバナの為に使うのであった。妹の顔がほころぶ、これは一枚撮るチャンスである。可愛い妹には笑顔が似合う。わたしは小さなケーキで我慢する。うーん、水が美味い、などと、思う昼下がりであった。


 さてである。今日も寝坊である。妹のタチバナに起こされる事も慣れてきた。もはや、お姉ちゃんが妹に起こされるのも正しき事かと思うほどである。


 タチバナのメイク時間が長い?わたしはタチバナを観察するとリップの色も明るくなっていた。突然の事にお姉ちゃんは少し心配である。


「このリップの色、おすすめだよ」

「お姉ちゃんは清楚なの」


 日常の中で小さな変化で可愛くになる妹が羨ましい。次の日。ドラッグストアに寄り妹と同じリップを買ってみた。早速、付け、付け、付け。

鏡を見て明るいリップが輝いている。


「お姉ちゃん、結局買ったの?」

「はい……」


 妹とお揃いである。わたしは特別な感情になる。このリップは有りだ。タチバナもリップを付けると。うん、可愛い、瞬殺の可愛さであった。まさに、妹ラブである。当たり前だが一枚。イヤ、今日は二枚目も撮ることに。


「タチバナ、最近、何で、メイク時間が長いの?」


 素直な質問である。


「お姉ちゃんの真似だよ」


 妹の愛を感じる言葉である。


「明日はわたしが起こしてあげるよ」


 タチバナに感謝を込めて守れそうもない約束をする。


「お姉ちゃん、わたしと健康どっちが大切なの?」


もちろん妹である。寝不足くらいでは死なないのでと思うのであった。


「必ず、明日は起こすよ」


 と、やはり、守れそうもない約束をする。それから、次の日はやはり妹に起こされた。


「わたしはお姉ちゃんだもん!!!」


 強がりを妹に言うが、やはり、説得力がない。


「はい、はい」


 あれ、軽くあしわれた。


「お姉ちゃんはタチバナへの愛で出来ているの」


 うーん、愛とは何であろう?言ってみて分からない。スマホには載っていない言葉であった。


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