第9話 新たなる 力(ちから)


 地下のバンカー所謂、対爆壕(たいばくごう)の中に、照明に照らされた戦闘機が一機あった。最新型の戦闘機だ。


「これが イオンドライブ搭載の新型機。この機体は確かに俺自身がエンジン開発まで手掛けていた機体だ。」

「そう、この機体こそ新たなる共和国の力じゃ」


この戦闘機のスペックは半端なものではなく49800HP出力のイオンエンジンが二基、最大加速つまりはトップスピードは驚異のマッハ3.9に達するという。


このような特殊戦機、または新しいタイプの【主力機】の大本となる機体。何十人何百人もの工学博士とフライトスタッフ、製造関係者たちの技術推移の結晶と呼ぶべき戦闘機


 イートファス FX-150ws


これが、この戦闘機の正式名称らしい。荒木はこの戦闘機に歩みを進めながら過去の戦い、「妹」を失った 大空襲 のことを考えていた。その空襲がなければサーバーガーへの道を歩むことは無かっただろう。戦闘機なんてならなかっただろう。それどころか戦闘機開発への道もなかったかもしれない。それは、すでに恒久たる時が過ぎたかと思われる7年前にさかのぼる。



 (七年前 ローガイエ州 技術学園都市 パーパス)



 それは、"戦争"が始まってまだ二年目のことだった。まだ、パーパスの大学院に所属し電子工学・機械工学の博士号を取得して間もないこと。


突如、それは起こった。


「ルイージ、アルフレッド、君たちはまだそんなことを 冗談じゃないぜ! 僕はそうは思わない」

「笑わせるなよ、稀代の大天才くん!!」



と笑いあいながら

大学院の庭のような遊歩道をみんなとディスカッションしながら歩いているといきなり防空警報がけたたましくなり響いた。


「緊急放送です。パーパスに空襲警報が発令されました。空襲警報です。空襲予想地区は次の通り ローガイエ 東部 南東部 全域です。直ちに防空シェルターに避難してください。繰り返します。東部 南東部全域に空襲警報。空襲警報。以上共和国ニュースでした。」



警報音が町中に鳴り響き、 ある程度冷静さはあったが中には悲鳴を上げる女性もいた。学園都市、それは戦略的に見てかなりのチョークポイントで兵器を開発可能な技術者を狙うというのはある意味『禁じ手』のような作戦だった。実際、この二年空襲警報があったのは二回しかなかった。


「まずい、まだ、妹が 学園内に・・・」


「そんなこと言っている場合じゃねーだろ 防空シェルターへ!!」



 そんな時だった。上空にかなりの高度だったが数十の爆撃機の編隊が・・・逃げなければという思いと 妹 真希の顔がちら付きみんなの静止を振り切り外へと出ようとしていた。


宙を舞う妹の名前、その時だった。爆弾の雨あられが学園都市を襲ったのだった。


投下されたのは連邦軍の2000ガロン爆弾の無数の姿が見えた。その瞬間、スローモーションのように学園の各棟に爆弾が降り注ぎ、建物が爆散してゆく、まだ、外にいる人たちの叫び声と、爆弾の炸裂音が響き渡った。そして、飛散する爆撃された建物のがれきとガラス片があたりに爆炎と共に散らばった。


この爆撃での死者は1200名を超えその中には妹 荒木 真希の名前もあった。その時誓ったのだった。この戦いに勝たねばならないと、それと同時に強烈な怒りと憎悪を覚えていた。





 七年経ってもその怒りは消えることは無く反ってより気持ちが強くなるのを感じていた。そして、自分自身、「荒木 アキラ」彼自身に一定のめどなどもなく戦う意思と力が鮮明になっていた。それは大空の夢を見た時からは大きく変わり始めた荒木にとって大きな事件だったのだった。

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スカイ・スノー ハイド博士 @mazuki64

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