第7話 違う空を追いかけて

「彼には出会えたかい?」

「うん」

 

 シンとした廊下で長老とばったり会ったのは、その日の夜のことだった。

 言いたいことは色々あるが、言ったところで無駄だと分かっていたので素直に答えた。


「試算では50年と見ていたが思っていたよりも早かったな。さすがというべきか」


 ハクがこの箱庭にたどり着けたという事実に、まさに同じことを思っていた。

 

 かつての人類史を見れば迷走の塊だけれど、今は違う。

 吸血鬼への憎悪を糧に、革新的な技術がどんどん開発されめざましい発展を遂げている。

 今はまだ、吸血鬼の優勢だ。けれど一度ブレイクスルーが起きれば、形勢は変わる。


 いや、もう起きているかもしれない。

 ハクの持っていたあの機械は、10年前には影も形もなかった。それにあの結界を破るなんて今日まで考えられなかったことだ。


 長老の箱庭での実験結果の予想を遥かに超えたスピードで吸血鬼に対抗する術をここ数年で人類は身につけ始めていた。


「計画を急ぐ必要がある。ラボまで来てもらってもいいか。手始めに500ml欲しい」

「もちろん」


 人類と吸血鬼。

 互いの種の生存をかけた衝突を回避するためならなんだってする。

 

 僕の大切なジニア。君には早く対人類の最終兵器として成長して欲しい。


 完全体になった君を見るのが僕の夢なんだよ。


 

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