EP2「あざらしの逆襲」
―――ケルメェス星系η星「オルシカーラ」
流れ星。
一条の閃光が暗闇を駆けていく。青白い尾を引いて飛翔するそれの姿は、あるいは箒星と呼ぶべきであったかも知れない。
光はオルシカーラの赤道とちょうど垂直に交わるような軌道を描いて進み、多くの空で衆目を集めた。
と言っても、流れ星など珍しいものではない。見られればどことなく幸運、という程度の現象だ。故に、その光を目撃した誰もが、何の注意も払っていなかった。
やがて箒星は地上に落ちる。結論から述べるならば、それは隕石はおろか宇宙塵にすら満たない
「もふ」
濛々と立ち込める黒煙の中から、名状しがたい唸り声が漏れ聞こえる。アスファルト舗装の街路は巨大なスコップで掘り返したかの如く抉り取られ、先の落下の衝撃に晒された箇所には真っ赤に溶融した
「スーパーヒーロー着地だぜ。まぁこの通りの体格なんで普通に落ちてきただけなんだけど」
のそのそと這い出して来たのは―――1匹の、あざらし。
弱肉強食の
彼はガレオルニス星系に遺されていた中継衛星を発見、これを利用した
「しかし、シャチは嫌いだが良い町だね。素晴らしいビル街だ、僕がクモならもっと喜んだところなんだけど……」
ガレオルニス星系に展開した強襲艦隊と、後詰の後方部隊。盤石だったはずの第11銀河連合艦隊の編成は、あっさりと瓦解してしまった。
すべてを焼き尽くすあざらしの暴力を前に、アニマルバースの命運は潰えたかに思えた―――。
「…やれやれ。ロープ遊びどころじゃなさそうだ」
だが。
アニマルバースの未来を背負わんとする覚悟の持ち主は、第11銀河連合艦隊だけではない。
「待っていたぞ…あざらしのごまよ!! トウッ!」
赤いマント、グローブにブーツ。メタリック・ブルーのボディスーツに包まれた肢体は、どこを見ても信じがたいほどに太く、分厚く、逞しい。組まれた腕の隙間からは、ライオン族の言語で「正義」を示す文字がド派手に光り輝く金色のエンブレムが覗いている。
破壊の権化たるあざらしと対峙するは、アニマルバースの頂点捕食者が一角。先立つアニマルバース2011年、「幻獣戦役」を集結に導いた大英雄、ライオンのライオネルだ!
「これ以上の暴虐は見過ごせん! お前たちあざらしの企み、我が正義によって打ち砕かせて貰うッ!!」
「いいね。着地の似合うスーパーヒーローはそうでなくっちゃ」
ライオネルは英雄らしい義憤を隠そうともせず、対してごまはあくまで軽口を叩きながら。
街路が割れる。ライオンとあざらしの姿が霞んで消える。最新鋭の戦車の装甲すら容易く穿つ拳が、互いを目掛けて衝突した。
「Gooooooooooo、Maaaaaaaaaaaaaaaa……!!」
「ぬうっ…!? 何というパワー! 一体なぜアザラシがこれほどの…」
インパクトの刹那、空間へと解き放たれた強烈なエネルギーが突風となって吹き荒れた。傍に停まっていた自動車がひっくり返り、街路樹は半ばから圧し折れ、雑居ビルの窓ガラスが砕け散る。
「…だが! アニマルバースの平和の為にも、負けるわけにはいかん!」
「言ってろよ、毛玉風情がッ」
すかさず連打! 機関砲めいた怒濤のラッシュの応酬!
ライオンとあざらしの拳とヒレがぶつかる度に衝撃波が巻き起こり、溢れ出したパワーが街路の罅を拡大させていく!
「くっ…」
「死ね」
やがて、ごまの速度がライオネルを捉える!
体格に優るライオネルを上回るため、ごまが選んだのはよりスピーディーで鋭角的な攻撃。10㎝四方に満たぬ小さなヒレを固め、刺し込み、ライオネルが纏う筋肉の鎧の間隙を正確に撃ち貫く!
すぐさまライオネル渾身のカウンター・アッパーがごまの下顎を掬い取るが、それすらもあざらしの計算の内。もふもふの毛皮で衝撃の大半を吸収し、しかし自身を宙へと誘う上向きのエネルギーは維持する、卓越したダメージ・コントロール・スキル―――ジパング・コマにも似た高速回転と、そこから繰り出される回し
「いいや………ま、だ、だ!!」
異様な手応えがごまの後ろヒレを襲う。
見れば、あの軌道とタイミングなら確実に砕けていたはずのライオネルの頭を、何か6角形の半透明なエネルギー場のようなものが守っている。
ライオネルほどの英傑となれば、その武勇はごまの耳にも届いている。彼は怪力無双で知られ、ある時は背中のマントをなびかせて大空を飛び、またある時はサイコキネシスで手を触れずに物体を動かし、またある時はその眼光が実際に破壊力を持ったレーザービームとして発射される。
しかしながらこの「バリア」は、ごまが知る限りライオネルの能力には無いものだ。
「ファイアー……ボール!!」
BOOOOOOOOM!!
困惑しながらもどうにか退き、姿勢を立て直そうとしたごまに、巨大な火の玉が降りかかった! たまらず後退!
「小癪な!」
「卑怯者という誹りならば、甘んじて受けよう! だが、これもアニマルバースのためッ」
ごまは魔力を行使して右の眼球周辺の光を歪め、遠方の様子を映し出す。
―――およそ数十メートル離れた地点の、名もなきビルの上に居たのは、艶やかな漆黒の毛並みを持つネコの女だった。
「魔術師……大魔女ゲルダか!」
「えぇそうよ、おチビさん。悪いけど、私にだって守りたい世界があるの!」
大魔女、ゲルダ。
千色杖「ネストラーベ」を操る、アニマルバース最高峰の魔法使いだ!
9つの魂を有し、300年以上の時を生きる真理の探究者。その叡智は万物万象に通じ、創造も破壊も思うがままと言われている。
杖の先端にあしらわれた大きな宝石が煌めき、何十発もの火炎弾が放たれる!
「良い趣向だ。だが、僕を仕留めるには足りないな!」
あざらしの腹筋とヒレが波打ち、発破じみた炸裂音をアスファルトから響かせ、その身体を射出する。
林立するビル群の壁面を蹴りつけ、音速に迫るスピードで空中を踏破しながらも、全弾に致死の熱量が秘められた「ファイアーボール」を紙一重で回避! 接近! 回避! また接近!
ごまとゲルダの相対距離が20mを切る。遠距離攻撃を得手とする魔法使いの戦いにおいて、20m以近は敗色が濃厚となる間合いだ。ゲルダの見据える空間全体がスローモーションとなり、己の頭蓋を叩き割らんと振り抜かれるあざらしのヒレを知覚する―――。
「遅い」
死を目前にフルスロットルで回転するゲルダの思考速度の視界で、尚も目にも留まらぬ超々高速で動く影があった。
ゲルダがその存在に気付くよりも早く、ごまのヒレが切り落とされる。そこから迸った鮮血が街路に落ちるよりも速く、ごまの身体に十重二十重の裂傷が刻まれる。そして、ごまが闖入者の横槍を察知した頃には、哀れな小さいあざらしは無数の破片に分断されていた。
「オレの
言って佇むのは、あるひとつの伝説だった。
群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、ただ自由と人情のために戦う義勇の一匹狼。ゴン・ギ=ツネ流忍法を極めたアニマルバース最優の
平時は義侠の盗人として第11銀河中の治安維持組織を悩ませる生粋のトリックスターだが、今回ばかりは様子見を決め込んでばかりいられないと、重い腰を上げて駆けつけたのだった。
「……うむ。今は貴様との因縁は忘れよう、右近左衛門よ」
やや遅れて追いついたライオネルは、ゲルダを守るようにして立つ右近左衛門の姿を認めて言った。
いつもならば事件現場で顔を合わせる度に全面衝突へと発展する彼らだったが、あざらしという共通の敵を前にした今、奇跡の共同戦線が実現したのだった。
「ライオネル。フン……愚図めが。あんな雑魚に、いったい何を手こずっていた?」
「故にこそ、警告するぞ。まだだ」
「…ッ!?」
右近左衛門は尚もライオネルへの皮肉を口にしようとしたが、何の気なしに今しがたバラバラにしたあざらしの方へ向き直り―――絶句した。
「―――ア…………ア……ア、ヴァアアァァ」
白い身体とは対照的な、赤黒いオーラを立ち昇らせながら。
千々に引き裂かれた胴が、ヒレが、眼球が。ビデオの逆再生か、あるいは粘土細工めいて、ぐねぐねと伸び、繋がり、寄り合わさっては元の形へ修復されていく。
無論、読者諸兄が知る尋常の宇宙とはいささか事情の異なるアニマルバースの物理法則や生物学的見地に鑑みても、このような再生力は全くの埒外の範疇である。第11銀河の絶対摂理であった捕食者と被捕食者の関係性を覆し、本来不可能であるはずの殺戮を為すべく急激な進化を遂げた、あざらしだけの禁断の異能と言えた。
「……劣等種如きが。だが今のは少し堪えた…」
「馬鹿なっ…!?」
「構えろ右近左衛門!! 狼狽えている暇は無いぞ!」
再びあざらしの足元から轟音! 跳躍! 此度は先刻よりも遥かに高い!
シャチ共和国・首都シャチントンD.C.の街並みを見下ろしながら、ごまは身をよじって力を溜める。その出所が額であるのか口元であるのか、考察するのも馬鹿らしいほどの絶大なエネルギーが収束し―――。
「GOMA―――BEAM!!」
CABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!
吹き飛ばされ、蒸発する雑居ビル! 雑居ビル! 街路樹! 違法駐車レンタカー! 雑居ビル! 焼け崩れる日常の風景! シャチントンがいま地獄に変わる! おぉブッダよ、あなたは寝ているのですか!?
成す術なく逃げ惑うライオネルらを呑み込むべく、そそり立つ火柱が地上を走る。多くの建造物が薙ぎ払われ、今度こそどこにも逃げ場が無くなったと思われた……その時だった。
『アンチ・ゴマフ・バリア、出力全開!!』
天から舞い降りた一筋の光が、のたうつ破壊の帯を弾いてかき消した。
ビル群の合間にそびえるその威容は、明らかにアニマルバースの住民である平均的な動物たちの体格に収まるものではない。
『待たせたな………』
―――それは、機械と呼ぶにはあまりに大きすぎた。
大きく、分厚く、重く、そして
それは、まさに、
『伝説魚人ブリオン!! ここに見参!!』
現れたのは、ロボット。
大型で、
サカナ族の若き長、ホオジロザメのキャプテン=ジョー・ネード駆る太古の超兵器・ブリオンだ!
「ブリオン! ジョーが来てくれたのか……それに、あの肩に乗っているのは」
否! アニマルバースの未来を想う同志の増援は、ブリオンだけではない!
「儂のような老骨まで引っ張り出すとは、相当手詰まりらしいな」
「ケケケ! おいおい、すっげぇ楽しそうなことやってんじゃねぇか! どうして俺様を呼ばないんだぁ!?」
ペイペイ八極拳の創始者、パンダのヤン・パンリー導師!
悪魔の力をその身に宿す狂戦士、カミキリムシのンガ・マージャ!
片や既に一線を退いた老爺、片や人倫道徳の通じぬ怪物。どちらも世界の存亡を懸けた一大決戦には相応しくないと思われていたが、事ここに至ってはこの上なく頼れる人材もとい獣材であることに疑いの余地はなかった。
「クッ…! 次から次へと…!」
「やれる。やれるぞ……この戦い、必ず勝つ! 皆、私に続けぇーッ!!」
ライオネルの赤いマントがはためく。艦砲射撃3000発に匹敵する貫通力を誇るパンチが、ごまのガードを力任せに粉砕して顔面に突き刺さる!
たまらず吹き飛ばされるあざらし! そこを疾風迅雷の速度で飛び込んで来た右近左衛門が追撃!
不意を打たれた先程とは違い、持ち前のスピードと相手の弱点を見通す洞察力で右近左衛門と渡り合うごま。しかしそんな彼も、右近左衛門の――どんな達人でも、あくまで生き物である以上、必ずどこかで生じてしまう――わずかな隙を補う仲間たちにまでは対応し切れない。
なぜ彼らが右近左衛門とごまの超絶的な速度域に割って入ることが出来るのか? 答えは単純だ。大魔女ゲルダによる「
そして、その絡繰りに気付いたごまが距離を取ったとして、彼があざらしである限りブリオンのアンチ・ゴマフ・バリアは突破できない。ブリオンに搭載された無数の銃火器とゲルダの遠距離攻撃魔法によって、一方的に削られ続けるのみ!
「お、おのれ!」
「もらった!」
「トドメを刺すわよ!」
「合わせる…!」
『了解!』
「では微力ながら、お手伝いさせていただくとしよう」
「ヒャハハハハハ!! テメェら、俺様の邪魔すんじゃねぇぞ!」
右近左衛門の輪郭がぶれ、白煙と共にその姿が幾人にも増殖する! ゴン・ギ=ツネ流忍法の秘奥、アブラアゲ分身の術だ!
分身に翻弄されるごまが無防備な姿勢を晒した瞬間―――BRATATATATATATATATATATA!! ペイペイ八極拳の真髄たる怒濤の連続打撃が叩き込まれる!
ライオネルの双眸が輝く! ゲルダの杖が紫電を纏う! ブリオンの胸部ユニットが展開する! マージャの両掌に炎が渦巻く!
ヤン導師の拳によってボロ雑巾めいて宙に放り出されたごまへ、全力のレーザービームが! 雷を司る最上級魔法が! ウルトラ・チクワティック・カノンが! 万物を侵食する闇の業火が! 一斉に解き放たれる!!
途轍もない爆光と大音響がシャチントンを揺らし、すべてが白んで―――――。
――――――――――――――――――――――――――――――
「やったか………」
未だ燻り、火の粉を散らすクレーターの底に、それはあった。
かつて雪原のような純白であった毛皮は見る影も無く、真っ黒に焼け朽ちている。
アニマルバースを代表する英雄6人による一斉攻撃は、超進化生命体・あざらしの中でも最上位にある個体をも討滅せしめた。
第11銀河全体の、勝利であった。
「あぁ。…だが」
「虚しいものじゃのぅ。勝者などと言っても、いつの時代とて……」
『町もこんなに壊されてしまった。復興には時間が掛かるだろう』
「ハ、知ったこっちゃねぇな。つぅかよ、どうせお前らが手伝うんだろ?」
「うむ、当然だ! だって私たちは」
「―――おい」
ぞくっ―――。
誰も。
六英雄の誰も、その瞬間、己が何をしていたか覚えていないという。
ただ、何一つ思考することなく。論理的な意味など想うことなく。
獣らしく、本能のままに、身体が動いた。
ライオネルが跳躍し、蹴り下ろしを放つ。
右近左衛門が疾走し、神速の斬撃で頸部を狙う。
ゲルダが杖を構え、発動した死の呪いが吹き荒れる。
ブリオンの秘密の機構が起動し、超高圧電流を発しながら咆哮する。
ヤン導師が拳を握り、最短最速の軌道と最大最強の膂力で一打を見舞う。
マージャが悪魔の爪を素早く伸長させ、敵対者を細断する。
あざらしが、形を取り戻す。
あざらしが、橙色の火花を散らす。
あざらしが―――あざらしの、純白の毛皮が、少しずつ彩りを変えていく。
「オ、オ、オ、ゴオォッ」
ごまが、黄金に輝いた。
「―――GOOOOOOOOOOMAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――!!」
火炎とも雷撃ともつかぬエネルギー波が爆裂し、六英雄とその御業を瞬時にして吹き晴らした。
手刀もといヒレ刀が空を切る。ライオネルとマージャがしたたか打ち据えられ、まばらに残るビル群へと突っ込む。
次に、交錯。ペイペイ八極拳の奥儀、現世に満ちる陰陽の気を特殊な呼吸法で取り込み、宇宙そのものと合一して振るう必中必滅の暗殺術。掠めただけでも容易く生物の命を奪う魔拳を、胴の中央に突き刺した。そのはずだった。
ヤン導師の生涯でも最高峰に至った「武」の体現は、己の懐に潜ってきたあざらしの桜色の頬を、しかし掠めもしなかった。ごまの後ろヒレが鞭のようにしなり、ヤン導師の頭部が爆散した。
先刻に倍する無数の分身を出現させた右近左衛門が、右近左衛門たちがごまを包囲した。剣技、暗器、異能の遁術までありとあらゆる殺戮技巧が、韋駄天の神速にて矢継ぎ早に繰り出される。
どれも通じなかった。右近左衛門が殺したごまは全て残像だった。気付けば右近左衛門は、自分と泣き別れになった自分の首から下を、ごまの手の中から見ていた。
半ば狂乱状態になって、魔力を暴走させるゲルダ。青い炎が噴き出し、巨大な龍を象ってごまへと襲いかかる。
ごまのヒレに光が凝集し、小さな塊を形成した。路傍の石ほどのサイズと重量感で放り投げられた光球がゲルダの龍炎とぶつかった瞬間、シャチントンがホワイトアウトした。
瓦礫と黒煙の只中、消失した左半身を再生させるべく治癒魔法を使おうとしたゲルダに向かって、冷たい鉄塊と化したブリオンが振り下ろされた。
ブリオンに飛び乗ったごまは早速その頭部へと移動し、ひしゃげた板金を一枚ずつ剥がしていった。
刹那、ジョーが撃ったレーザーガンは見事に命中。ごまは表情一つ変えずにジョーの喉笛を掴み、機体から引きずり出すと、そのまま口元に宛がい咀嚼した。
ライオネルは思う。一体どうしてこうなってしまったのか、と。
黄金色の闘気を揺らめかせながら、ごまが近付いてくる。摂理への叛逆者、アニマルバースの秩序を破壊する混沌の王が。
「ごまー」
彼らの他の何人とて口にすることも憚られる、冒涜的な鳴き声が耳朶を打つ。
ライオネルは、ゲルダの龍炎を跡形も無く解体し、シャチントンを廃墟に変えたのと同じ小さな光球を見た。
――――――――――――――――――――――――――――――
―――第11銀河中枢・高重力
……………わた、しは。
「……れ……連合艦隊、第三次強襲艦隊まで、全…滅………」
「何だと!? ………クソッ……クソッ。クソ!! あざらしどもめ!!」
ここ…は………。
「………、……。……………ヤルダモだ」
「長官?」
「聞こえなかったのか? ヤルダ=イクストリーモを出す。こうなった以上は已むを得ん」
「馬鹿な! 血迷ったかチンパジン!? あれだけは…!」
「黙れベニクラ!! ならば他に方法があるのか? このアニマルバースで、ヤルダモの他に奴らを殺し尽くせる兵器が存在するのか!」
「やめろ…やめてくれ、友よ、君が真にアニマルバースのことを想うなら」
「……憲兵、その男を拘束しろ。ベニクラ―――その右ポケットの9㎜で何をしようとしていたかは知らんが、私の目は誤魔化せんぞ」
「なっ!? ま…待て! おい、離せ! 離せと言っている! おい!! チンパジン! 私は………あぁ、僕は……!」
―――そう。
「ヤルダ=イクストリーモ、起動シーケンス開始」
「起動シーケンス開始。エグザイル・ドライヴ、稼働開始。臨界出力まで30秒」
「セーフティ、レベル1から100までアンロック。エアロック解除、ハッチオープン」
「電磁カタパルト、セットアップ完了」
「Eドライヴ、出力安定。エネルギーライン、正常稼働中」
「ワープドライブ・システム、遠隔起動。目的地座標、セット」
「人工知能『アリストテレス』、出力系、駆動系、電装系、火器管制系と接続。ヤルダ=イクストリーモ…………システム、オールグリーン」
「行けます」
わたしは。
「―――第11銀河統括機構、最高理事として命ずる。ヤルダ=イクストリーモ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます