第2話 日常

マクドナルドでの食事を終えた俺は店を出てからも、「ワイ、エビバーガー喰いたい」の言葉が脳裏に焼き付いていた。ワイ?喰いたい?彼女の姿ははっきりとは見なかったが、家に着くまでの間、彼女のことを想像した。彼女は何者なんだろうか。おそらく常識人ではないだろう。ツンデレなのか。ヤンデレなのか。そもそもデレることがあるのだろうか。強烈な個性。変態なのか。BLなのか。本当に女性だったのか。声の高い男だったのかも知れない。隣の席でなくてよかったかも知れない。よく分からないまま、家に着くと疲れが襲ってきた。

仕事はハードだった。俺はある大病院の事務職をしている。毎日の残業で疲労と眠気は並大抵ではない。土日の出勤も珍しくはない。毎日の仕事に追われるなかで、仕事外の記憶はすぐに消え、上書きされる。そうしてまたすぐに消えてゆく。行きつけのマクドナルドは0時に閉店する。向かいのケンタッキーフライドチキンは21時に閉店する。仕事が終わり、車に乗り込むともう23時を過ぎている日々が続くなかで、いつまたマクドナルドでハンバーガーを食べれる日が来るのか漠然と考えつつ、エンジンをかける。それはきっとしばらく無理なお話だろう。コンビニに寄り、ビールを買って帰宅する。そんな日々が続いた。

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