エビバーガーを買いに

@char_chan

第1話 出会い

その日、俺は遅めの食事をしていた。いつものマクドナルド。いつものビッグマックセット。店は住宅街に位置しており、また近隣の高校の帰宅ルートでもあるため、昼以降は子連れ客や高校生たちで混雑していることが多い。

階段を上がって2階席に行くとスペースは広い。だが学生たちの陽気で少し騒がしい声を嫌い、俺は1階席に空きを探す。対面式の2人用テーブルセットに空きを見つけ、腰をおろした。タブレットをカバンから取り出し、Wikipediaにアクセスする。「活字をおかずにご飯を食べる」というやつだ。なにかを読みながら食事をする悪しき習慣はすっかり体に染み付いてしまった。今日はアフリカをテーマに検索しよう。どうでもいい知識ばかり増えてゆく。まずは国家だ。アフリカ諸国の個性を知りたい。セネガル。アフリカのサッカー強国であり、サッカーフランスW杯ではブルーノ・メツ監督の指揮の下、グループリーグを見事に突破した。また、パリ・ダカール・ラリーの終着地ダカールを抱える国でもある。その後、ギニア、シエラレオネ、リベリア、赤道ギニア。適当に調べていく。シエラレオネはフランス語でライオンの背中、という意味だ。アメリカにもシエラネバダ山脈というのがあるが、きっとフランス領であった時の名前を残しているのだろう。そんなアフリカのなかで俺が最も興味を持ち、刺激をうけたものは「グレートジンバブエ遺跡」だった。グレートジンバブエ遺跡。アフリカに存在した黒人による高度な文明。白人がそうと認めなかった文明。俺はこの遺跡にロマンを感じた。

「ワイ、エビバーガー喰いたい!飲み物は水でえーわー!!」その声に俺は我に帰った。ワイ?なんて一人称だ!現実にこんな言葉を使う人がいるのか!あまつさえ、それは女性の声であった。俺は無意識に声のする方を向いた。ひとつのテーブルをはさんだ向こうに女性が座ってスマホを注視していた。

その時、俺と彼女の距離は5m。数日後、俺は彼女に恋をした。

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