妻の真似事は痛いの?
もう一人の娘はキム・バルヒェットといい、金髪でキリッとした顔をした、大変綺麗な女性でした。
ペンシルバニアの小さい地方空港で、二人は引き合わされ、ディヴィドソンのプライベートジェットが待機しています。
「フィオナさん、神の花嫁とは何をするのでしょう、なにかご存知でしょうか?」
「キムさんは、何も聞かされていないのですか?」
「はい、神のお側に仕える、それだけしか聞いておりませんので……私たちは、神のお子を身ごもるのでしょうか……」
「それは無いと私は聞きました、私たちがお仕えするのは神の更なる神、女神様との説明でした」
「ただ、お住まう場所は快楽が満ち満ちている土地、だから『絶縁』はなくても、家族と一緒の生活は出来ない、里帰りぐらいは認める、そんな話でした」
「……」
「ところでキムさんは、この乗り物は怖くはないのですか?」
フィオナさん、飛行機などは乗ったことなどなく、顔がかなり蒼白いようです。
「私は何とか大丈夫なのだけど……フィオナさんは里帰りは出来るのね……」
「……キムさんは戻れないの?」
「私の両親は去年なくなったの、そこで教区の学校になんとか勤めて生活していたわ」
「学校といっても、ドイツ語と英語と算数だけだけど、あとは聖書……」
「先日、この話があって、私は神の花嫁に選ばれたと……学校は退職させられて、もう帰るところなどないの……誰も説明してくれないのはその為よ……」
「……」
「ねえ、キムさん、私たちは互いに神の花嫁、これから仲良くしてくれませんか?」
「私も里帰りは出来ても、家族とは過ごせない、お友達もいないし……」
「それに、妻の真似事もすることになると、聞いていますから……私……どうすればいいか……教わっていないし……」
「私も詳しくは知らないの、でも痛いと聞いているわ……」
「痛いの?」
「そう聞いているわ」
その時、プライベートジェットは、アーカンソー州のホットスプリングス・メモリアル・フィールド空港に着陸しました、ゲストを乗せるためです。
そのゲストは女性のようで、タラップを軽快に上って来ました。
細い面立ち、ほっそりとしたスタイル、信じられないほど美しい……黒髪で東洋人のようです。
しかし全身に威厳がまといついているような、女帝という言葉が近いのでしょう。
その女性がフィオナたちを見て、
「あら、先客がいらしたの?悪かったわね、強引に乗り込んで」
「いえ、私たちこそ、割り込ましていただいたようで……申し訳ありません」
「アーミッシュの方よね、東京へ行くの?」
「はい」
「事情は聞いているわ、ご家族と住めなくなりそうですが、大丈夫?」
「貴女は?」
「そうでしたわね、吉川茜といいます、ナーキッドの関係者です」
姉上様は、どこでも誰とでも、上から目線ですね。
「私も東京へ行くのよ、しばらく同じ機内の乗客、話などしましょうか」
「何か聞きたいことがあるなら、答えてあげるわよ」
「ありがとうございます、私たち、不安で……これからどうなるかと思うと……」
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