立派な『神の花嫁』になるために
「不安は分かるわ、しかし正直に言うなら、貴女たちは、『人を救うための神との契約に必要ないけにえ』、神は残酷で理不尽な存在」
「その神にお願いするのだから、代価を支払わねばならない、アーミッシュにとって、対価として差し出せるものが、貴女たちなのよ」
「アブラハムよ、おまえの子、お前のひとり子イサクをつれてモリヤの地に行き、わたしが示す山で彼を燔祭として捧げよ、長老はこうおっしゃいました、私たちはささげ物なのだと……」
「では、ある程度は覚悟をしているのね」
「はい……」
「つまり『神の花嫁』になるため、またはその後のありようにたいして、不安があるということなのね」
「はい、私たちはその……夜のことについて、なにも知らないので……」
茜さん、ここで笑ってしまいました。
「失礼、そうよね、大事なことよね、お母様は何も教えてくれなかったの?」
「その……生理のこととかだけで……あとは夫に任せなさい、とは聞きましたが……相手は女神様……それに……痛いとか……」
ちょっとまじめになった茜さんでした。
「はじめてなら確かに痛いかも……でも、すぐに痛くなくなるわよ、なんせ相手は『神』ですから、任せればいいのよ、それについては絶対に大丈夫、素直に言われたとおりにすればOKよ!」
突然、「お料理は得意?」と聞いた茜さん。
「アーミッシュの料理なら出来ますが?」
「繕い物なども出来るわね?」
「はい、キルトも作っていました」
「それなら大丈夫ね、妹はそのあたりを高く評価するでしょうから、遅かれ早かれ、『神の花嫁』にはなれるわ、アーミッシュは火星に移れそうね」
「妹?」
「貴女たちの相手、吉川美子は私の妹なのよ」
「お言葉によれば、私たちは選ばれただけで、神の花嫁になるとは決まっていないのですか?」
「正式にはね、その昔、イエスが神とあがめたエールさんは、なかなか努力したのですよ、そのぐらいしなければ、神の花嫁にはなれないわよ」
この後、茜さんは、キムとフィオナの二人とおしゃべりを延々と続けていました。
そこは茜さん、いろいろと変なことを教えています。
「分かりました♪神様の前では、私たちは幼子のようなもの、裸になってご奉仕するのは当然なのですね♪」
「そうよ、世界を救うために、貴女たちは生まれたままの姿、清らかな身と心でもって、世の中の穢れを一身に引き受け、神に清めてもらうのよ」
とにかく無茶苦茶な理由をつけて、純朴な娘さんを騙しているような……
「とにかく、まずはお手本を見て勉強することね」
茜さん、ジェットに積んでいた、ハリウッドの映画の中から恋愛映画を幾つか二人に見せています。
スザンヌ・プレシェットさん主演の恋愛専科とか、オードリ・ヘップバーンさん主演のローマの休日とか……ナインハーフとか……最後のほうはかなりいかがわしい、レズビアン物とか……
純朴な二人ですので、東京につく頃には、強固なアーミッシュの価値観はかなり弱まっており、神に仕えるということが第一、神により世界が変わる。
神の世界の約束事を守ろう、そう、立派な『神の花嫁』になるために……
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