バストアップ騒動


「旦那さま、ご歓談の中、申し訳ないのですが、こちらの電話がかかっております」

 それはナーキッド関係者の専用携帯電話、それが鳴っているので、執事さんが気を利かせて持ってきたのです。


「ネイサンです、これはサリー様、ご無沙汰しております……ケイシーを……私より妻の意見を聞いて見なければ……ローズマリー、サリー様がお話があるそうな」


「はい……我妹子(わぎもこ)証文……私どもに異論はありません、勿論全てはケイシーの考え次第です」

「強制などいたしません……でも、ミコ様は……承諾なされた……えっ、もうすぐ来られる!」

「分かりました、証文を用意しておきます♪」


「貴方、聞きましたね!」

「聞いた、望外の慶事だ、とにかく準備をしなくては」


 ネイサンさん、執事さんに、

「もうすぐ、グレンフェル・ビクトリア嬢が尋ねてこられる、お茶を用意しておいてくれ」

「プライベートなお客様で、もう一人来られるはずだ、相手は私たち三人でする」


 ネイサンが、このようなことを云っている間に、ローズマリーがケイシーに、

「意中の方がやってくるわよ、私たちは我妹子(わぎもこ)証文を差し出すつもりだけど、貴女しだい、署名する?」


 この言葉、ケイシーは何を意味するのかは、すぐに理解しました。

「するわ!」

 即効で用意された我妹子(わぎもこ)証文に、いそいそと署名したケイシーでした。


 その後が大変です、娘はお風呂に入り、髪型を整え、念入りにメイク……

 母は娘の膨大な衣装ストックから、服などを選びながら、お茶会の指示などもしています。


 たった二人のお客様のために、ロッシチルド邸は大騒動になったのです。


 そんな時、バスからケイシーの悲鳴が聞こえました。

「どうしたの!」

 ローズマリーが駆けつけると、ケイシーが姿見の前で泣いているのです。

「ママ!胸が小さくなった!」

 

 どうやら秋のトーナメントのために、春先からの練習のしすぎで、バストアップをコロッと忘れていたようです。

 その上、運動のせいか、贅肉がとことんそぎ落ちた状態で、苦労して二の腕のお肉をバストに移動させた、その余分なお肉がなくなってしまっているのです。


 人並みより少しばかり大きな胸は、本当に人並みの、いや、いささか小ぶりな胸に変わっています。


「でもケイシー、貴女の胸は綺麗と私は思うわよ」

「だめよ、ミコ様は巨乳がお好きと聞いたわ、もうだめよ、私は嫌われるのだわ……」

 

 その頃、ミコさんとビクトリアさんは、玄関までたどり着いていました。

「あるじ殿、今夜は私の番、その姿で抱いていただきたい、私ももう少し、めかしこんでおくから」

「いいわよ、でも夕食まではだめよ」


「分かっている、あの娘は大したものだ、サリーとアナスタシアが早めに手を打つわけだから、ダフネも私も感心した」

「そうね、最初にミスしたときに、崩れるかと思ったけど、一途な気持ちが幸いしたのでしょうね、勝つという一念でしたね」


 ミコさん、フロックコートを着ているのです。

「男装ですから胸が苦しいですね、まあ嫁取みたいなもの、ご両親には敬意を表せなくてはね、でもビクトリアさん、十分おめかししているでしょう、とても綺麗なのにまだおめかしするのですか?」

 

「昼間はサリーからケイシー以外を近づけるなといわれた、ただ化粧は夜の自分のためだ」


 呼び鈴を押すと、絵に描いたような執事さんが出てきました。

「グレンフェル・ビクトリア様ですね、旦那様がお待ちです」


 チラッとミコさんを見て、なにか納得したような雰囲気でした。

 男装のミコさん、居並ぶメイドさんたちの、ラブラブ光線を一身に受けてたりしています。


 そんなことに気がつかないのが、ミコさんのどんくさいところ、呑気な会話を交わしています。

「貴女、ケイシーの介添えと思われたわよ」

「なんでもいいさ」


「旦那様、見えられました」


「これは……言葉もありませんな……」

「ところでケイシーは?」

 ネイサンから事の事情を聞いたミコさん。

 笑いながらケイシーの部屋へ、しばらくすると上機嫌のケイシーと二人で戻ってきました。


 ケイシーが、

「ミコ様が、使用頻度が高いと大きくなるって……大きくしてくださるって……」

 恥ずかしそうに、こんなことを云いました。


 再び大騒動でアフタヌーンドレスを着込み、ミコさんとツーショット、そして五人でもう一枚、この後、二人だけでエッチ……

 なんとケイシーの首には、側女のチョーカーがはまって、妖艶な雰囲気が漂っていました。


 この後、バスで汗を流したケイシーは、バストが少し大きくなっているのに気がついたのです。


  FIN


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