家族の団らん

 

 次の週末、久しぶりにケイシーは自宅に帰省、ロッシチルド財閥本家ですから大邸宅です。

 ロッシチルドはかなり前から、フランスもイギリスも、アメリカのネイサンさんを総帥と仰ぎ、一致団結していたのです。


 このアメリカのネイサンさんの自宅が、ロッシチルド財閥の本宅、ケイシーはそのお嬢様、ずらりと並ぶメイドさんに迎えられました。


 母親であるローズマリー・ロッシチルドと、珍しいことにナーキッドの最高幹部で、父であるネイサン・ロッシチルドが在宅し、ケイシーを待っていました。


「ケイシー、テレビで見ていたよ、中継されていたからね、誇らしかったぞ」

 日本のスリーシスターズの秋の交流戦はテレビ不可なのですが、北米はこのあたりは、おおらかなのです。


「ママも見ていたわよ、ハラハラしたわ」

「ありがとう、第一クォーターでミスしたから、必死だったのよ、でもミコ様がこられていたので、負けたくなかったのよ」


「ミコ様が?あの試合はサリー様とアナスタシア様がご来賓としてやってこられると聞いたし、テレビでもお二人が映っていたけど?」

「テレビはクイーンマーガレットの応援席ばかり映したはずよ、ベティにはミコ様がおられたのよ」


「おかしいわね、たしかベティの応援席は、一度映し出され、ビクトリア様がチラッと見えただけだったけど?」

「ものすごい格好で、ビクトリア様の隣に座ってられたのよ」


 ローズマリーはセレスティア・デヴィッドソン、鈴木駒子とともに、財閥当主の夫人としてナーキッドの関係者の扱い、このような会話も出来るのです。


 三人で試合のビデオを見てみますと、ケイシーが、

「ここよ!このビクトリア様の横に映っているわ!」


 そこには、確かに完璧な防寒体制の女が写っていました。

「皆、任官課程生はわかっていたけど、一般課程生も誰か薄々は感じていたようよ」


「ミコ様らしいわ、ご自分は身元を隠しているおつもりでしょうが、周りの女たちを御覧なさいな、明らかに意識しているわよ」

「そもそもこんな格好で、おかしいと思われないと、思うところがおかしいわね」


「ローズマリー、そんな幼いところがミコ様なのさ」

「私的な部分においては、どこか抜けたところをお持ちで、親しみが湧く、男も女も構いたくなる」

「ただ公的になれば、背筋が寒くなるほど冷酷、ケイシーもよく心に刻んでおくのだよ」


「パパはミコ様のこと、よく知っているのね、ミコ様のこと教えてくださらない?」

「そうだね、怒られない事となると、あまりないけど、ミコ様は何でも上手い、でもカードゲームの中で、『オールド・メイド』――ババ抜きの事――はからっきしと聞いたことがある」


 ローズマリーが、品良く笑いながら、

「私もディアヌさんから、聞いた話がありますわよ」


「ミコ様って、ファーストフードがお好きで、ピザをご注文なされたときに、信じられないほど頼まれたことがあるとか」

「ハンバーガーショップへ行かれたときも、あのアリシアが驚くほどの料金を支払ったとか、とにかくかなりお食べになるってね」


「それは聞いたことがある、ホットスプリングでの話だな、東京でも似たようなことがあったようだ」


 一家は必ずしも、上手く行ってなかったのですが、この日はミコの話で、珍しく一家団欒となったのです。

 この後、少しばかり仲良くなった、三人でした。

 

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