応援


 マルスのクールイヤーの九月、ほぼテラの二年分のマルスの一年ですから、クールイヤーの九月といえば冬の初め、屋外は雪が舞い始めています。


 しかし体育館の中は熱気でムンムン、八年制高女の秋の体育交流戦の決勝トーナメントの最後の試合。


 今年は二年連続のネットボールで、決勝に進出したのは、アメリカ地域のベティ女子スクールと、カナダ地域のクイーンマーガレットスクール。

 場所は前回優勝のクイーンマーガレットスクールの体育館、ベティにとってはアウェーの為不利です。


 しかもクイーンマーガレットの応援には、レディズメイドのアナスタシアさんと、なんとハウスキーパーのサリーさんがいるのです。

 その上にダフネさんまで、三人の愛人さんがそろっています。

 どうやらアナスタシアさんが誘ったようで、何かクイーンマーガレットのチームにお言葉などかけています。


 両校のメイド任官課程の生徒には、この三人が誰かはすぐにわかりますし、一般生徒もゴールドチェーカーをつけている女が、どのような女かは知っています。

 滅多に会えない愛人さん、それが三人も、相手の応援席に座っているのです。


 ベティのチームにいた、もう一人のメイド任官課程の生徒が、

「ひどいわ、向こうの応援に、愛人の方々が三人も、しかもハウスキーパーとレディズメイド、もう一人の方も『鍵の守護者』、参ったわ……」


「そうね、でも考えようよ、私たち、あの方々にアピール出来るチャンスが与えられたのよ、ここでめげずに頑張れば、任官後のお覚え目出度いわよ」


「そうね、まあいいわ、それよりも、なんとかクイーンマーガレットに勝ちましょう」

「皆、貴女の後ろ姿に引っ張られて、ここまで来たのですからね、貴女は立派なベティのクイーン・ビー、誰もが認めているわ」


「ひどいわね、私では力不足なのは認めるけど、こちらも応援団は負けないわよ、見てみなさいよ、ビクトリア様に来ていただいたのよ♪」

 と突然、声がしました。

 いつの間にかアリシアが立っており、二人に応援席を見るように促しました。


 そこには、ゴールドチョーカーをつけた、赤毛の背の高い女が座っていました。

 その横に小柄な女が、寒いのか、いっぱい服を着込んで上に、マフラーを巻き、さらにはマスクまでして、完璧な防寒対策をして、座っています。


「あの方は♪」

「誰も知らない方よね!そうでしょう!」

 あまりの格好に、笑いそうになったケーシーですが、

「そうですね♪」と、答えました。


「とにかくいい試合をしてね」

 と云って、アリシアが応援席に戻った後、

「こうなったら死んでも勝たなくてはね!」

 と話し合ったのです。


 ベティのチームも、応援席に愛人さんが一人いるのに、元気が出たのか、やる気満々です。

 こうして因縁の、ベティとクイーンマーガレットによる、決勝戦が始まりました。


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