第二章 ケイシーの物語 ネットボール
ベティのクイーン・ビー
ケイシー・ロッシチルドは積極的、アメリカンドリームを夢見て、今日も努力を怠らない。
せっせと磨き抜いたナイスバディを、これ見よがしに見せつける相手はただ一人。
その不断の努力が認められ、ついにベティの一号生徒クイーン・ビーに収まった。
そこで待っていたのは、昨年負けた体育交流の相手とのリベンジ、万全の準備を整えたというのに、再び負けてしまった。
なんとか二位に滑り込み、秋のトーナメントに勝とうと、自ら猛練習を始めた、その結果は……
* * * * *
ベティ女子スクールは、マルスのアメリカ地区の首都、ニューイーグルにあります。
アメリカメイドハウス直轄の八年制高等女学校、アメリカの学制とは一線を期しており、メイド任官課程が併設されている、アメリカ唯一の女学校。
アメリカの子女がメイドになるには、ここを卒業する必要があります。
マルス移住の時、日本の女子大学が開校していたアメリカのキャンパスを、デヴィッドソン財閥が、コロンビア州政府に敷地を返還することを前提に建物を買い取り、マルスのニューイーグル郊外に移設、ベティ女子スクールの校舎としたのです。
かつてのアメリカの将校たちの居住区で、建物は二十世紀初めのもので、かなりの歴史的な建造物です。
日本の女子大学のキャンパスということもあり、茶室や東屋があります。
また、敷地内には付属女子小学校、寄宿舎などが林立しており、他の八年生高女と同じく、猫の子といえど雄は入れません、男子用トイレもないのです。
ベティ女子スクールはアメリカにありますが、アメリカの学校ではありません。
ハウス管轄であり、マルス文化圏の八年制高女間の交流のために、体育と文化の交流があるのです。
これはもともと八年制高女が、日本の学制をベースに作られているので、その文化と伝統を引き継いでいるわけです。
勿論『S』の文化も引き継いでいます。
それが採用された最大の理由と、もっぱらいわれています。
ケイシー・ロッシチルドは八回生、最上級生になり、ベティのクイーン・ビーになりました。
七回生のジュニア・プロムで華麗に踊ったのが良かったのか、その後の投票により、クイーン・ビーに推薦されたわけです。
ベティ女子スクールにおいて、クイーン・ビーとは八年制高女でいわれるところの一号生徒、日本地区のスリーシスターズでは、インペリアルシスターと呼ばれるものに該当します。
アメリカのハイスクールでいわれるところの、クイーン・ビーとはかなり意味が違います。
女学校ですので、ジョックと呼ばれる、体育会系のモテ男はいません。
よってジョックと『おつきあい』できる、学園女王というべきクイーン・ビーは、このベティでは学力が一番とは限りません。
美貌とも違います、あくまでも女達をとりまとめ率いる、指導力が要求されるのです。
ロッシチルドの名前の通り、ケイシーはお嬢様、一途に努力しているのは、寵妃を目指しているからです。
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