奴隷契約書


 ミトリはこの最中にも、旧イスラエル領内で開かれた、拡大奴隷市場を第33独立軽歩兵大隊の一部とともに急襲、約二千名ほどの若い娘、これは六歳の幼女も含まれていますが、保護したのです。

 

「ミトリさん、見事な働きでした」

 と、いたく褒めてくれたミコさん、夫人に昇格させようとしたのですが、

「出来ましたら、私の昇格の代わりにエスティ・ラファエロを采女(うねめ)にお願い出来ませんか……」


「……色々と画策していたようですね、分かりました、エスティ・ラファエロを呼びなさい……」

 で、呼ばれたエスティ・ラファエロが、

「お言葉大変有難いのですが、私は身を差し出します」

「それに部下たちも身を差し出す覚悟です、そして避難民も身を差し出します」


「これは生き残ったイスラエルの女の総意です、お願いです、私たちをお守り下さい、生きるすべをお示し下さい……これはその証です、ご覧ください」

 と、一つのメモリーカードを差し出しました。


 ミコさん、手にとってサーチしたようです。

「これは……」

 さすがに絶句したミコさんでした。

 

 メモリーカードの中にあったのは、約三万枚の書類の画像、それには……

 奴隷契約書とあり、次の文章に自筆のサイン、そして指紋が押捺され、三枚の写真がはってありました。


 文章は簡潔です。


 私は人としての一切の権利を放棄し、ナーキッドオーナーの奴隷として、全てをささげることをここに誓約いたします、婚姻なども全てご指示に従います。

 自署のサインと指紋押捺


 正面を向いた全裸の全身写真一枚……

 同じく全裸で体育座りですが、足を広げた写真……

 同じく全裸で、後ろ向きに四つんばいで、お尻を突き上げている写真……


「眩暈がするわ……これ幼い子も書いているのね……まさか、無理矢理書かせてはいないでしょうね」


「皆、戦火を必死で逃れたものたち、しかも誰も受け入れてはくれないのが現実、幼い子らほど不安は強い、必死なのです、私たちは現状を説明はしましたが、強要はしておりません」


「しかし……」


 このとき、ミコさんの頭の中にマレーネさんが話しかけてきました。


「マスターの負けですよ、イシス様が女たちの心意気に感じて、根回しを終わらせておられます」

「サリーさんも、基本的には了承されました」

 

「今後、島での生活は、長く続けられないのは、マスターもご承知でしょう」

「南米への移住をお考えとは思いますが、女だけが移住してもろくなことにならない、そうではありませんか?」


「……」


「彼女たちは、ナーキッド体制にも組み込めません」

「ですから、マスターの私有財産としての女奴隷として、取り扱うしかありません」

「そうでなければ、生きるすべが極めて小さく、悲惨なものになるはずです」


「しかしマスターの私有財産ということなら、扱いは別です」

「エラムのように、マスターの権威で人並みの扱いとなります」


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