彷徨える女たち


 ……イスラエルはナーキッド体制の構成国ではない、よってマルス移住は認められない、ミコ様のご意向ですが、原則は変えられない……

 こういわれては、さすがのミコさんもゴリ押しが出来なくなったのです。


 エイラートから避難してきたのは、四十以下の女性ばかり二万三千名、そしてエルサレムなど北部から鈴木商会が二束三文で購入した女性約五千名、二万八千名の行き先が宙に浮いたのです。

 比較的に安全な、南米諸国も受け入れを拒否しています。


 とにかくどこかに、この方々の落ち着く場所を探さねばと、ミコさんが日本帝国のラサ島を譲り受け、法王領の仲介で、当時の国連が人道的な理由故に、特別にナーキッド領として認定したのです。


「ここは無人、高かったのですよ、国連が空気浄化システムをいくつかよこせってね」

「とにかく臨時の住居を作ってあげなくてはね、その後、どうするかは皆さんが決めればいい事」


「なんせ私のポケットマネーで買ったのですからね、空気浄化システム、一人で作ったのよ」

 どうやら二日で、話しをつけたようですね。


「ミトリさん、ほかに受け入れてくれる所はないようなの、話しをしてくれない」

「先日の第33独立軽歩兵大隊の、エスティ・ラファエロ隊長に、避難民の説得をさせてはいけませんか?」


「なんか企んでいない?」

「やはり私が説得するより、皆を体を張って守り抜いた、エスティ・ラファエロ隊長の方が、説得力があると考えるからです」


 ふと笑ったミコさんでしたが、

「やはり貴女はいい人なのね、任せるわ」

 と、言ったのです。


 エスティ・ラファエロと、ミトリ・ハゲルは避難民の代表たちに状況を説明、当面はナーキッドオーナーが面倒を見てくれることを説明、選択の余地がないことを理解させました。


「その後はどうなるのでしょう?」

「私たちを、誰も受け入れてくれない、私たちは女ばかり、ラサ島で自活出来るのでしょうか?」

「それに年老いたら、どうなるのでしょう?」


「それについて、実は提案があります……」

 ……

「そんな……」

 ……


「わかりました、確かにそれしかないですね、でも確約出来るのですか?」

「わからないが、皆で覚悟を示すしかない、全てを受け入れる、だから誓願を受けてほしいと」

「覚悟といっても、どうやって示すのですか?」

 ……


「ところでオーナーって、どんな方なのですか?」

 ……

「えっ、あの方、それを早く言ってください♪」


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