プロローグ

「……渋谷さん、わたしは子供ではありません。そんなに頼りないですか?」


「当たり前だ。手錠すら持たずに犯人へ接触するような奴を安心して放っておけると思うか? 第一、お前はまだ二年しか経験のないただの若僧にすぎない。上司が目を向けているのは一般的なことだろう、違うか?」


「それは――」


 反論の言葉を、わたしは口にできなかった。渋谷さんの目が、わたしに言い返す隙を与えないというような真剣なものを含んでいたからだ。


「お前は突っ走りすぎるんだよ。その性格を少しは直せ。感情任せの正義感だけじゃこの仕事はやってけんぞ」

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