プロローグ

「こっちです!」


外へ向かって大声で呼びかける。


どこか、近くのドアが開けられる音がして、次に母親が何かを喋るのが聞こえた。人質のいる部屋へ入ったということか。


「おい、海咲! どこにいる?」


「渋谷さん、ここです!」


聞き慣れた声にわたしは返事をした。すぐに大きな足音が奥の部屋から近づいてきた。


「海咲、怪我はないか?」


「はい、わたしは大丈夫です。それより犯人を」


おぅ、と答え、渋谷さんは男の手首に手錠をはめた。それを確かめてから、わたしはやっと身体の力を抜く。

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