アナルファック:ただし、動きすぎてはいけない
@Ytomi
第1話
最近自室に現れた少女を紹介しよう。
彼女は並んだ本の背表紙が生む空隙から、滑り落ちるようにして現れた。
目の前に立った少女は、外見から判断すれば10歳に満たない程度だったものの、こちらに興味なさそうに落ち着いて振舞うその所作は、年齢についての洞察を全くの困難にするものだった。しかし、生まれも育ちもなく、ただそこに実在するだけの彼女が、たった3つのルールで動くということを理解するのに時間はかからなかった。
曰く、彼女に許されたのは引用のみ。
曰く、彼女に許されたのは6畳のみ。
曰く、彼女に許されたのはAFのみ。
「じゃあ、君は6畳の狭いこの部屋でアナルファックをしながら誰かの書いた筋書きを叫ぶことしかできないと?」
「これに比べるなら過酷このうえない監禁ですら甘美で優雅な過去の遺産に見えるかもしれません」
記号と事件を謳う幼い声は、俺の脳髄を深く振動させた。脳から四肢へと伝わる甘い痺れに導かれ、ベッドの上へ俯せにした彼女の上に跨る。握りしめたアナルジェルを垂らすと、その肛門へと右手の中指を伸ばした。
「草は、事物の中間に生えるだけでなく、それ自身、中間から生える。草は、自らの逃走線を持っており、根を張り巡らすことはない」
括約筋を押しのけた中指が向こう側へと飲み込まれるとき、それは一瞬の閃き、小さなアナルから花のように水飛沫が
「ひとは、頭のなかに草を持っているのであって、樹木はもっていない。思考することが意味するもの、脳がそうであるところのもの、或る神経系、いくらかの草」
彼女のアナルへ挿入される指はいまや三本となっていた。冷たかったジェルが熱を帯びる。三本の指が幹となり、彼女の下腹部へと突き刺さったとき、肛門括約筋に張り巡らされた毛細血管が網目状に赤く発光し強い放射を見せる。光の届かない肛門内に閃く警告を感じ、三本の指は歓喜に打ち震えた。さぁ、内に巻き込んだ彼女の外側を引き摺り出そう。不随意に痙攣する括約筋という自らの内側を表現する言葉を彼女は持たないのだから、それはドゥルーズが内肛門括約筋について語らなかったために、むしろそれ以外についての語りならば十分すぎるほどなのに、あぁ、もどかしさに彼女はどのような表情を強いられているのだろうか。ベッドに押し付けられた小さな頭部からはうかがえない。肩まで伸びた髪は既に彼女の頭部から離れてしまったかのように静かな広がりをみせ、かろうじてシーツを掴む手の緊張のみが生体としての彼女を外部へと連絡する。俺は十分に勃起したペニスをその肛門へと押し付けた。
「(それは)並置された二要素のみだりな溶解や性急な二者択一、一方から他方への演繹または帰納、あるいは弁証法的な対立関係を先験的に生きるものではない」
俺/ペニス/彼女。ペニスは分かれていること/つながることを共に肯定する。アナルの抑圧の先に直腸の解放があり、熱によって膨張したペニスのなかで、血流のうねりに捻じれて形態を失った俺と彼女は出会い直すことになるだろう。俺にペニスはないが、俺のペニスは存在する。彼女に覆いかぶさる身体は、誰とでも繋がれるという開放空間において、不自由な、不誠実な、瞬時に成り立つ全てのコミュニケーションから、彼女を切り取ることができているだろうか。背骨から金属棒が皮膚を貫き、水蒸気を放出する。赤く腫れあがった顔から熱が引くとき、俺は彼女の上に倒れ込んでいた。
「どこから来たの…とアナルに出しておいて今更聞くのは間違っているだろうか」
「わたしはいた、そしてわたしはいなかった」
胸の下の小さな頭蓋骨に、無機質な文字列が反響する。
「わたしはとらえられ、われを失い、最大の偏在状態のなかにいた。幾千ものかすかな騒めきが、わたしを無数の断片に切り刻んでいた」
目を閉じると彼女の呼吸が皮膚を伝って波となり、沖へと繰り出す波たちは月明りから無数の煌きを生んだ。
肌と肌のぬくもりだけが、光の輪郭を曖昧にすることができる。
それはそうと、フェラはアナルファックに含まれるのだろうか。
アナルファック:ただし、動きすぎてはいけない @Ytomi
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