第18話無意味なこと

「加藤さんって好きな、たべものなんですか~」

「カレー」

「へぇ~」


「君は?」

「グラタンです~」

「そう……」


あれから2時間以上が経とうとしている。

初めは、校舎からでる方法を話し合ったが結局、いい案は一つも浮かばなかった。最後の頼みの綱はスマホを落とした職員が取りにくる時にコッソリと抜け出すことだったが、今のところまったく来る気配すらない。

もう、完全にお互いにあきらめ、廊下に寝そべり、中身の無い会話が続いていた。

すると突然、彼女がハッとした顔をしてこちらを見て「そうだ!未来を見る能力で何とかならないですか、この状況?」と言ってきた。しかし、残念ながら期待には応えられそうにない。

「無理そう……君がいない未来しか見えてないから。だって今、見えてる未来は一分後に、ベットの上で寝返りうってるよ」


「そうですか、そのためのトレーニングですもんね。あ、そういえば、加藤さんグランドで何を話そうとしてたんですか?」

「ここで話しても前の君の再現したことにならないと思うけど、やる意味無い」

彼女は体を起こしてグランドを指をさした。

「ほら、教室の窓から、グランド見えますよ、月あかりで。」


...そんないい加減でもいいのかと思ってしまったが、まだ正直この能力がどうやったら成長するのか、把握しきれてないのでなんとも言えない。


「いいか、どうせ、もう他に話すことないし、少し長くなるけどいい?」

「いいですよ」

「じゃあ、そうだね。まず、僕は小学4年生から6年生までサッカークラブに所属してたんだ。それで、練習にこのグランドを使ってた。」

「意外ですね~サッカー部って感じじゃないです」

「それは、そうかもしれないね。初めは親の勧めで野球をやっていたけど興味がなくて、すぐ辞めたよ。でも、なんか逃げてるみたいで悔しくかった。だから、スポーツの中で当時、一番、興味のあったサッカーを始めたんだ。結果的には面白くて続けられたけど。

でも、下手くそでさ、試合ではいつもベンチだったよ」

「そうでしたか。でも悔しくなかったんですか、いつも控えのメンバーで」

「悔しかったよ。それはもちろん。でも、そのころは未来を見る力も未発達でたまに、正夢として未来が見えることがあったんだ。

それで、6年生の頃に最後の試合でスタメンとして出場してる夢をみたんだ。

それを見たとき、その日から、必死になって練習したよ。毎日、3時間ぐらいシュートの練習とか、パスの練習とかやってたね。ランニングもそのころから始めて癖になったんだけど」

「それで、最後の試合には出場できたんですか?」

「まあ、出場は出来たんだけど、結果はボロ負け。チームのメンバーからはお前のせいで負けたって言われたよ。その時、悲しかったし、無力感もあった。結局は、もっと悔しい思いをしただけだった。

だから、努力しても結果がでないなら無意味に思えてきて、それ以降は能力で結果が出る方ばかり選らんで生きて来たんだ。

だから……今やってるトレーニングも結果が出るか分からない、この状況だと無意味に思えて仕方がないだ」

一通り話終え、薄暗い中、彼女の顔を見ると眉をひそめていた。気のせいか少し気分が落ち込んでいる様に見える。

「…………そうですか、でも私は、この世の中に無意味なことなんてないと思いますよ。きっと、あの事故も…意味があったんです」

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