第7話トレーニング②

「ごめんなさい~、お待たせしました!」

「いいよ。別に…」

待ち合わせ時間を30分も遅れてやってきた。一応、遅れますとは、連絡があったがこんなに待たされると思わなかった。正直、時間を無駄にした彼女に説教したい気分だが、我慢した。

「今日は何やって過ごしたんですか?触れないで当てみましょう!ゲームを一日中やって過ごした!」

「違うよ。今日はエントリーシート書いてからランニングしてた」

「先輩、就活中だったんですか?前見た過去の数日だけの記憶は、バイトしてゲームしての繰り返しだったので気付かなかったですね。たまに、ランニングもしてましね」

痛いところをついてくる。たしかに、思い返せば、ここ数日ずっとその繰り返しだった。

「そうだね…そろそろトレーニングはじめない?」

「始めましょう!まず・・・」

すると、彼女は鞄の中からリンゴを取り出した。

「このリンゴがどんな未来になるのか、触って想像してみてください。」

彼女からリンゴを受け取りこのリンゴがどうなるか、想像してみる。このまま、放置すれば当然腐る。それとも、カットして食べてしまうのだろうか?

すると、彼女が話かけてきた。

「どうですか?何か見えましたか?」

「いや、何も」

「そうですか・・・」

「え・・・」



変な間があいて耐えきれず、思い切って尋ねてみた。

「もしかして、これがトレーニング?」

「はい、そうですね。イメージトレーニングです!私の経験だと数日間、30分毎日やったら、触ったモノの過去が少しだけ見えるようになったので先輩も頑張って!リンゴはあげます、おまけです。」

・・・・・何だか無意味に思える。しかも、なぜ、リンゴ?


「もう少し、具体的なトレーニングない?」

「ないです。私は、この方法で強化していきました。別の方法があればいいですけど。

まあ、無意味に思えてもやってみてください!」

トレーニングがまさかこんなにあっさりしているとは!

「分かったよ・・・やってみるよ」

「一日30分だけでも毎日欠かさずやってくださいね。サボっても触ったら分かりますからね」

そう言うと笑顔で僕の右手に握手した。今、彼女は僕の数日前の過去が見えているはずだ。だが、相変わらず彼女に関する未来は見えない。

すると突然、彼女が僕の手を振りほどいた。まるで、嫌なモノでもみたかのように。顔からはあ笑顔が消え、青ざめた様にすらみえる。一体、どうしたと言うのだろう。

「あの・・ちょっと用事を思い出したので、帰っていいですか?」

「いいよ。顔色が悪くなってるけど、体調大丈夫?一緒に帰ろうか?」

「一人で大丈夫です・・・」

さっきまでの元気な声ではなく弱々しい細い声で答える。

そのまま彼女は一人で帰ってしまった。

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