2話:時間を止められる男は実在した!
「ほっ、ほっ、ほっ!」
「はひっ、はひぃ、はひぃっ」
「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ!」
「はひぃ、ひぃ、ひぃっ、ひぃぃ」
「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ!」
「ひぃ、ひぃっ、ひぃぃっ、ひぎぃぃぃぃぃぃ!」
「ほっ、ほっ――どうした?」
「ひぃ、ひぃっ、ど、どっ、どうしたもこうしたもッ……なんであたし
「俺の
アズライグル
なのに――
なんであたし、
わけ分かんない!
―――時は
海は
その海峡を、こいつは歩いて渡る、と
まだ、魔術とかスキルでどうこうする、ってなら話も分かる。勿論、そんな事したって、どうにもならないんだけど。
だけど、さ――
それ、一体、どこのビックリ人間なわけ?
あたしが
もう、完全にイカれてる――
――終わった~、あたしの
なけなしの
う~ん――どうやって、言い訳しよう……
「どうした、ラヴ? 不安そうな顔をして」
「……そりゃそうよ。そんな訳の分からないアイデアでこの
「ああ、それならこれをごらん」
そう云うと、
その手首には、金属の
「風雅、それなに?」
「これは時を
「……時計?」
「このナグルマンティとは違う別の異世界の
「
――えっ?
なにそれ? 女神のあたしですら
ニュアンス的には、凄いアイテムとスキルを
「え~と、――その至宝とか権能とかってのがさ?
「オーケー! この時計の
「うん? あー、うんうん、ちょっとずつ動いてるね」
「そうだ。この秒針から決して目を
「え? うん、分かった」
なに? なんなの?
なにをする気なの?
「秒針が、この長い針が一番上に来た時、俺の権能を見せてやろう」
「……うん」
「あと5秒、だ」
「うん」
「4、……」
「……」
「3、……」
「……」
「2、……」
「……」
「1、……」
「……」
「 」
「…………――、あれ?」
!?――
――いない!
消えた!
風雅が目の前から消えちゃった!
えっ!? えっ!?
どういうこと?どーゆーことなのッ!!?
――「ラヴ、俺は君の後ろにいるよ」、と。
え?――
――「俺はいつだって君の
なにごと?
「こ、これは……一体、なにをしたの?」
「
「えっ! えっ!!? す、すっ、すっっっごォーーーい!! そんな
「そうなのか?そこ
「……?? ちょっと、よく分からないです」
なんかよく分からないけど、こんな凄い
――あれ?
でも、今の力がアズライグル海峡渡るのと、どう関係するわけ?
「えっと~、すっごい能力だってのは分かったんだけど、これと海渡るのってどんな関係があるの?」
「――ああ、海に
―――時は
ざぱ~ん――
アズライグル海峡、その
寒々しく、荒々しく、どことなく暗い
魔王の
「ここが
「まず、権能の力を
「うんうん、それから?」
「海を渡る」
「うんうん――って! だからー、それをどーやってすんの、って話!」
「こうする」
一瞬で姿が消える。
「!!? ……ちょっ! ちょっとーーッ!!!」
焦って崖下を
その高波の上に
「ラヴ、こっちに来いよ」
「……そ、それってどーなってんの??」
「周辺の時を止めている。なので、
――時を止める。
時を止める、ってこんな事できるの?
海を、波を、水そのものの流れを、止めちゃってる訳?
凄い!
凄いけど、なんであたしは動けるの?
「俺が認識し、意識さえすれば
実際に渡る時には、俺と君、二人の周辺だけでいい」
ちょっと、コレ、本格的に凄い能力なんじゃないの?
この勇者、当たり、なんじゃないの!!
「さあ、こっちに来い。飛び降りろ。俺が、受け止めてやる」
両手を広げ、あたしを見る眼差し。
ヤダ……
――カッコいい!
よ~し! 飛び降りちゃうよ! その厚い
どうりゃっ!!!――
助走をつけ、勢い良く、崖から跳び込む。
近付く。風雅に、そのイケメンに。
あー、ほんと、こいつ、かっこいい。
どさくさ
うん、しちゃおう!
いや、しちゃうネッ!!
スイッ……――
えっ!!?
よ、
――どぼん!
「ちょ、ちょっ、ちょっとーーッ! なんで、避けるのよ~! あと、なんであたし、海に沈んじゃうのよー! ゴボゴボッ」
「――すまない。あまりにも見事な
「だったら早く助けなさいよ! あたし、
腕を引かれ、抱き抱え上げられ、海面に下ろされると、風雅と同じように立つ事ができた。
これなら確かに、歩く事ができる。
「さあ、走るぞ」
「えっ!? 走る?」
「走れば日が
「えー!? 今日中に渡りきるつもりなの!?
風雅は振り返り
「
「なにが? なにが保たないの?」
「集中力が、だ」
「集中力? なんの?なんの集中力が保たないの?」
「時止めの、だ」
「……――あ、ああっ!」
先に云ってよ、そーいう事は!
当然といえば当然よね。魔術やスキルだって
時を止める、なんて
「俺から
「え??」
「集中力を保たせる為、効果と
「離れれば?」
「――海の
ヤダー!
こんな冷たい海の上で死にたくない!
いや、女神だから死なないけど、
「よーし、向こう岸
「なんで競走すんのよ!」
「その
「なんで本気にならなきゃいけないのよ!」
「――本気になった
……――やっぱり、こいつ、
アホなのかも――
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