1話:急がば回らず直進行軍!
「それじゃ~、この世界“ナグルマンティ”の説明を簡単にしておくわね~……
……――って、その前に
服を受け取った風雅は不思議そうな表情を
「どうしたの、風雅?」
「――その小さな
「ああ~、コレ?これネ♪ コレは
あれ?
質問、それだけなの?
一気に興味を失ったみたい。
って、あたしが取り出した服を
もしかして、趣味に合わない、とか?
お
でも、
「――……」
「どうしたの?」
「……――クンクン」
「えっ! えっ!? なになに?? どーしたの、風雅!?」
「――
「? ナフタレン?? えっ、それなに? なんなの??」
「ザッツ・オール! なんでもない」
多分、あたしの残り
あ、
――あら、ヤダ!
ちょ~
いや、そりゃさ? 風雅に似合うんじゃないかな~、って思って取り出した服な訳なんだけどさ?
まさか、さ? 想像よりも
う~ん……――イイッ! 早く、
手とか
キャーッ! 想像したら
ちょっと、顔赤くなってるかも?
フヒヒ、
「ラヴ、着替え終わった。
「ん? ん? ナニなに?」
「――魔王を倒しに行こう」
「うん♪ よし、行こぉ~――……って、ちょっと待って!」
「どうした?」
「いやいや、どーした、じゃなくて! まだ、魔王の事とかなんも説明してないし。それどころか、ナグルマンティについても風雅、なにも知らないでしょ?」
「確かに、な。だが、
鉄は熱いうち、に?
何それ?
どーゆ~事? なんでいきなり、“鉄”が出てきたの?金属についてとか、今、話してなかったじゃん!
ああ~、
――でも……えー!? 魔王相手にそこら
もしかして、風雅の元々いた世界って
う~ん……だとしたら頭ごなしに、そんなショボい武器じゃ魔王を倒せる
「えーとね、風雅。鉄の武器とかじゃ、魔王を倒すのは難しいと思うんだけど……」
「――だろうな」
「えっ? だろうな、って」
「だが、安心してくれ。俺の意志は鉄よりも固い。
「…………ちょっと意味分からないんですけど、少しだけ
「ああ、勿論、さ」
あたしが悪いのか、翻訳の調子が悪いのか、それとも風雅の頭が悪いのか、原因はよく分からないけど、この人、聞き
取り敢えず、この
全く分からない状態で魔王
「風雅、あっち見て!」南の方角を
「――ああ。
「あれは河じゃなくて、アズライグル
「うむ、云われてみれば、確かに見えるな」
「そう――、あれこそがこのナグルマンティを恐怖のどん
「なるほど。確かに、近い、な」
「でしょ?」
「ああ、あれなら海を渡ればすぐにでも魔王
「うんうん……――えっ?」
あれれ?
もしかして、あたしの聞き間違い、かな?
それとも、あたしが云い忘れたのかな?アズライグル海峡は渡れないって。
「えっとね、風雅。アズライグル海峡は決して渡れない海なの。別名……」
「
「そう、正解!
「ああ、そうだ。そう聞いた」
云ってたじゃん! やっぱ、あたし、云ってたじゃん!
あ~、説明不足か。
とんとんとーん、と説明しないとコイツ自分の世界に入っちゃうから、ちょっと
「アズライグル海峡はね、決して渡る事ができない海なの。
過去、何十年何百年もの間、何百人何千人もの
「なるほど。だが、かつて
ちょっ……――
そりゃそーでしょ! あんたはさっき、あたしが
「
「その方法だと魔王の居城に到着する迄、どれくらいの時間がかかる?」
「えっ? う~ん……はっきりとした事は云えないけど、距離的には
「
「エーッ!!」
却下、って。
じゃー、どーやって行くつもりなのよ?
ちょっとこの人、
「――
「…………あのね、風雅。アズライグル海峡は本当に誰も渡れないのよ。
「なら、空を飛んで行けばいい」
「ええーっ!? どーやって空を飛ぶつもりか知らないけど、それも無理。
海峡上空は常に
「舟も駄目、飛んで渡るのも駄目、という訳か」
「そう、そういう事。これはもう、ナグルマンティに定められた
これを【
人間が、生命が、例えそれが選ばれた勇者であったとしても、曲げる事の出来ない絶対的なルール。そしてそれは、魔王も同じ。だからこそ、魔王も海峡を渡って
「――……」
あっ、――黙っちゃった。
うーん、云い過ぎたかな?
でもね、それくらい海峡を渡るってのは不可能な事なんだよ。
あたしが女神で、あなたが女神じゃないってのと同じくらい、これはもう当然の事なの。それがこのナグルマンティのルール。
「――
「分かってくれた?」
「ああ、
「? なにを??」
「海峡を渡る方法、だ」
エエーーッッ!!?
まだ、
ったく、なに考えてんのよ。
そんな自信あるってんなら、その方法、教えてみなさいよ!
「どうやって渡るつもりなの?」
「歩いて渡る。走ってもいいがな」
「――え゛え゛っ!!? ど、どっ、どーーやってよ???」
「左足を一歩
これを繰り返せば、
……――
あー……
――あたしも、
こいつ、アホなんだ――
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