第7話 キリスト教支店長への挨拶状(日6P133)

「いやー、なんとか収まってよかったわぁ…」

 隆信は一息ついた。

「組長さん!おおきに!おおきにやで!」

 300人の会員名簿を手に入れたペドロはにこにこと笑顔で礼を言う。


「では、ウチの支店長に名簿を持っていきますわ!」

 そういうと封筒に名簿を入れようとして、ふと気がついたように「ああ、そうそう」と言う。


「組長さん、よかったらウチの支店長に手紙とか出しませんか?」と。


 宣教師が言うには「土地の名士」がキリシタンに好意的というのは非常にポイントが高いらしい。

 しっかりした拠点があり、自分たちの活動が進んでおり、「その土地の貴人」から保護を受けていると言うことが認められれば、貿易船が増えたり新しいアイテムがもらえたりするかもしれないという。


 まるでソシャゲのアプリの評価したら貰えるボーナスみたいやな、と隆信は思った。


 まあ手紙一つでボーナスがもらえるならやすいものだ。

「おうサブ!ワシの言うことを記録せえや!」

「へい頭ぁ!」

 威勢良くサブが筆を執る。

 当時の豪族はサインだけを担当し、文書は右筆ゆうひつと呼ばれる書記官に書かせるのが一般的だったのである。まるで大御所漫画家が「どうれ」と目だけペン入れするのに似て…おや誰か来たようだ。


1555年11月23日付け サンショアン島に届いた 松浦の手紙(崩訳)


「昔、フランシスコどのがウチの組に来て、数人キリシタン会員としました。これはワシが大いに満足に思うとこです。ワシは会員を守るとともにチンピラどもが妨害するのも許さんつもりや。お宅の社員も2回ウチに来て叔父貴やオヤジたちを会員にしていったしワシも説明会に参加して、ええもんやと思っとる。ワシが会員になる日も近いやろう。それ故に銭…もといセンセイたちがウチの組に来るのはどえれぇ嬉しいことです。ワシは出来る限り敬意を払って優遇するつもりじゃけえ、平戸において…」(長いので省略されました(本当))(日6P134)


「頭ぁ!語尾は揃えた方がええんちゃうかのう!」

「う・うん。そうやなぁ。がいこうぶんしょう、いうんは脳がこっていかんわ。適当にそろえとってくれい」

 領主自体がキリシタンになっても良いと言った日だった。

 こうして平戸は神に祝福された土地。キリシタンの楽園になる………はずだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

隆信の手紙はフロイス日本でも云々(うんぬん)と省略されてます。

よほど長ったらしい美辞麗句が並んでたのか、原本が虫食いで読めなかったのかわかりませんが、今回ななめ写ししようとしてびっくりしました。

 小説にするって一番の熟読法なのかもしれません。

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