第5話 半歩引いたら一歩踏み込んでくる宣教師たち。
平戸の近所 生島の住人たちの受洗時期が分からないので、この時期にぶち込んでみました。
ここらは地獄の下地作りです。
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平戸に十字架が立った翌日、隆信は宣教師を招いて宴会を開いていた。
今年はマカオから輸入した生糸が大量で、大儲けできたからだ。
「ガーゴ先生!次もまた、たのんます!」
ともみ手をしながら慣れない商人言葉で接待に誘ったのだ。
聞けば最近では鹿児島の方では南蛮船の数が減っているのだという。
来る外国人はみな「
彼らにとって船旅とは危険と隣り合わせで、定期的に神に祈り、加護を貰わないと不安で不安でしょうがないのだという。
「まるで薬の中毒者みたいやな」
多方面に失礼な感想を思いながら、そのご加護の販売者である宣教師に心の中で感謝したものだ。
この宴会費は40万円程度だが、貿易の利益は最終的に3千万円くらいになる。
わずかな投資で大きな利益。
これならバテレンを保護するくらい安いものである。
そんな事を考えていると
「ところで組長はん、誰か幹部クラスのおひとりでもウチの宗教に加入させてもらえまへんやろか?」
司祭が宴の席でこそっと言ってきた。
「加入でっか?」
「へえ、実はわてらの会社は会員カードを配ってましてな?この日本でも会員を増やすのが本来の商売なんですわ」
イ○ンとかTポ○ントカード会員みたいなもんやろか?と隆信は思った。
「まあわてらも日本が好きなんですけどな。実は日本の会員は少ないんです」
まあ、あんたら怪しいもんな。と心の中で思いながら松浦はカニを食べながら思った。
「で、支店長からノルマ達成できへんのやったらランゲルハンス島の営業にとばしたると言われたんですわ」
「なんじゃと!」
とたんに隆信の態度が豹変した。
冗談ではない。こんなおいしい金ヅル、余所に持って行かれてたまるかい。
どこのシャバ憎がそんなカバチ(バカなこと)ぬかしよるんか!おうちょっとウチの組の鉄砲玉寄越したろかい!冬の平戸湾は冷たいでぇ!
と、いくつもの脅迫メッセージが脳内を駆け抜けていくのを感じた。
「そこで、組長はんの人望と人脈におすがりしたいんですわ」と司祭が顔を近づける。
なんでもイエズス商会は「洗礼」という行事をすると、会員になるらしい。
洗礼を受けて会員になってほかの人を会員に誘うとポイントアップ。
会員内でのステージが上がり運気は向上、神の加護はうなぎのぼり。返品したくなるほどの幸せが来る上に、天国での成功も保証されるらしい。金土にはさらにサービスポイントまでつくらしい。
~めっさ、うさんくさいのう~
と思いながらも隆信は
「へええ、そりゃすごいのう。効果抜群なんですのう」と適当に相づちを打ちながらホタテの貝柱をがつがつ食べる。
何がすごいのかは知らないが、大事な金ヅルである。ここは話を合わせておこう。
「そこで!」
感極まったように司祭は続ける。
「今なら100人のいけに…信徒がお試し入会してくれれば、この平戸をわてらの同胞たちがもっと来やすくなって、鹿児島とか豊後への浮気が減ります」
「おおー」隆信の目の色が変わる。
「さらに300人を超えれば、我々も4000人のノルマを達成できて、上司に報告がしやすくなります」
こいつら、3700人もいつのまに会員を増やしとったんや?と思いながら、隆信は拍手する。宴会ノリである。他の若い衆からも拍手と笑いが起こる。
このころ豊後や山口での布教が進んでいたのである。
笑いごとでは無いぞ。平戸のみなさん。
「さあ、組長はん。いかがですか?どなたか、ええ人おらんでしょうか?」
「おるおる、ええ人ぎょーさんこの平戸にはおるでぇ!」
酒の勢いもあり、隆信は威勢良く啖呵をきった。
「おう!サブ!ウチの若けぇモンと兵隊呼んでこいや!」
貿易で儲けた銭をじゃらじゃらいわせて、隆信は上機嫌で言った。
「目標は300人!この島の住人みーんな会員にしたるんや!」
この時の隆信はまだ見ぬ貿易船と、その利益で発展する平戸の輝かしい未来が見えていた。と後に隆信は語った。
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ここらは全部創作です。ですが当時のキリシタンはキリシタンである条件に他人を勧誘するというのが必須事項であったようです。
(キリシタンとはキリストの教えを心中の信仰だけではなく言葉で表す人。死んでも言葉に現そうという覚悟が必要。『ドチリイナ・キリシタン』聖母文庫 宮脇白夜P17より)
エ○バの商人やモ○○ン教の人たちが二人一組で勧誘に来るのは、これが原因だと思われます。彼ら原理主義っぽいので。
この終わりのないノルマが終了するのは、彼らが寿命を迎えたときなのだと思われます。違ってたらごめんなさい。
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