第2話 本作はフィクションです。登場人物は作者の妄想で書かれております

注意

登場する人物は実在の人物、団体、松浦氏とは関係ないくらいキャラ崩壊しています。

武士の皆様は「武士ことば(もののふことば)」という独自の方言を使用しています。

仏教関係者と商売人も「商人ことば(あきんどことば)」を使用しています。

なので「ここの言葉の意味が分からない」場合には早急に言い回しを変えますが「広島弁」「関西弁」という無関係な言語に関しましては対応いたしかねる場合がございます。




2話 本作はフィクションです。登場人物は作者の妄想で書かれております





そんな土地だが当時は貿易港としてにぎわっていた。その理由は


「王直の旦那が変わった奴らを連れてきたじゃって?」

「へえ、鬼みてぇに体が大きくて、変わった言葉を話す奴らだそうです」

 


 これはイエズス会という宗教のセールスマンである宣教師フロイスの著作『フロイス日本史』が非常に読みにくいので、戦国大名をヤクザ。宗教家を商人に置き換えてNAGASAKIの松浦組組長の悲哀をおもしろおかしく、かみ砕いてみた物語である。

 

1章 浸食された松浦組


 平戸は日本海には直接面しておらず、ぽっかりと大きな口を東に広げた港である。

 世界の観光地・別府湾のような形で、風にめっぽう強い地形である。

 世界の観光地・別府湾のように温泉は無いみたいだが、外国の玄関口としては優秀な場所だった。(世界の観光地・別府湾は九州が誇る大事な観光地なので2回言いました)

 逆に日本から見れば瀬戸内海から関門海峡を越え、博多を経由して外洋に向かう船にとっての国内最終寄港地が平戸だといえる。(アジアン戦国大名大友氏の研究P64)


 後に横瀬浦という場所にも大型の貿易船が入ることがあったが港の入り口が狭かったため長崎に場所を変えた。

 港の入り口というのは重要なのである。


隆信たち一行は港まで出ていくと、中国人や日本人とは違った格好の一団がいた。

黒くてみすぼらしい、乞食みたいな恰好の男だった。

『あ、こいつ等利用価値ないわ』

そう判断した松浦組の組員は中国人風の船長に話しかけようとした。だが

「組長!天竺人の中で坊主が組長に会いてえと申されとります!」

 貿易の仲介をしていた若い男が隆信に話しかける。

「バカ野郎!頭はお忙しいんじゃ!アポもなしに乞食と会うわけがねえじゃろが!」

と側近のサブ(三郎兵衛の略称です)が威嚇した。

 隆信の親戚で小豪族の一部氏の若い衆である。松浦組は記録によると親戚に籠手田氏と一部氏というのがいたらしい。

サブこと一部三郎兵衛はそんな隆信が信頼している身内の一人である。

作者が適当に設定してみた。

 それくらい近侍している人間の情報が少ないのだ※。NAGASAKI平戸の歴史は。



 そんなサブの言葉に反して当の隆信は「まあまあ王直の旦那の頼みじゃけん、一度会ってみようじゃないか」と言った。


 松浦組の組長である隆信が左右に若衆を従えて待っていると、初老のみすぼらしい服を着た男と、通訳の日本人が近づいてきた。


~あ、こいつ人を殺した事があるな~


 そう隆信の傍で控えていたサブは直感した。


 その人を殺した事がありそうな通訳の日本人はアンジロウと名乗り、初老の男をザビエル師と呼んで、こう言った。


「この方は天竺の方から来た」


 その説明にザビエルは何も訂正しない。日本語が分からないからだ。

アンジロウは続けて

「大日(如来)の教えを広めに来たとおっしゃっておられる」

 と言った。

地球を半周して自分の国の宗教を売り込みに来た宣教師。

そんな彼に向かって松浦家の当主は「あ、ウチ宗教はもう入ってるんで間に合ってます」

 と新聞勧誘に来たセールスマンを断るような調子のお断りをしたかったが黙っていた。


そんな隆信の横で舎弟たちが珍しそうに

「へぇぇ。天竺から」

「確かにワシ等とは違う顔をしておるのう」

 と感心していた。

ボロ服をまとった男はザビエルと言うらしい。黒髪長身で、日本人でも中国人でもない

独特の顔の作りをした男である。


ちなみにザビエルと言うとカッパみたいな髪型の絵が有名だが、あれはキリスト教が禁止された『1700年以降に』『日本で書かれた』ものであり、実際の髪型は分かっていない。


 そして通訳の男、アンジロウは自分を薩摩人の通訳と言った。

 この奇妙な二人を見た若衆は、ザビエルの服装があまりにもみすぼらしいので笑いながら言った。

「しかし、こんなにみっともない服を着た坊さんなんて久しぶりに見たわ」

「そうじゃのう。ワシ等の家の坊さんなんか紫色の立派な服を着とったけど、天竺の坊主は服を買う金もないんかのう」

 相手が自分の言葉を分からないと思っての悪口である。これをアンジロウが聞き咎めた。

「ンだとコラ!ザビエル様バカにするとぶっ殺すぞ!オラァ!」

 今のは通訳ではなくアンジロウの威嚇である。ついでに懐のドスまで取り出した。

「はん。そんな棒きれで何ができるんじゃ」

「お前、人一人ヤった位じゃろ。イキガるなら相手選べやこのドチンピラ」

 余裕たっぷりに格の違いを告げつつ、サブたちは隆信をガードする。


 アンジロウは元々薩摩の漁師兼侍だったが、同国人を一人殺してしまい船で逃亡。漂流しているところを外国船に助けられインドに着いたというチンピラの経歴がある。

 農民でも戦争に参加するため人殺しは珍しくない。だが後先考えず味方を殺すような単細胞は罰せられる。

 命令以外の人間を殺したチンピラの臭いを若衆たちはアンジロウに感じていたのだ。

 

すると『ボガッ!!』という景気の良い音と共にザビエルのパンチでアンジロウは地面に叩きつけられた。

 腰の入った見事なパンチに隆信の部下は「ほう」と目を見開いた。


 そして地をなめるアンジロウにストンピング(踏みつけ攻撃)を加え、叫びだした。

『@%&’$#“!!!!!』

「刃物は、抜くんじゃ、ねえと、言ってる、だろ、このボケ、が。とおっしゃられておられる」

 踏まれながら通訳をするアンジロウ。


 実はフロイス日本史では松浦隆信とザビエルの会話は記述が無いのでここらは想像で書いている。

書いてないのだから絶対に1%もかすりもしてないとは言い切れないだろう。

言いきれないと思う。言いきれないんじゃないかな?

まあ、イエズス会(旧)の皆さま、ごめんなさい。


「@%&’$#“!!!!!」

「てめえみてえな、白人外が、一人で、バカやって、殺されるのは、どうでも良いけど、俺まで危険な目にあわせるんじゃねえ。とお怒りである」

 踏まれながらも翻訳するアンジロウ。


 天竺人のヤクザキックはひと味違うのう。と感心している日本ヤクザ。

刃物を使わず、あくまでステゴロ(素手での喧嘩)でじゃれ合っているNAGASAKIとしては珍しい平和でなごやかな光景である。

 ほのぼのとしたじゃれあいを楽しんでいる組員の前でザビエルは尚も叫ぶ。

「@%&’$#“!!!!!」

「そこは、訳さなくて、いいんだよ、アンポンタン。とおっしゃられておる…」


 あ、やっぱり。と日本ヤクザは納得した。


「改めて初めまして。わてらは天竺から大日の教えを広めに来たものです。どうかよろしゅうに」

黒を基調としたきらびやかな衣装に身を包んだ髭もじゃの男がにこやかに語りかけてきた。

 なごやかなハプニングを経て、うちとけたザビエルと隆信は少しずつ意志疎通ができるようになっていた。

「なるほど、天竺では貧乏っちい服装が流行しとるんか!」

 清貧をモットーとするキリスト教にとって、きらびやかな服を尊ぶ日本の宗教は異質だった。

「『あんな成金趣味な服とか着てる人間は堕落した豚だ』とおっしゃられておる」

「ああ、確かに日本の仏教は金はせびるしワシ等ヤクザを見下しとるけんのう!」

「天竺の坊主は良いこと言うのう!」

酒がまわって警戒を解いたやくざ者たちが和やかに語りかける。

同じ盃で酒を回し飲みする平戸ならではの親愛の宴である。本当かは知らんけど。


頃あいだな。と判断した隆信は

「ところで、アンタ等は何か商売品はもっとらんのかい?」

と話を切り出してみた。

「今手もとにあるのはこれだけだ。とおっしゃられておる」

 そういうと、楽器、時計、めがね、タバコ、三連銃などを取り出してきた。


「なんじゃこりゃあ…」


 隆信は目を見開いた。どれもこれも見たことのない異様な品々である。

貴重な唐渡りの中国製品を長いこと見てきた隆信でさえも見たことのない珍品ばかりだった。

「ほう、ほほう」


 これはシノギになる。


 そう判断した隆信は相好を崩して「アンちゃん。こういったモンがあるなら先にいってつかあさいや!」と馴れ馴れしくザビエルの肩を叩いた。

そして、やにわに「おい!サブ!」と舎弟に呼びかけた。

「へい!アニキ!どげえしました」

「こん坊主はワシの客人じゃあ!宿を用意してさしあげいや!」

「へい!アニキ!了解じゃあ!」


 こうして日本に南蛮渡来の品々と、キリシタンと言う商品を持ち込んだザビエル師。これが西と東をつなぐ宗教抗争の幕開けとなろうとは大日様でもデウスの神様でも思いもよらなかった。


これは、150年にわたる血で血を洗う抗争の序曲である。

 本作はこの血にまみれた暗黒の非常に読みにくい歴史を面白おかしく脳内翻訳する作品である。


まあ書籍化とか長崎からの支援とか重大なお叱りでもない限り、こんな調子で1570年くらいまでは続けたいものである。

賢明なる読者諸兄も脳みそを楽にしながら読んで頂きたい。




あ、なんでアンジロウが大日といったのか、書くの忘れてた。



※余談だが、筆者は本作を書くに当たり、松浦組が大名として存在する太閤立志伝5というゲームを遊んでみたが、部下が籠手川安常一人しかおらず頭を抱えた事がある。

大分県立図書館で閲覧できる長崎関係資料を探したが恐ろしい位に記録が無く「これなら人間をいくらねつ造しても反論がこないや」と大喜び…いや、落胆したものである。

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