第2話 車

行き先が決まれば動くのみだが、空腹のため炭水化物が欠乏している。5,4,3,2,1。頭の中でカウントダウンを始める。0になったと同時に思考を止め、動き出す。着替えをさっさと済ませ、外に出る。風はないが、寒さは強い。大阪の人間は基本的に寒さに弱いのだ。

寒いな、風呂に入ってからそう時間も経ってない。車で行くか。ため息が出る。食べたいものがあるわけでもないのに、わざわざ車で買いに行くのか。なんてめんどくさいんだ。駐車場まで自転車で行こうかな。どこまでも楽をしようと考えるが、駐輪場から電動自転車を出すのもめんどくさい。しかたない、少しの距離歩くか。

駐車場が面している道は駅前だというのに暗い。駅前だというのに、おざなりな商店街すら存在していない。あるのはそう、ファミマだけだ。

人どおりもない。10分に1本の電車が駅に止まったあとのしばらくだけ、家路につく人々が暗い道を歩いていく。

何を思うでもなく車に乗り込む。そして、頭の中でルート検索をする。国道にでるか、細いがより短い道を行くか。どちらでもかまわない。車を発車させ、右ウインカーを点滅させる。

国道に接続する交差点の正面にドミノ・ピザが見える。ピザか。ピザは大好物だ。しかし、今は何かを食べたい訳ではない。究極、睡眠を保証するための食べ物を買いに行くのだ。ドミノ・ピザは選択肢にはない。

国道を進むと、CoCo壱番屋というカレー屋の看板が目に入った。「ココイチ」もあるな。しかし、俺は舌がお子様なので、中辛は苦手だ。ココイチの普通が中辛なのを知っているので、そのまま通り過ぎる。

やがて、やや大きめの交差点に出た。この交差点のコーナー部分にメガ・ドン・キホーテがある。きっとやんちゃなお弁当がたくさんあるだろうが、あいにく東向きの車線からはアプローチできない。俺は左ウインカーを出し、国道171号線を離れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る