血
「……」
まずは状況を整理しろ……想定以上に不味いって事だけは何となく理解出来るッ!
傷の具合は……大丈夫、何とか再生してる。
それでも、獣人とか小鬼とかならギリギリ、辛うじて逃げる可能性があるが
「──ッ!」
抱えていた剣を構え──ると同時に腰に付けていたハンドガンを連射、弾切れを確認してバケモンに放り投げる。
「……」
──まぁ、当然防がれるか。
吸血鬼が無造作に手を横薙ぎ。
常軌を逸した光景──周囲から無数の『赤』が収束し、渦巻き、弾丸全てを叩き潰し、爆発。
血の霧が薄れる瞬間を狙い、閃光玉を投げても──無意味。発光する前に赤が内側から爆散させる。
「ハハッ……最悪だよクソッタレめ……ッ!」
己の不運を嘲笑うと同時、構えていた剣が爆ぜる。
折角治った傷も再び開き、両腕が肉塊となり焼けるような痛みが襲う。
「──ガアアアアアッ!?」
痛い、痛い痛い痛い痛いッ!
毎度の事ながら、ぐちゃぐちゃの腕は紫の光とともに修復……クソッタレめ。死なないってのがここまでキツいとは。
畜生、ここは逃げるしか無い!
奴から逃げるために背を向け、ぬかるんだ地面を走ろうとし──全身を串刺しにされる。
そのまま喉を貫かれ、更に内部をぐちゃぐちゃに掻き回される感覚が走り──爆ぜる。
「──ッ!」
そうか。爆発で吹き飛ばした上で地面と同化させて……ッ!
流石、『夜の王』と名高い吸血鬼様じゃねえか。
種族全体で同一の『異能』を持ってるから軍全体での対応は出来なくもないが……如何せん個が強すぎる。俺じゃとても太刀打ち出来ないな。
「──っ──」
ああ、こりゃダメだ。まーた死ぬのか。
嫌だなぁ。何で俺は終われないんだろうか。
頭をぶち抜かれても、全身を食いちぎられても、血を吹き出して倒れても、毒で苦しんでも……いつもいつも復活する。誰か……俺に……死を……救いを……
「──」
ははっ……何言ってんだか……まっ……た……く
……なんで、弾けて肉塊になったのに意識があるんだろうな?
#
「……弱いわね。人類ってこんなものなの?」
目の前でぐちゃぐちゃの肉塊になった
折角面白そうな人だと思っていたのに、こうまで貧弱だとは思っていなかった。
本当に残念。見たところ無尽蔵にいる雑兵とは言え、もう少し実力があると思ったけれど……私も見る目が狂ったのかしら。
……異能の練習がてら血を抜きましょうか。今やどこにでもあるとはいえ、あって困るものでは無いしね。一族を見返すために、なんとしても……
「ふふっ……あなたはどんな味がするのかしら?」
本当なら竜族などの上位存在みたいに魂が濃い血液を貰うのが一番なのだけど……そうそういるわけでもないし、そもそも
「それじゃあ失礼し──ッ!? 何!?」
突如目の前の死体から紫の光が漏れ出す。
手を振って異能を発動、血液を操作──どうして爆散しないのッ!?
光は少しずつ強まり、肉塊は修復されていく。
その間も異能を発動させようとするが、無意味。
──意味がわからない!どうして、どうして異能が──ッ!
刹那、光が消え、完全に修復された人間がその目を開く。
……が、動き出す気配は一切無い。
「……どういう事?」
既に異能は使える様になっている。
……まさか、異能を無効化したとでも言うの?
再生し、死後も継続する上に発動中は異能の発動を封じる異能……そんなのデタラメじゃない!
「これは危険ね。直ぐに殺さないと……」
わからない。異能の種類も、正体も、殺しきれるのかもわからないけれど……コイツはここで滅しておかないと非常に不味い。
「フッ!」
周囲に撒き散らしておいた血を土ごと集め、圧縮して槍の形を形成する。
「……っ」
ああ、苦しい。少しでも集中力が切れると直ぐに爆散してしまう。他の吸血鬼ならこんなの幼少期に習得できるのに……ッ!どうして私は……ッ!
額から汗が垂れ、頭が焼けそうな程に熱い。
「ああああああああぁぁぁッ!」
深紅の槍が落ち、動かない人間の心臓を貫く。
そこで限界。異能が暴走し、槍が爆散。
人間の死体は爆ぜ、肉塊と化す。血液は全て制御を失い、地面に滴り落ちる。
「はぁっ……はぁっ……ああああっ!」
地面に染み込んだ血液を無理やり操作。異能を暴発させて更に肉塊を吹き飛ばす。
流石に……これならッ!
………………
…………
……
ふふっ……やっぱり読みがあた──
安堵の息を漏らした瞬間、紫の閃光が辺りに迸る。
無音だが、確実にこれは不味い。
一気に視界を焼かれ、目を抑え込み──
──光の中で、人間の体が再構築されていくのが見えた。
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