雨の中で

雨が降る

冷たい空気が

どこか緩むような

生暖かい雨

雲が重く立ち込めて

それが空気を閉じ込める

いつかの

太陽の熱が

閉じ込められた空気に

まだ残っているのだ


雨の中に踏み出すと

冬の気配が

逃げてしまったようで

湿り気がどこか

昨日までの空気の

張り詰めていく冷たさを

遠ざけていた


今年の冬は

雪が降るのか

傘に落ちる雨の音で

ぼんやりと考えた

寒いのなんて

嫌なはずなのに

季節というものを

知ってしまうと

時間の流れの中で

何かが季節を象徴しないと

物足りなくなる


そんな

わがままなことを考えながら

雨がジワリと

爪先に染みて

寒さがさりげなく

主張した

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