図書館のどこかで

たまたま手に取った本から

十年も前の

誰かが借りた時の

伝票が滑り落ちた

十年前の誰かが

もしかして

僕と同じことを調べるために

この本を手に取ったのかな

そう思うと

途端にその人と会いたくなった

同じことに興味のある

きっと似たような思考をする

見知らぬ誰かが

確かにいたということが

心強くもあった


僕はその伝票を

また本に挟んで

棚にそのままの本を返した

これからさらに十年が過ぎた時

見知らぬ誰かが

この本を手に取るだろう

そして伝票を見て

少し安心するだろう

自分が一人ではない

それがきっと

伝わるはずだ

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