歌を集めて

イヤホンが耳を塞ぐ時

世界はまず聴覚だけになる

音と言葉の世界

やがてまぶたの裏で像が動き出し

しかしその映像は全て幻で

音と言葉が思い描く

自動的生産の

どこにもない

ここだけの世界


歌から歌へ

音から音へ

声から声へ

情景は駆け巡り

二度と再現不可能な

巨大な構造物が

思考の中に立ち上がっていく


様々な歌が

僕の中では巨大な都市となり

崩れそうで

頑健そうで

揺らぐようで

ずっしりと

僕を戸惑わせ

こちらへこい

違う

こちらだ

そんなふうに誘い込み

僕は全ての音楽が絡まり合う

巨大な迷宮の中を歩き出す


違う景色が

次々と浮かび

正と負の感情が

激しく肌をかすめ去っていく


僕の中のこの巨大迷宮は

今も広がり

幾重にも重なり合っていく

今も

たった今も

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