第5話 ミニチュアピンシャーのノイモーント5。

わたしはミニチュアピンシャーのノイモーント。

得意技はジャンプ。

朝。

一番早起きなのはノイだ。

次に起きるのは太っちょ犬ご主人様。

今日は少し遅れて太っちょ猫ご主人様が起きた。

太っちょ犬ご主人様はとにかく朝、不機嫌だ。太っちょ猫ご主人様はいつも太っちょ犬ご主人様の動線の前に立つ。

「どうしてお前は毎朝私の動線の上に立つんだー!」

「避けてるつもりなんだけどね」

出かける寸前に太っちょ猫ご主人様が太っちょ犬ご主人様の動画アプリを起動させ、ノイを撮り始めた。

「お前はどうして時間ギリギリな時にそんなことするのーー!!」

「え? 今日、飲み会だって言うから、可愛い私達のノイを自慢しないと」

「会社に遅れるわ!!!」

太っちょ犬ご主人様は走って行った。


昼。

ノイのご飯を作り終わると、太っちょ猫は軽くご飯を食べ、熱を出して横になる。

咳をして苦しそうだ。そう言えば昨日は吐いていた。

ノイは子犬だ。おしっこは何回もする。一日二回だった食事は三回になった。

食事し、トイレの後は太っちょ猫ご主人様と沢山遊ぶ。たまに粗相もするけど、遊んで走って興奮すると排泄がしたくなるのは犬の本能だろう。

太っちょ猫もだいぶタイミングが掴めたみたいだ。しかしノイはその分、柵の中に入れられる時間が増えた。昨日はもっと部屋の中を走って、おしっこしてうんちしていたのだけどな。

……柵の外での粗相がいけなかったのだろうか。


今日、窓辺を歩いていたら、上の部屋から犬の鳴き声が聞こえた。

挨拶を返そうかと思ったが、太っちょ猫ご主人様は鳴くと威嚇してくるから止めた。

猫なのに、野犬みたいに吠えて威嚇してきたこともあった。かなり怖い。

それからノイは吠えないようにしている。

吠えているときはお知らせだ。

太っちょ猫がノイのトイレに気付かないでトイレシートを替えない時。

玩具が柵の外に出た時。

そういうお知らせの時は跳ねたり吠えたりする。

太っちょ猫はそれに気付いたらしく、跳ねたり、小さな声でくぅ~んと鳴くだけでトイレシート替え時だと気付くようになった。


柵は高いが、犬小屋を柵の近くに置けばなんとか飛び越えられるような気がする。

昨日、犬小屋を少しずつずらしていたら太っちょ猫に気付かれて、元の位置に戻された。

今日、太っちょ猫は太っちょ犬と別売り上部柵について話していた。

ううっ、脱走が出来なくなるなぁ。悔しい。


ノイはまだ幼犬だから硬い餌と粉ミルクと乳酸菌とブドウ糖にお湯をかけ、15分ふやかしてから食べる。

昨日から餌を前にして、跳ねたり走ったり吠えたりしないで、マテ、という落ち着く動作の訓練をするようになった。

餌が早く食べたいけど、マテが出来るのは飼い犬の高いスキルだ。

でもまだノイは落ち着けない。


お母さん。

ノイは柵や犬小屋を買ってもらって、新しいご主人様達の家に来ました。

産まれて三ヶ月になりました。

産んでくれてありがとう、お母さん。

お母さんや、ペットショップのみんなが元気なのか心配です。

今日、上の部屋の子と初めて挨拶しました。声だけですが。

いつか会えるといいなと思っています。

お友達になれるかな。

ノイはのんびり、楽しいジャンプをしつつ暮らしています。

でもジャンプは膝に悪いと太っちょ猫は言います。禁止項目に入っています。

だけどジャンプが止められません。

大好きなお母さん。膝に気を付けて暮らしてください。

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