―星を読まない娘―
イムセアのことは、辺境の弱小な星読み一族の出来損ないに生まれた私ですら知っていた。国王陛下に直接お仕えする王宮魔導師たちの中でも実力者と言われる
しかし、父ヴェニテは彼を『
白の魔導師イムセア。彼は文武に
それが突然私の目の前に現れるなどと、誰が予想しただろう。
「貧相な田舎娘だな」
最初の言葉がそれだった。私だって自分の見てくれがよくないことくらい知っているが、王都に生まれ育った上流階級から見れば、言わずにいられないくらい田舎くさく見えるのだろうな、と思った。イムセアの美しい顔にあらわれた
けれども、次の言葉は予想外のもので、驚いた。
「
「
……まあどうでもよい。おまえには死んでもらう」
虹水晶に輝きが
私は自分の生まれを心から悲しく思う。
星を読めないとはこういうことだ。どんな重大なことも予測できない。自分の命に関わることさえ。そして恐らくは、世界でたった一人の大切な人に危機が迫ることさえも。
「あなたは、
「何かと言うほどのものでもない。あれはそもそも生まれてくるべきではなかったゆえ、本来の状態に戻ってもらう。この世から消す」
「どうして――」
あの人が何をしたっていうんだろう。
王都に関わりもない辺境魔導師の
けれども白の魔導師は、氷のような
ただ、立派な杖の虹水晶が
それきり私は意識を失った。
眠ったまま、暗い暗い空を見ていた気がする。
無限に思えるほどの虚空の中を、私は
私の上下左右を、外天の星が飛び去っていく。
外天の星?
それは何だ?
遠い過去、この道で何人もの魔導師たちが、それぞれの眼差しで星を見ている。
通り過ぎた人々。
ほとんどは、還って来なかった人々。
より強い魔導師の力を求めて
ああそうか、
私は。
イムセアによって、
ならば。
魔導師たちの群れの
私も彼らのように記憶を失い、
彼らのように眠りから覚められず記憶を取り戻せず、
恐らくは、
――もう、私には戻れない。
逃げて。
あなただけでもどうか、無事でいて。
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