斬られた死体
この一年、近隣各地で中学三年生の死体が見付かり続けている。
遺体は、必ず何かを切り落とされていた。始めは指とか耳、
今回うちの中学校から出た犠牲者が十七人目で、その首は区民体育館の奥にある用具室で見付かった。首は、身体の上に立てて置かれていたという。
話を聞くなり泣き出したみちると違い、私は遺体の話を聞いてもそういうショックで泣いたりはしなかった。中学校関係者からの話を聞くほど、新聞やテレビの報道を目にするほどに、心の中がしんしんと冷えていく。
「親とか友達とか取材されてすごく泣いてるけど、私が死んでも、きっとあんな風にならないよね。クラスメイトも伯父さん伯母さんも、カメラの前では悲しそうにするかもしれないけど絶対に演技だし」
「キア、そんな風に言わないでくれ。君が死んだら僕は悲しい」
「本当?」
聞き返した時には犬は私の頬を舐めていた。ざらざらして温かい。犬の身体がすり寄せられて、その毛並みと体温が心地よく、私はされるがままにして目を閉じる。
中学から十七人目の被害者が出たのはなるほど大事件だろう。でも、悪いけど私にとっては、知ったことじゃない。
それより、自分が明後日にはこの家を出ていく、ということのほうが重要だ。やっと伯父さん伯母さんやみちるから解放されて一人になれる。帰る場所はどこにもないけれど、それでも家に置いてくださってありがとうございますと示し続けなくてもよくなる。
もうちょっと。
もうちょっとだ。
それでこの支配から逃れることができる。
あとたった二晩、我慢すれば――。
犬の温かさに吸い込まれるように瞼が重くなり、意識に眠りの幕が下りていく。
だから私は、犬の
「――
翌日、中学校で事件に関する説明会が開かれた。保護者ルートで連絡が来ていたようなのだが私には知らされず、気がつくと家に一人。
そこに、連続殺人犯がやってきた。
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